被爆地ヒロシマが被曝を拒否する伊方原発運転差止広島裁判
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「ふるさと広島を守りたい」ヒロシマの被爆者と広島市民が、伊方原発からの放射能被曝を拒否し、広島地方裁判所に提訴しました

これまでのいきさつ


【伊方ウォークのスタート】



 2013年7月、原子力規制委員会が実用発電用原子炉の新規制基準を施行し、四国電力は伊方原発3号機の規制基準適合性審査申請をしました。当時伊方3号機はもっとも規制基準に近い条件を備えており、再稼働第1号だろうとみなされていました。

 これに危機感を抱いた原田二三子は、広く広島市民が伊方原発3号機の再稼働に反対し、再稼働阻止へ向けて100万広島市民が圧力をかけることが必要と考え、広島市内でもっとも賑やかな商店街、本通りと金座街で「伊方原発反対」を呼びかけて歩くことに決めました。友人3人もこれに賛同し、1カ月2回程度、土曜日午後3時からの「伊方ウォーク」がこうしてスタートしました。


【愕然とした原田二三子】



 歩きはじめて原田二三子は愕然としました。「伊方原発再稼働反対」どころか、圧倒的大多数の広島市民は、伊方原発という危険な原発が広島市からわずか100kmの地点に存在し、再稼働に向けて準備が始まったどころか、伊方原発がどこにあるのか、あるいは伊方原発の名前すら知らないことに気がついたのです。「伊方原発再稼働反対」と触れ歩いたところで、伊方原発すら知らないのでは話は始まりません。全くのれんに腕押し、ぬかに釘です。

 考えて見れば無理もありません。日本のマスコミの体制は、1940年頃に成立した一連の国家総動員法に基づいて整理統合された体制に現在の起源があります。この時成立した広島県の県紙は現在の中国新聞で、以降一貫して「1県一紙制度」が続いています。その中国新聞が関心を抱くのはまず広島県のこと、それから中国地方のことです。NHKなどの放送の仕組みもそうなっています。

 ところが伊方原発は、四国愛媛県にあります。中国新聞やNHK広島放送局にとって、伊方原発はいわば管轄外、滅多に伊方原発のことは報道されません。多くの広島市民が、伊方原発のことを知らないのも無理はないのです。

 これではならじと、原田はすぐさま方針を変えました。「伊方原発再稼働反対」の呼びかけをやめて、「広島から一番近い原発は、四国愛媛県佐田岬半島の付け根にある四国電力伊方原発です。広島からわずか100kmしか離れていません」と触れ歩き、チラシを配ることにしたのです。

【結・広島の結成と広島市議会請願活動】



 隔週土曜日の午後、「伊方ウォーク」を続けてほぼ1年たったころ、広島市議会に「伊方原発再稼働反対」を決議してもらおうと請願活動を行うことになりました。そのため、それまでの個人グループから、市民団体の体裁をもつ必要に迫られました。こうして2013年7月、原田らを中心に「結(ゆい)・広島」が結成されました。広島市に提出する請願書の請願人には原田がなりましたが、幅広く共同請願人を募る必要があります。しかも共同請願人は原発に反対なら誰でもいいというわけにもいかず、広島市に居住する有権者であることが望ましいのです。「結・広島」で活動をはじめたものの、4名程度の小グループでは2000人が限度と見定めがつきました。私たちは共同請願人の数を広島市有権者の1%強、1万人とする目標を立てていたのです。


【広島1万人委員会の結成】



 市議会共同請願人の数を目標の1万人に到達させるためには、「結・広島」ではなく、もっと幅広い市民の参加が必要です。そこでグループメールや「結・広島」のWebサイトで呼びかけて新しいグループの結成の準備会をもつことにしました。呼びかけに応えて集まってきてくれた人の中で「広島市民の生存権を守るために伊方原発再稼働に反対する1万人委員会」(略称:広島1万人委員会)が結成されました。2014年1月のことでした。


【広島市議会ロビー活動と街頭活動】



 広島1万人委員会の活動は、街頭宣伝活動やもともとスタートとなった本通り・金座街を歩いて伊方原発の存在とその危険を知らせる「伊方ウォーク」と並んで、広島市議会に対する「伊方原発反対」の市議会ロビー活動が中心となりました。市議会工作では「伊方原発再稼働反対市議会決議」請願の紹介議員を9人も獲得できたことが大きな成果でした。その一方で、自民党会派議員と広島市当局の強固な「原発推進体質」も確認できました。特にある自民党会派の幹事長議員の「いかなる市民であれ、原発に反対の市民とは一切話をしない」と言い放った言葉が強く印象に残ります。安倍首相は「原発再稼働の必要性を丁寧に国民に説明していく」と口先ではいいますが、丁寧な説明の痕跡は全くありませんし、一皮めくれば、末端のこの自民党会派議員のいうように「原発に反対の国民とは一切話をしない」というのがホンネだな、と確認できた次第です。

