被爆地ヒロシマが被曝を拒否する伊方原発運転差止広島裁判
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「ふるさと広島を守りたい」ヒロシマの被爆者と広島市民が、伊方原発からの放射能被曝を拒否し、広島地方裁判所に提訴しました


伊方原発広島裁判メールマガジン第5号 2016年4月27日



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伊方原発・広島裁判メールマガジン 第5号
止まらない川内原発と萎縮するメディア
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2016年4月27日(水)発行
編集長 :大歳  努
副編集長:重広 麻緒
編集員 :綱崎 健太

4月14日と16日に熊本県熊本地方を震源とする震度7の大地震が2度起こり、この記事を書いている4月25日現在においても熊本・大分両県で避難者数は19万人を上回り、死亡者数は48人という大災害となりました。
そして、当然ながら原発反対・中立・容認の立場を超えて、「川内原発をせめて今だけは停止させておくべき」という意見が広く発言されるようになりました。しかしながら、九州電力も政府官邸もようやく再稼働させることができた“虎の子”の川内原発1・2号機を止めることなく通常運転させたまま現在に至っております。
本号においては、この現象を一部、原発推進派の視点も取り入れながら考察してみたいと思います。

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お知らせ
◇伊方原発広島裁判:仮処分第一回審尋 日程告知
今日の見出し
■4月14日及び16日、熊本県熊本地方において震度7の地震が起こる
■川内原発でも揺れを観測
■なぜ、川内原発を止めようとしないのか?
■萎縮するメディア
■ネット空間にもいる、自主規制を促す人々
■編集部感想

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お知らせ
◇伊方原発広島裁判:仮処分第一回審尋 日程告知
4月28日、広島地裁にて伊方原発3号機運転差止仮処分申立の第1回審尋が行われます。
 ↓
http://saiban.hiroshima-net.org/report/
審尋に先立って、「勝てば即停まる仮処分」講演会・学習会を開催します。
講演者は、脱原発弁護団全国連絡会共同代表の河合弘之弁護氏、
同じく共同代表の海渡雄一弁護士です。
次のような日程です。

12:30 講演会・学習会(KKRホテル)
       「勝てば即停まる仮処分」 河合弘之弁護士 海渡雄一弁護士
14:45 広島地裁集合
15:00 仮処分審尋(広島地裁)
       応援スピーチイベント
16:00 説明報告会・記者会見
16:45 閉会
詳しくは、次の広報案内チラシをご覧ください。
 ↓
http://saiban.hiroshima-net.org/pdf/20160428.pdf

地震列島で原発が運転される危険を、あらためてひしひしと感じるこの頃です。
伊方原発運転差止を求める、多数の強い意志の存在を示すためにも、ふるってご参加いただきたいと存じます。
長時間の日程ですので、途中まで、あるいは途中からのご参加も歓迎です。


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■4月14日及び16日、熊本県熊本地方において震度7の地震が起こる
今回、熊本県の地震によって生じた災害は、非常に大規模な災害となりました。この災害の概要を説明するだけも多くの紙面を費やさなければならないので、詳しくは
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%86%8A%E6%9C%AC%E5%9C%B0%E9%9C%87_(2016%E5%B9%B4)#.E5.8E.9F.E7.99.BA.E9.96.A2.E9.80.A3
(『熊本地震』;ウィキペディア)
を一読しておいていただきたいですが、いくつかの点で、この地震がこれまでの地震とはかなり異なるものであることが分かります。

まず、4月14日21時26分と同月16日1時25分頃に震度7の大地震が2回起きています(後者の地震は当初震度6強と発表されましたが、後に震度7に修正されました)。これは観測史上例がないそうです。もちろん、この地震の名称も『熊本地震』ではなく、『熊本大地震』とし、直ちに指定にすべき規模のものでした(激震災害指定は25日になってやっとされました。細かい話をすれば、地震の名称と震災の名称は通常異なるので、”熊本大震災”のような名称が妥当です)。
九州地方は確かに火山地帯ではありますが、地震地帯ではなく、むしろこれまであまり大きな地震が起きなかった地域です。文部科学省の研究機関である地震調査研究推進本部によれば、今回の地震を起こした布田川断層帯で30年以内にM7程度の地震が起こる確率は0~0.9%というかなり低いものでした。
http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/katsudanso/f093_futagawa_hinagu.htm
それだけ、今回の地震は想定外の地震であったということがわかります。

そしてもう一つ今回の地震が特殊なのは、余震の震源域がかなり分散・移動したという点にあります。震度7を引き起こした震源域は熊本県熊本地方益城町周辺でしたが、余震の震源域は熊本県阿蘇地方、大分県西部、大分県中部にも広がり、さらに益城町の南西側の日奈久断層帯の北東部にも広がりを見せました。複数の断層帯が連動してしまったと見ることができます。

