被爆地ヒロシマが被曝を拒否する伊方原発運転差止広島裁判
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「ふるさと広島を守りたい」ヒロシマの被爆者と広島市民が、伊方原発からの放射能被曝を拒否し、広島地方裁判所に提訴します

(▼以下の内容は広島1万人委員会第74回チラシを転載しています。)

2015年「INWORKS」国際コンソーシアム研究-
長期的低線量外部被曝は成人に有意に過剰な固形がん死をもたらす


(*以下は2015年11月27日第142回広島2人デモチラシを抜粋引用して若干修正追加を加えたものです)
 2015年10月20日、イギリスの有名な医学学術誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)」に『電離放射線の職業的被曝によるがんのリスク:フランス、イギリス及びアメリカにおける後ろ向きコホート研究(INWOKS)』(Risk of cancer from occupational exposure to ionizing radiation: retrospective cohort study of workers in France, the United Kingdom and the United States)と題する研究論文が発表され、大きな注目を集めました。というのは、この論文は100mGy(100mSv)以下の外部低線量被曝でも、過剰な固形がん死が有意に発生しているという結論を出しているからです。

 そして、低線量内被曝の影響にばかり気をとられていた私も、低線量外部被曝でも長期にわたれば(この研究の場合10年)有意に過剰な固形がん死を発生させることを知りました。

 これは、国際的に権威をもつ学術研究グループが、「100mSv以下の低線量被曝では、人体への影響はない」あるいは「その証拠はない」とする従来の国際放射線防護委員会(ICRP)のモデルに対して真っ向から反論した、ともいえます。

 もうひとつの注目ポイントはこの研究は、これまでの「反ICRP派」の学者・研究者から提出された研究なのではなく、「INWORKS」が提出しているという点です。慢性の低線量被曝リスクを定量的に確定するための基盤をつくることを目的に設立された国際コンソーシアムで、主要各国政府や主要な放射線防護規制当局や核産業などから資金提供やデータ提供をうけている、いわば「公認」の研究グループです。別な言い方をすれば国際的な「権威」を背景にしており、これまでのように全く無視できない、という点です。  国際的な権威をもち、全く無視し去ることができない、という点では2011年に公表されたウクライナ政府の『チェルノブイリ事故後25年:未来へ向けての安全』と題する緊急事態省報告と性格がよく似ています。(記述の通り)

 次に注目されるのは、この研究報告の厳密さと規模の大きさです。規模の大きさではコホート(研究対象群)が、フランス、イギリス、アメリカの核産業労働者30万8297人で、追跡調査期間が1944年から2005年の約60年間というスケールの大きいものです。  ここで得られた結論は何人たりとも無視できないと考えられます。



外部被曝でも長期間低線量被曝は、確実に「固形がん」死を増大させるという研究


 それでは、『INWORKS』の「電離放射線の職業的被曝によるがんのリスク:フランス、イギリス及びアメリカにおける後ろ向きコホート研究 (INWORKS)」と題する研究の概要をみていきましょう。
 この研究論文は、【ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル 2015年10月20日】に掲載されたものです。

 このコホート研究の研究対象者は、19頁表18にあるように、フランス、イギリス、アメリカ3カ国における核産業労働者、30万8297人。追跡調査期間は1944年から2005年の約60年間という極めて大規模なものです。(最も規模の大きい放射線被曝の疫学研究の一つである広島・長崎の原爆被爆生存者寿命調査-LSSでも対象は約12万人です)
 調査目的は、あくまで
 ① 低線量外部被曝の
 ② 長期間にわたる
 ③ 固形がん死
 との関連をあきらかにすることで、内部被曝影響、白血病やその他の疾病は調査目的から外した厳密な研究という点に大きな特徴があります。

 また、影響の対象を、子宮内胎児やこどもを全く考慮の外に置き、成人に対する、低線量・外部被曝影響というこれまで、放射線被曝研究のエア・ポケットになってきたジャンルを扱っていることにも大きな特徴があります。
 またこの研究は、国際的な学術研究として正式な査読も受け、ICRP派や反ICRP派の別なく今後参照すべき学術研究として、何人といえども無視しさることのできない学術的権威を備えていることも大きな特徴です。




研究対象群は30万8297人

 この研究は概要(Abstract)の中の「研究課題」の中で「電離放射線の低線量長期間被曝は固形がんのリスク増大と果たして関連するのか?」と問題提起をし、研究目的を明らかにしています。

 方法論としては、フランス・イギリス・アメリカの核産業労働者であって、電離放射線の外部被曝に関する詳細なモニタリング・データを有する30万8297人と死亡登録と関連づけられている、として外部被曝記録の明確な核産業労働者とその死亡記録を照らし合わせながら作業を進めていく、確実な方法をとっています。

 被曝線量を原爆投下時の所在場所で推定せざるを得なかった広島・長崎の原爆被爆生存者寿命調査=LSSや、大量放出時の行動軌跡に関するアンケート調査で、基本的には外部被曝線量を推定している福島県民健康調査との大きな違いがここにあります。要するにデータが確実ということです。


