被爆地ヒロシマが被曝を拒否する伊方原発運転差止広島裁判
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「ふるさと広島を守りたい」ヒロシマの被爆者と広島市民が、伊方原発からの放射能被曝を拒否し、広島地方裁判所に提訴します

(▼以下の内容は広島1万人委員会第74回チラシを転載しています。)

2007年ドイツ放射線防護庁のKiKK研究


(*以下は2015年12月4日第143回広島2人デモチラシからの抜粋引用に若干修正・追加を加えたものです)
 2007年ドイツ連邦政府の放射線防護庁は、原発と原発から5km圏5歳未満の子どもの小児白血病との関連性を調べた、「KiKK研究」を公表します。

この研究がスタートしたいきさつからみておきましょう。

 「先進工業国において、近年小児白血病の発生が増加するにつれ、またその発生が農村地帯であって、しかも一時的で限られた地域にクラスター状に小児白血病の発生が繰り返し観察されるに及んで、なにかしらの伝染性病原体の仕業ではないかとする仮説が生まれた。幼児期であって、まだ免疫システムが十分にできあがっていない子どもたちは、後に伝染性の媒介物に曝され続けると、白血病の大きな危険に直面することになる。

 子どもたちの白血病の大きな部分の原因として長い間環境からの影響が疑われていた。

 夥しい数の疫学調査が行われたが、幼児期の白血病の原因は、依然として明瞭にはならなかった。にもかかわらず、大きな原因因子のひとつが、電離放射線被曝による白血病リスクであることは、一般的に受け入れられている。低線量被曝の影響は、(高線量被曝に比べると)より明確ではない。従って、白血病発生のリスクは原発立地地域においてより大きいのがどうかとする議論が何度も起こってきた」
(以上本チラシで紹介するKiKK研究のまとめ研究の一つ「ドイツにおける原発立地地域の小児白血病」の背景説明からの抜粋)


白血病多発で疑われた原発からの放射能

 先進工業国、特にここでは西ヨーロッパ諸国、ドイツやイギリスなどですが、ある特定の地域に幼児白血病が多発している事実が大きな問題となり、長年様々な調査が行われてきましたが、原因を特定するにいたりませんでした。白血病の多発ということで疑われたのが原発の通常運転から、放出・排出される放射性物質です。白血病の原因因子のひとつが電離放射線であることには異論はありませんでした。

 原発推進を目的とする国際放射線防護委員会(ICRP)の影響を受けた学者・研究者たちは、事故で大量放出されたのならともかく、通常運転で放・排出される放射性物質(放射能)による影響は健康に影響のないレベルであり、小児白血病の一部特定地域での発生と原発には因果関係はない、と主張しました。

 一方で、子どもを抱えた親たちや市民団体、医科学者や研究者の一部は、原発からの放射能による電離放射線がもっとも疑わしいとして大きな議論がドイツ社会で繰り返し起こりました。


2003年「KiKK研究」がスタート

 こうした論争はドイツ連邦政府放射線防護庁(the German Federal Office for Radiation Protection <BfS>。以下BfSと略します)を動かすことになり、「KiKK研究」がスタートします。幸いにしてドイツには「ドイツ小児性がん登録」(German Childhood Cancer Registry <GCCR>)が完備しており大がかりな研究開始の基礎条件の一部が完備していました。(日本ではこの条件が未整備です)

 「2003年、ドイツ放射線防護庁(BfS)は、原発から5km圏に居住する5歳未満の子どもたちについて病例対象研究(ケース-コントロール・スタディ)を、”ドイツ小児性がん登録”の結果に対する懸念に回答する形で開始した。この研究は“the Kinderkrebs in der umgebung von Kernkraftwerken (KiKK)”(原発近傍の小児がん)研究と名付けられた。これは、1980年から2003年まで全て小児がんと診断された事例に着目し、がんでない子どもたちの参照例と比較した研究である。

 KiKK研究では、原発からの距離を、放射線被曝の小児がんリスクを評価する 代替要素として使用した。そしてドイツの16の原発(全部旧西ドイツに存在)から5km圏内事例に焦点を当てた。(この点が、KiKK研究の優れた点であるように私には思える。通常放射線被曝影響を考える場合、被曝線量を推測して、線量に応じた結果に着目するものだが、この研究は目の前の事実にのみ着目して、原発からの放射能影響を考察しようとしている)