■川内原発でも揺れを観測
ではこの時、九州電力川内原子力発電所でどの程度の揺れがあったかというと、九州電力の発表によれば、4月14日と16日の地震で、川内原発でより大きい揺れとなったのは16日1時25分の地震のほうでした。この時、薩摩川内市中郷にある気象庁地震計は震度4でしたが、発電所の地震計は震度3、最大加速度は建屋上部で12.6ガル、地表面で30.3ガルでした。
原子炉を自動停止する時の設定値は、水平方向で160ガル、垂直方向で80ガルなので、数値だけを単純にみれば、川内原発の経験した揺れは原子炉を止めるほどのものではなかったかも知れません。
田中俊一原子力規制委員会・委員長は18日の同委員会の臨時会議後の会見において、この地震における川内原発への影響について「安全上の理由があれば止めなければならないが、今の状況で問題があるとは判断していない」と発言しました。
この2日前、規制委員会から同様の報告を聞いていた丸川珠代環境大臣は「現在のところ、原子力規制委員会は停止させる必要はないと判断している」と発言しています。(この二つの発言は一貫しているようですが、注意しなければならないことがあります。原発を止める・止めないの判断は、規制委員会ではなく政府の責任においてなされるものなので、丸川氏は意図的に規制委に責任を転嫁しています)

■なぜ、川内原発を止めようとしないのか?
しかしながら日奈久断層帯は、南西側は八代海まで伸びており、この八代海の断層帯南端と川内原発までの距離は30km程度しかないこと、また大地震が川内原発を襲うとか、襲わないという以前に、ここは一度原子炉を止めてしばらく様子を見ておいたほうが、むやみに熊本と鹿児島の県民の方々を不安にさせずに済むといったことを考えると、原発を動かし続けるという判断が政治的に賢明ではあるとは到底考えられません。
仮に原発を推進する現政権の視点でものを考えたとき、とりあえずここは川内原発を止めておいて、熊本と鹿児島の有権者に不要な不安感・不信感を与えず、参議院選挙のあとで再び原発推進に邁進するという常套手段も十分考えられたと思います。一体なぜそうしないのか?

ひとつ言えるのは、原発推進勢力の当初の予定では、少なくとも現在ぐらいまでには、伊方、川内、高浜、大飯の原発は再稼働させておくはずだったはずです。
東日本大震災の後、最も早く再稼働したのは大飯原発3・4号機です。これは現在ある規制基準の審査を通さないプロセスで再稼働しましたが、現在は規制基準適合性に係る審査にも入っていません。
現在の規制基準が出来てから当初、最も早く再稼働すると言われていたのが伊方原発です。しかし再稼働に反対する気運が次第に高まり、原発推進勢力は急遽、再稼働の矛先を保守王国・鹿児島県の川内原発に変更しました。
川内原発1・2号機は2015年に再稼働しましたが、これにしても市内の一部が30km圏内に入っている姶良市の市議会で、再稼働の反対決議が既に出されていたわけですから、グレーな部分が残ったかたちでの再稼働でした。
高浜原発に至っては、一度、福井地裁の仮処分申立で差止められて、これが最高裁から送り込まれた裁判長に再度ひっくり返って、操業運転を目前にして、今度は隣県の滋賀県で起こった仮処分で差止が決定しました。
これらは見ていくと原発推進派が当初、頭に描いていた再稼働のスケジュールは全くうまくいっていないことがわかります。推測の域を出ないかも知れませんが、こうしたことを考えたとき、隣県で大きな地震があったぐらいで簡単に原発を止めたくない、という心理は確実にあるはずです。

■萎縮するメディア
その一方で、政府官邸は今回の大地震と原発とを、国民が各自の頭の中で結びつけてしまうことすら嫌がっているのではないかと思います。そして報道機関(特に象徴的なのはNHK)は、そうした政府の感情を自主的に汲み取って報道の仕方に手心加えているようにも見えます。
14日と16日のNHK・朝のニュースでは、九州各地の震度を地図上で表示したものが、なぜか熊本と鹿児島の県境あたりで切れていて、実際には鹿児島でも揺れがあったにも関わらず九州北部だけが表示されていたということがありました。
また活断層の表示も布田川・日奈久断層帯だけを表示して、この二つの断層が中央構造線という巨大な断層群の一部であることも伝えていませんでした。
前者は言うまでもなく川内原発、後者は佐田岬にあって中央構造線の間近にある伊方原発を視聴者に意識させないために、NHK側が政府官邸の意向を忖度するような、「自主的な配慮」があったと見ることができないでしょうか?