 肝心の請願書の扱いでは、広島市議会本会議上程前の常任委員会で店晒しにあって「閉会中審査」扱いとなったまま、2014年春の統一地方選挙を迎えて、議会解散のまま事実上の廃案となり葬り去られました。

 常任委員会でせめて「請願書上程」を採決させようと工作を行いましたが、「否決」するのはいかにも市民感情の手前マズいと見て取った自民党会派議員や電力会社関係議員は、反対も賛成もしないことが得策として「採決」そのものをしませんでした。現広島市議会は後3年以上も継続します。近いうちに現広島市議会に同趣旨の請願を行うつもりです。


【伊方原発広島裁判応援団の結成】



 その後広島1万人委員会は、街頭宣伝活動や伊方ウォークなど広島市民に「伊方原発」の存在やその危険を知らせる活動に力を入れるとともに、伊方原発現地の状況をよく知ろうと、2015年8月には、伊方町役場、八幡浜市役所、大洲市役所を訪問し、広島市民としての「要望書」を手渡し、地元自治体として再稼働に慎重な姿勢をとるようお願いしました。そして、伊方原発再稼働問題は単に愛媛県や四国の問題ではなく、瀬戸内海を隔てて僅か100kmの地点にある広島市民にとっても重要問題であることを直接伝えました。この間、政治情勢は大きく動きます。秘密保護法問題、沖縄の辺野古基地建設問題、また2014年7月の「集団的自衛権行使は合憲」とする閣議決定にその根拠をもつ2015年の「安全保障法案成立問題」など、日本が単に右傾化というにとどまらず、ファシズム国家に向けて大きく舵を切ろうとしている状況です。私たちはこうした状況を横目でにらみながら、歯を食いしばって「伊方原発再稼働問題」、「原発再稼働問題」、「電離放射線被曝問題」に力を注ぐことにしました。誰かが広島市民の生存権を守るために、原発問題や電離放射線問題に取り組んでいなければならないからです。
 この間にも、首相官邸主導の「原発再稼働推進」が、いってしまえば詐術をつかってまで、どんどん推し進められていきます。少なくとも伊方原発については、私たちが再稼働を阻止しなければなりません。
 その際大きなヒントになったのは、2015年4月に出された福井地裁の、関西電力高浜原発「運転差止仮処分命令」です。実際に司法が原発の運転を差し止めることができるのか、と大きな驚きとみずみずしい感動をもってこの決定を私たちは受け止めました。

 (実際には、首相官邸主導のもと、最高裁から福井地裁に送り込まれた3人の刺客裁判官が2015年12月に、運転差止仮処分命令をひっくり返してしまいました。しかしそうだとしても2014年4月の、樋口英明裁判長他2人の裁判官によるこの歴史的な決定の価値はいささかなりとも減ずるものではありません。権力の下僕に成り下がっている日本の司法の現状があるからこそ、敢然と日本国憲法の精神を守り抜いた樋口英明、原島麻由、三宅由子の3人の裁判官の名前は燦然と輝くことでしょう)

 広島でも、伊方原発再稼働差止訴訟が起こせないか、と私たちが考えはじめたのは2015年8月も末のことでした。東京から脱原発弁護団全国連絡会の共同代表の弁護士にも広島に来てもらって説明をしてもらいました。それから約3カ月様々な観点から討論を重ね、またすでに伊方原発再稼働運転差止訴訟を進めている愛媛県松山市の弁護団の先生方からもアドバイスを受け、広島でも差止の訴えを起こそうと決定したのが2015年11月28日の1万人委員会の定例総会でした。

 まず、弁護団、原告団、そしてこれらを支える応援団をスタートさせねばなりません。私たちは、まず「伊方原発広島裁判応援団」をスタートさせることに決定しました。こうして12月1日に応援団を正式にスタートさせました。