 この研究での主たる発見は、5歳未満の小児白血病リスクは、原発からの距離が減ずるに従って、増大するというものだった」 (カナダ原子力安全委員会「KiKK研究説明」から抜粋引用。
http://nuclearsafety.gc.ca/eng/resources/perspectives-on- nulear-issues/the-kikk-study-explained-fact-sheet.cfm)


 純学術的にいえば、この結論の分析にはさまざまな議論があります。しかし、原発5km圏以内に居住する子どもたちに、他の地域に居住する子どもたち比べて、小児白血病が多発しているという結論は動かせないところです。

 それでは2008年に公表されたKiKK研究のまとめ研究の一つ、「ドイツにおける原発立地近傍地区での小児性白血病」(Childhood Leukemia in the Vicinity of Nuclear Power Plant in Germany, 2008年)をみてみましょう。


原発5km圏5歳未満の子どもに有意に小児性白血病が増加

 このまとめ論文は次のように全体を要約しています。

「はじめに: 白血病の原因は大きくいって“核”(nuclear)である。(この点については、学術界でも異論はありません)原発の近傍で白血病発生率が増加しているかどうかは大きな議論を呼ぶ問題である。“ドイツ小児性がん登録”は、小児性がんと原発に関する疫学的症例対照研究を公表し続けてきた。
 方法:
この研究は、子どもたちの居住地と原発からの距離に基礎をおいて、無作為に抽出した健康な子どもたちの対照例より、がんを抱える子どもたちの方が、平均して原発に近いかどうかを検討した。原発からの距離別カテゴリーのオッズ比(OR)と標準化罹患比(SIR)を算出した」

 オッズ比は、原発からの距離別に小児がんの発生と、同じく無作為に抽出した距離別小児がんの非発生を比較して、その比率を求めるものです。オッズ比が高ければ高いほど、原発からの距離と小児性がんの発生には高い因果関係があるという結論になります。それに対して標準化罹患比(SIR)は、データから予測される小児性がんの症例(期待罹患数)と実際発生している小児性がんの発生(実際罹患数)との比を求めるものです。

 「結果:
  原発からの近さ(近傍性)と白血病のリスクとの関連性が発見された。白血病の実際の症例は539個、対照例は1766個。原発からの5kmゾーンの、5歳未満の子どもたちの小児白血病発症に関するオッズ比(OR)は、他のゾーンの子どもたちと比較すると【2.19】だった。このOR上昇は統計学的に見て有意である。(少なくとも原発から5km圏の5歳未満の子どもたちで、小児白血病の発生が高いことは疑う余地がありません)
研究対象となった全地区での白血病発生事象は、ドイツ連邦全体のそれと同じだった。標準罹患比(SIR)は【0.99】(95%。信頼区間0.92-1.07)だった」

 どんな立場の学者・研究者でも、ドイツにおいて原発から5kmゾーンの5歳未満の子どもたちに、小児性白血病が有意に増加していることを認めないわけにはいきません。しかしそれは、原発が農村型地帯に立地しているからなのか、それとも都市型、農村型、混合型に関わりなく、原発に近ければ小児白血病を発症しやすいのか。あるいは他の要因があるのか。あるいは原発から通常運転で放出される低線量の放射性物質の影響なのか。こうした議論が出てくるのは、従来のICRP学説に従えば、ドイツの原発から通常運転で放出される放射性物質で、小児白血病が有意に過剰発生することなどは考えられないからです。特に原発など核施設を維持・存続させたいICRP学説信奉者はそう主張します。

 もし有意な増加が、原発からの、「健康に影響のない程度の」微量な放射性物質が原因ならば(私は、圧倒的多数の学者とともにそう推測しますが)、原発からの「微量の」放射性物質は「微量」ではなく、「健康に深刻な影響を及ぼす程度」の放射性物質だったことになり、ICRP学説を根本から見直さなくてはならない、ということになります。







(▼以上の内容は広島1万人委員会第74回チラシを転載しています。)

「伊方原発運転差止を
ヒロシマから提訴」のトピック

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