なぜ、ここまでメディアは萎縮してしまっているのでしょう。これに関してはここのところ様々な動きがありました。
『報道ステーション』のメインキャスター古舘伊知郎氏、『クローズアップ現代』のメインキャスター国谷裕子氏、『ニュース23」のアンカー岸井成格氏という政府に対して鋭い批判・質問をするキャスター、アンカーがこの春、次々と降板させられ、これ以前には高市早苗総務大臣が、公平性を欠く報道を繰り返して行った放送局に対して、電波停止処分を仄めかす、威嚇発言もありました。
NHKなどは会長に居座っているのが、安倍総理のオトモダチというか、紐付きのような籾井勝人会長ですが、熊本地震への対応を協議するNHKの災害対策本部会議で、原発関連の報道について「住民の不安をいたずらにかき立てないよう、公式発表をベースに伝えてほしい」と話していたそうです。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12325884.html

こうした日本のメディアの在り方に海外の目は相当厳しくなっています。
国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が今年発表した「世界報道の自由度ランキング」によれば、日本は昨年の62位からさらに順位を落とし、今年は72位とのことでした。これはソマリアなどのアフリカの発展途上国と並ぶレベルです(日本が最もランキングで上位にいたのは2010年の民主党政権時)。
また、4月19日に国連人権理事会が任命した特別報告者で「表現の自由」を担当する米カリフォルニア大アーバイン校のデビッド・ケイ教授が来日し、日本における政府のメディアに対する圧力と、これを受けたメディア側の萎縮について、次のように強い非難と懸念を表明しました。
「多くのジャーナリストが、自身の生活を守るために匿名を条件に私との面会に応じてくれましたが、国民的関心事の扱いの微妙な部分を避けなければならない圧力の存在を浮かび上がらせました。彼らの多くが、有力政治家からの間接的な圧力によって、仕事から外され、沈黙を強いられたと訴えています。これほどの強固な民主主義の基盤のある国では、そのような介入には抵抗して介入を防ぐべきです」(「国際連合広報センター」ウェブサイト4月19日付より)

■ネット空間にもいる、自主規制を促す人々
このように、日本のメディアは政府の介入によって完全に萎縮してしまっていることは明らかな事実ですが、私たちが普段使っているネットメディア、SNSでは自由に意見を言うことができているのでしょうか?
こうした災害や有事の際に、「原発は止めておくべき」と書き込みを入れると、必ず次のような反応があります。
「今は災害時で被災者を助けるのが優先なのだから、それ以外の政治的な発言はするべきではない」
こうした反応は原発停止を求める意見だけではなく、オスプレイが救援物資の輸送に使われたとき「オスプレイの政治利用だ」と発言した発言者にも向けられました。
こうした反応は一見中立的なようですが、おかしいものをおかしいとか、止めるべきものは止めろとか、こうした当然あってしかるべき意見を言わせないようにする口封じのテクニックではないでしょうか。
そうした出てしかるべき意見を言う発言者に「被災者の感情を第一に考えない者」のレッテルを貼りつけて意見を言わせにくくしているように私には見えます。
第一に、こうした有事に便乗して政治的な発言をするのは政府のほうの人間です。たとえば、菅官房長官はこの災害に対して緊急事態条項の必要性を強調する発言をしています。
http://www.asahi.com/articles/ASJ4J674GJ4JULFA00T.html

これは911同時多発テロの後、ブッシュ政権が操った「ショック・ドクトリン」という政治手法で、有事において国民の思考力が低下している隙に自分の進めたい政策を一気に進めるという危険な政治手法です。
現在のような有事において私たちが必要とするのは、むしろ萎縮することなく発言することです。
当原告団でも、隅田正二名誉原告団長(広島原爆被爆者。89才)、堀江壯原告団長(広島原爆被爆者。75才)、伊藤正雄副団長(広島原爆被爆者。75才)は連名で、安倍首相に「国民の不安を取り除くために川内原発の一時運転停止を求める要望書」を提出しました。
http://saiban.hiroshima-net.org/pressrelease/009_20160419.html
どうかメルマガの読者の皆様もご一読ください。
(大歳)

■編集部感想
自然災害、なかでも甚大な災害はいつも想定外なもので、想定内だとそれは雨や風など自然現象として片付けられてしまいます。
防災科学は常に想定外を想定内に納めるために進歩してきましたが、では、それを扱う私たち人間社会はどうでしょうか。
かつての封建制度や大日本帝国憲法を振り返ると、私たちは越えるべき壁をいくつも越えてきたとも言えます。
一方で権力を手にしたとき、或いは権力が作り出した不条理な秩序を前にしたときの私たち人間は、まだまだ未熟だと言わざるを得ません。
原発はその一例で、今回の川内原発の件はそれが分かりやすい形で具現化したと言えるでしょう。
責任の所在を曖昧にするために再稼働の決定をたらい回しにした次は、動いている原発を誰も止められないという次のたらい回しです。そこには安全を追求する防災科学は見る影もありません。
それでも私たちは、原発を停めないと言う政府、規制委員会、九電らを記録し責任の所在を明確にし、それを追及し続けるしかありません。
彼らは徹底的にしらを切るでしょうが、私たちはおかしいことをおかしいと言う至極当たり前なことを、原発と言う不条理を取り除くために、継続してやっていかなければなりません。(綱崎)

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伊方原発運転差止広島裁判
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