被爆地ヒロシマが被曝を拒否する伊方原発運転差止広島裁判
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「ふるさと広島を守りたい」ヒロシマの被爆者と広島市民が、伊方原発からの放射能被曝を拒否し、広島地方裁判所に提訴しました

2018年10月29日

新仮処分広島地裁決定(2018年10月26日)に関する
伊方原発広島裁判原告団声明


 私たちは、去る12月広島高裁が伊方原発3号機の運転差止を命じた決定(以下野々上決定)が2018年9月末日を差止期限としていることに対して、これを不服として、今年5月18日に広島地裁に、差止期限の無効または延長を求めて新たな仮処分の申立を行いました。(以下新仮処分事件)
 この新仮処分申立に対して、2018年10月26日、広島地方裁判所民事第4部の藤澤孝彦裁判長、伊藤昌代裁判官、内村諭史裁判官は、私たちの申立を却下しました。(以下藤澤決定)
 それに先立つ9月25日、野々上決定を不服として四国電力が申し立てた異議に対し、広島高裁は野々上決定を取り消し、伊方原発3号機の運転を認める決定を下しました。(以下三木決定)

 藤澤決定は、四国電力の主張を丸写ししたうえに、司法としての判断基準を、原子力規制委員会の「火山影響評価ガイド」にもよらず、かといって火山の巨大噴火の予知は不可能とする火山学者の一致した見解にもよらず、仮処分事件とは別途に審理が進んでいる本案訴訟(以下本訴)判決確定までの長期間にわたって、九州阿蘇山が巨大噴火する「可能性は非常に低い」(同決定要旨4頁)と全く独自の基準に求めた上で、私たちの申立を退けています。
 これは、法令に準ずる「火山影響評価ガイド」も火山学者の一致した科学的見解も無視した、極めて非科学的で恣意的な決定だと言わざるを得ません。
 確かに日本国憲法は、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ」(同78条第3項)と裁判官の独立は謳っているものの、同時に「この憲法及び法律にのみ拘束される。」(同条同項)とも謳っており、憲法や法令、あるいは科学者の一致した科学的見解を無視して、裁判官個人の恣意的判断を認めているわけではありません。この決定は憲法違反の疑いすらあるのです。

 いまや、原発推進の司法や裁判官たちは、このように憲法や法令、あるいは科学者の一致した見解を無視してまで、原発推進の恣意的決定を出さざるを得ないほど、各地の裁判で論破され続け、追い詰められています。

 また、この決定は、火山噴火の予知は現在の火山学の水準からして不可能だとする私たちの主張に対して、「巨大噴火による事故のリスクが・・・人格権侵害をもたらすものであることを疎明する責任がある」(同要旨2頁)とも述べています。
 「噴火予知は現在の科学的水準からして不可能だ。だから安全サイドに立った判断を」と求める私たちに対して、「巨大噴火はしない」と一方的に決めつけておいて、「予知できない」という私たちに、「噴火するというのだったら証明してみろ」と藤澤裁判長は開き直っているのです。これはもうヤクザの論理というほかはありません。ここまで原発推進の司法は退廃していることを私たちは肝に銘ずるべきでしょう。

 この決定を見るにつけ、また論理的に追い詰められた原発推進の司法を目の当たりにするにつけ、私たちは今こそさらに広範な原発に反対する世論を巻き起こし、日本国憲法が最高の価値とする私たち一人一人の人格権を守るために、裁判闘争を新たな段階に押し上げる時が来たと思います。また、今後本訴の戦いをさらに継続するとともに、仮処分の戦いも粘り強く推進していきます。

 原発はひとたび重大な事故が起きれば、不可逆的で深刻な被害を広範囲かつ長期間にわたり、私たち人類のみならずあらゆる生命に及ぼします。福島第一原発事故により、福島では7年以上が経過しても今なお約4万4千人が県内外で避難したままで、廃炉作業や汚染水などの事故後の対策は目途さえ立っていません。
 それどころか、過日(2018年10月25日)、国連人権理事会は日本政府の進める福島帰還政策に関し、実効線量で年間20mSv以下の福島帰還基準は、過度の被曝を強いるものであり、重大な人権侵害であるとの報告を提出しました。
(国連人権委員会ニュースリリース:https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=23772&LangID=E

 福島の事故の教訓は、自然災害の規模を人為的に想定するな、ということでした。ここ数年、今年だけでも安直な人為的予想をはるかに超える風水害や地震が列島を襲い続けています。原発災害に対しては、考え得る限り最大の災害(既往最大の災害)に備えるという視点を忘れてはなりません。
 こうした視点から見れば、藤澤決定がいう「(伊方3号機の運転は)急迫の危険には当たらない」(同決定要旨5頁)は、あまりに福島原発事故の教訓をなおざりにしています。運転中重大事故(放射能災害)が起こり得る原発があることそのものが、私たち市民にとって「急迫の危機」なのです。

 今回、藤澤決定は、原発推進の論理が「ヤクザの論理」だということを図らずも露呈するとともに、四国電力伊方原発3号機の運転は私たちの愛する瀬戸内海を死の海にしかねないことだと誰に対しても感じさせ始めました。
 先祖から引き継ぎ、営々と発展させてきた瀬戸内海とその沿岸でのくらしを守り発展させるために、綺麗で豊かな瀬戸内海を、綺麗で豊かなまま、次の世代に引き継ぐということが、私たちの責務だと思います。
 私たちは「核と人類は共存できない」「被爆地ヒロシマが被曝を拒否する」の旗を掲げて、各地の伊方原発に反対する人びとと手を携え、瀬戸内海を、いや、世界につながる海や空を放射能で汚染させないために、全力を注ぎます。
 新たな原発安全神話をつくることを許さず、すべての原発の廃炉まで、私たちは闘い続けます。

2018年10月29日
伊方原発広島裁判原告団


新仮処分広島地裁決定(2018年10月26日)に関する原告団声明

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