 2016年1月から正式に活動を開始するとともに、弁護団と原告団も正式に発足させる予定です。

 これから矢継ぎ早に様々な行動を起こしていく計画です。みなさまの応援・支援をお願いする次第です。


活動の時系列表


年月日 時系列
伊方原発の再稼働を許さない市民ネットワーク・広島
2012年7月4日 第1回伊方デモ。広島市民に伊方原発の存在が知られていないことに危機感をもった同市民団体のメンバー原田二三子が1人で認知度を上げる目的でデモを開始。以降、第23回(2013年7月13日)まで、平均月2回開催
2013年7月8日 原子力規制委員会「新原子力規制基準」公布・施行。同日四国電力など、4社5原発が再稼働を申請
結・広島
2013年7月27日 デモメンバー数人を中心に、請願署名運動のための市民グループ「結・広島」を結成。請願署名活動が始まる。
2013年7月28日 第24回伊方デモ。以降、第35回(2014年1月11日)まで平均月2回開催。この回より、請願書をデモチラシとして配布が始まる
2013年8月17日 請願署名 159筆
2013年8月31日 請願署名 648筆
2013年9月17日 「四国電力伊方原発3号機再稼働に反対する広島市議会決議を求める請願」を1541筆の署名とともに広島市議会に提出
2013年9月20日 講演会「福島原発事故と原発事故の将来」開催。前米原子力規制委員長グレゴリー・ヤツコ氏、南カリフォルニアのトーガン・ジョンソン氏が講演
2013年9月26日 広島市議会の「経済観光環境委員会にて第一回目の請願審査が行われ、結・広島から趣旨説明が行なわれた。
2013年9月28日 請願行動進捗報告No.1を作成、配布開始
2013年10月26日 請願行動進捗報告No.2を作成、配布開始
2013年10月28日 広島県知事選期間中(選挙日は11月10日)、ゆざき英彦氏、大西オサム氏、両候補に質問状を提出。大西オサム氏からは10月30日、ゆざき英彦氏からは11月1日付で文書で回答、受領
2013年11月7日 広島県知事両候補の回答に対する感想・論評をwebサイトに掲載
2013年11月11日 広島市長室秘書課に広島市長宛の質問書を提出
2013年11月18日 広島市長宛、質問の回答を受け取りに広島市役所に行くも、温暖化対策課より回答。本日付けで質問・回答・顛末報告を作成、配布開始
2014年12月22日 「結・広島」という単独の市民グループを母体とした運動では、これ以上の請願署名の大きな展開は望めないと考え、広く呼び掛けた相談会を開く
2014年12月28日 請願進捗報告No.3を作成、配布開始
広島市民の生存権を守るために伊方原発再稼働に反対する1万人委員会
(略称:広島1万人委員会)
2014年1月18日 同日参加10名の全会一致で同委員会発足。正式名称や規約等を協議・承認。結・広島は構成団体の一つになる。
2014年1月25日 第36回伊方デモ。以降平均月2回ペースで実施継続
2014年2月2日 第1回総会開催。以降、月1回総会開催
2014年2月10日 広島市在住有権者による請願署名1886筆
2014年3月17日 2014年3月17日~3月24日まで、8日間連続、本通り電停付近にて街宣活動を行う
2014年5月30日 原水爆禁止広島県協議会から2470人の共同請願人署名を受け取り、5000筆に近づく。
2014年5月31日 第44回伊方デモ後、本通り電停付近の街頭にてシールアンケートを実施。「広島市から一番近い原発は伊方原発ってご存知ですか?」の問いに110人が回答。「知っていた」は21人「知らなかった」は89人
2014年7月26日 マツダスタジアム付近にてシールアンケート実施。169人の回答のうち「知っていた」という人が62人(広島市24人/広島市外 38人)、「知らなかった」という人が107人(広島市28人/広島市外79人)
2014年8月23日 請願進捗報告No.4を作成、配布開始
2014年9月27日 本通り電停付近の街頭にてシールアンケートを実施。「広島市から一番近い原発は伊方原発ってご存知ですか?」の問いに104人が回答。「知っていた」は18人「知らなかった」は86人
2014年10月11日 第52回伊方デモ実施。
2014年11月25日 広島市議市議に対して原発に対して関するアンケート開始
2015年1月26日 アンケート回答を締め切り、集計分析。自民党会派および公明党議員を中心に、市議会員52名のうち、回答拒否率75%にのぼる。広島市議の原発推進体質を如実に示した。
2015年3月28日 広島1万人委員会3月定例総会で
①四国電力伊方原発の存在と危険を広島市民に知らせる活動
②広島市議会広島当局などへ陳情・請願活動を強化
③伊方原発30km圏自治体への請願・陳情活動
④原発・核施設 放射線被曝に関する資料収集、調査研究活動
 活動方針を決定
2015年3月~7月 伊方ウォークを月2回ペースで実施
2015年7月 街頭アンケート活動を広報宣伝活動に有益と判断し、月1回ペースで実施となる。
2015年8月18日 要望書を携え、伊方町役場、八幡浜市役所、大洲市役所を訪問。伊方原発再稼働は広島市民の生存権に関わることを伝える。伊方原発も見学。
2015年8月20日 伊方原発運転差止提訴に関わる説明会を開催。説明者として脱原発弁護団全国連絡会の共同代表、河合弘之弁護士が来広、説明にあたる。以降、広島1万人委員会で運転差止訴訟の真剣な討議がはじまる。
2015年8月22日 広島1万人委員会などのサイトがツイッター等で有害サイトとして登録されるなどの妨害を受ける。その後、ツイッター管理者に連絡、有害サイト登録が解除される。
2015年9月~11月 伊方ウォークと街頭アンケートを継続実施
2015年10月30日 「伊方原発運転差止訴訟」松山弁護団を訪問。様々な意見とアドバイスを受ける。
2015年11月28日 定例総会にて伊方原発の運転差止広島裁判に踏み切ることを決定
2015年12月1日 伊方原発広島裁判応援団が正式発足
2015年12月19日 第74回伊方ウォークにて「伊方原発運転差止をヒロシマから提訴します」とするチラシを配布
2015年12月26日 街頭アンケートにて同趣旨のチラシを配布
2016年1月1日 伊方原発広島裁判応援団のwebサイトを開設



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