長期間低線量外部被曝による固形がん死を明らかにするのが狙い

 この研究では、「がんよる死亡」に関して、コホートの放射線被曝線量1Gy(グレイ)あたりの過剰相対死亡率が推定されています。

 Gyは放射線の吸収線量の単位名称です。ガンマ線やX線などの放射線を吸収したものとして通常1Gy=1Svと等値されていますが、GyとSv(シーベルト)はもともと異なる概念です。Gyは放射線の吸収線量の単位で科学的な概念ですが、Svは放射線から受ける“影響”の単位概念です。
 “放射線から受ける影響”という、条件によって大きく異なる事象を数値化することは、学術的にみて精確な科学的概念とはいえません。従ってICRP勧告でも、科学的な学術論文では、Sv(等価線量あるいは実効線量の単位名称)を使ってはならないことになっていますが、実際にはあたかも厳密に科学的概念をもっているかのように濫用されているのが現状です。もちろんこの研究では、Gy(グレイ)が使用されています。

 「過剰相対死亡率」。人ががんで死亡する原因は様々です。これを交絡因子といいますが、この研究では、放射線被曝を原因として「がん死亡する」ケースを、特異的に特定してその率(たとえば1000人あたりの死亡)を求めています。これを放射線被曝による「過剰相対死亡率」といいます。従って過剰相対死亡率は、放射線被曝が原因因子でがんのために死亡する率と考えても差し支えありません。


固形がん死は1万7957人

 追跡調査(follow-up)は合計820万人年に及びます。追跡調査終了時点(2005年)では、30万8297人のコホートのうち、6万6632人が死亡しており、うち1万7957人が固形がんによる死亡でした。(表18参照のこと)

 そして概要では次のように結論づけています。

 「研究の結果は、放射線被曝線量の増加とがん死亡率増加は直線的であることを示唆している。(比例関係にあることを意味しています)核産業労働者の結腸の平均積算線量は20.9mGyだった。中央値は4.1mGyだった」

 研究対象群(コホート)の核産業労働者の平均勤務年数は約12年。結腸の積算被曝放射線量は平均20.9mGyとさほど大きくはありません。それより驚くのは中央値が4.1mGyと低いことです。



 そして得られた過剰相対死亡率は、白血病を除くすべてのがんで、積算被曝線量1Gyあたり48%(または0.48)(10年間のラグタイム)(90%信頼区間:20%から79%)と驚くほど高いものでした。
 同様の関連性は固形がんの過剰死亡率にもみられ、1Gyあたり47%(または0.47)でした。(90%信頼区間:18%から79%)
 がんは「固形がん」と「血液のがん」に大別できます。「固形がん」はさらに「上皮がん」と「非上皮がん」(肉腫)に分類できます。この研究でのターゲットはあくまで、「固形がん」による死亡です。ですからこの研究では白血病をのぞく全てのがんの過剰死亡率が0.48、血液のがん全体をのぞいた固形がんに限定しても過剰死亡率が0.47と極めて高かったことを意味しています。

 ちなみに高線量外部被曝調査が主目的だった広島・長崎の原爆被爆者寿命調査(LSS)では、20歳から60歳の成人で被曝による過剰相対死亡率は1Svあたり0.32だったのです。(この場合1Gy=1Svとみなすことができます。95%信頼区間:0.01から0.50)


外部低線量被曝でも明らかに有意な結果

 さて問題の0-100mGy(0-100mSv)の低線量被曝領域ですが、この研究では、100mGy超の領域に比較すると、精度・科学的厳密さにおいては劣るものの、100mGy超の領域にみられる直線的比例関係が、0-100mGyの領域においてもみられる、としています。低線量被曝領域の「固形がん死」の発生率は、高線量域の発生率となんらかわることがなかったのです。

 ここで、前述ICRP学説の骨子のことを思い出してください。(11頁「ICRP学説の根幹」の項参照)

 これは、「100mSv以下での被曝については健康に害があるかどうか科学的に明確ではない」というものでした。この場合の100mSvは実効線量です。ところが実際には外部被曝のみによっても、吸収線量レベルすら、100mGy以下で被曝による過剰な「固形がん死」が成人の間で発生しているのです。

 図9の「直線しきい値なしモデル図」で、ICRPが「科学的な証拠はない」とする低線量被曝領域で、「科学的な証拠」が出てきた格好です。実際、同論文に引用されている「結腸の積算被曝線量による全がん死」のグラフをみても、600mGyあたりの領域での死亡数が40人と数が少ないのに比べ、100mGy以下の領域では、コホートの人数が多いこともあって、1167人、2126人、2065人と調査終了時点では、はるかに低い蓄積被曝線量領域で「がん」で死亡している人が圧倒的に集中しているのが現状です。これをみても、「100mSv以下の低線量被曝では人体に影響があるという科学的な証拠はない」などといってはいられなくなるのがよくわかります。





(▼以上の内容は広島1万人委員会第74回チラシを転載しています。)

「伊方原発運転差止を
ヒロシマから提訴」のトピック

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