被爆地ヒロシマが被曝を拒否する伊方原発運転差止広島裁判
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「ふるさと広島を守りたい」ヒロシマの被爆者と広島市民が、伊方原発からの放射能被曝を拒否し、広島地方裁判所に提訴しました

第8回口頭弁論 2017年11月8日報告


 伊方原発広島裁判の本訴は、2017年11月8日第8回口頭弁論期日を迎えました。口頭弁論に先立ち、原告、応援団のみなさんは広島弁護士会館3階大ホールを会場に、ミニ集会を開いて気勢を上げました。

第4陣提訴原告41人が新たに参加

 午後1時45分から恒例の乗り込み行進。先頭列には第4陣提訴の新原告のうち代表4人の方と、弁護団から胡田敢弁護士と松岡幸輝弁護士が、「被爆地ヒロシマが被曝を拒否する」の横断幕を掲げて広島地裁まで歩きました。


 乗り込み行進の後、新原告代表4人は、弁護団事務局の松岡弁護士の立ち会いの下、裁判所事務局に伊方原発の運転差止と廃炉を訴える内容の提訴状書面を提出し受理されました。
 今回第4陣提訴の原告数は41人。うち広島原爆の被爆者が5人。広島から一番遠い地域の原告は岩手県在住。今回は茨城県、埼玉県、東京都など東日本からの原告が多いのが特徴です。とはいえ広島県内の新原告が圧倒的に多く、比率は70%を越えました。

 午後2時きっかりに口頭弁論に先立つ進行協議が開始されました。裁判長は末永雅之裁判官(山本由美子右陪席、岡村祐衣左陪席)。

 進行協議で裁判長の興味の焦点は、裁判全体の進行計画(裁判計画)だったようで、原告側弁護団からこれから出てくる準備書面の内容と構成の確認、被告側(四国電力側)から提出される準備書面の内容と構成の確認をしました。

準備書面「地すべり」及び「津波」を提出

 なお原告側は今回口頭弁論時に準備書面12「地すべり」及び準備書面13「津波」を裁判所に提出しています。一方被告側は基準地震動の決め方には何ら瑕疵はないと主張する準備書面4を提出しています。

 さらに末永裁判長が、第4陣提訴の人数の確認と広島地元の割合の確認をしたことが注目を引きます。末永裁判長は原告側に対して代理人目録の不備を理由として、第2陣提訴原告と第3陣提訴原告に委任状の再提出を命じており、このためいったん併合した第1陣提訴原告と第2陣提訴原告の訴えを解消したほどです。原告側はまだ再提出を行っていないため、今回提訴で同じ訴えが4本別々に行われ、しかも昨年8月3日に提訴した第2陣原告は、書類上提訴から1年以上経過して1回も口頭弁論が行われていない、という極めて異例の事態となっています。

 進行協議では、末永裁判長は委任状再提出が行われれば直ちに併合を行うと明言しましたが、今回提訴した第4陣原告との併合を先に行うのかどうかについては明言しませんでした。今回広島地裁の姿勢は、「裁判所による裁判所のための裁判」という印象が強く、原告不在のまま訴訟指揮がおこなわれているという感を深くします。

原告不在の「意見陳述」却下

 原告不在の裁判といえば末永裁判長は今回原告側が申請していた「意見陳述」も認めませんでした。この理由として末永裁判長は「提訴時や併合時など節目に限って意見陳述を認める。今回はそれにあたらない。被告側にも聞いてみたところ不必要だということだった」と述べました。意見陳述をさせるさせないは確かに訴訟指揮権の範囲内のことであり、その判断の権限は裁判長にあります。それだけに、末永裁判長の申請却下の理由と相まって、さらにこの裁判の「原告不在ぶり」を際立たせる決定とはなりました。なお原告が予定していた意見陳述は、後ほど開かれた「記者会見・報告会」で「まぼろしの意見陳述」として参加者の前で読み上げられました。「まぼろしの意見陳述」をご一読ください。

 進行協議が終了すると直ちに第8回口頭弁論が開催されます。この日傍聴席は60席。うち5席が原告席、5席が記者席に割り当てられ、2席が被告側に割り当てられましたので残り48席。48席に対して傍聴希望者は46人でしたので結局傍聴席抽選は行われませんでした。

 開廷して、末永裁判長は原告側被告側双方の提出準備書面の確認、原告側提出の証拠書類(裁判用語では“甲号証”と呼ばれています)、被告提出の証拠書類(同じく乙号証)の確認をしました。これから提出する予定の書面の確認をした後、次々回(第10回)口頭弁論期日は2018年3月26日(月)に行うと宣言した後、閉廷しました。この間あっという間の7分足らず。
 折角備え付けられているマイクも使わない末永裁判長のぼそぼそ声は傍聴席ではほとんど聞こえず、傍聴していた人は一体なにが行われているのかさっぱりわからないまま終わった第8回口頭弁論でした。ここでも「原告不在・市民不在」の裁判のありようが如実に露呈した格好です。

写真パネル展示と寄せ書き横断幕コーナー

 口頭弁論が早く終わったおかげで、弁護士会館3階大ホールでの記者会見・報告会は予定より早くはじめることができ、時間に余裕があったためいつもより充実した中身の濃い内容となりました。


 さて、この日会場の後半部分には、寄せ書きコーナーが設けられました。これは中央に「核と人類は共存できない」と大書された横断幕に、参加者お一人お一人の「反原発」・「脱原発」への思いを書いて寄せて貰おうというものです。この横断幕は、12月上旬に予定されている伊方3号機運転差止仮処分決定日(Xデー)の広島高裁乗り込み行進時に、行進参加者が掲げて歩く予定にしています。


 また寄せ書きコーナーのとなりには、2016年3月11日の本訴・仮処分同時提訴以来私たちがどんな活動をしてきたかを写真で示す写真パネル展示コーナーも設けられ、参加者の注目をあつめました。


「瀬戸内海が死の海になることは阻止しなければ・・・」

 記者会見・報告会に先立ち、今年に入って亡くなられた原告1人、応援団・支援者3人の計4人の方々のお名前を読み上げ全員で黙祷を捧げました。

 報告会では、第4陣提訴が行われたことを報告した後、登壇した3人の新原告の決意表明が行われました。江田島在住の新原告は「伊方原発が事故を起こしたら、瀬戸内海は死の海となることは明らか。何としてもこれだけは阻止しなければという思いで原告となりました」と述べ、参加者の盛んな拍手を浴びました。

 口頭弁論意見陳述が却下となったいきさつ説明に続いて前述の「まぼろしの意見陳述」を担当する予定だった原告が読み上げ、参加者の盛んな拍手を受けました。参加者の中では「なぜ意見陳述させないんだ!」の声が圧倒的でした。

 続いて弁護団の胡田敢弁護士が今回口頭弁論期日の概要説明。次に今回提出された準備書面12「地すべり」13「津波」の内容解説。担当は竹森雅泰弁護士です。地すべり問題とは、伊方原発が強固な岩盤の上に建っているという四国電力の主張とは裏腹に、極めて地すべりしやすい地質学的特徴を指摘した問題です。竹森弁護士の分かりやすい解説は参加者の頭を様々に刺激したようです。続いて行われた質疑応答はいつにもまして活発で、裁判や伊方原発の危険に対する理解をさらに深める質問や考察が目立ちました。

 閉会のあいさつにたった伊藤正雄原告団副団長は、12月上旬に予定されている広島高裁仮処分決定にふれ「勝てば伊方原発は即止まります。来たるべきXデーにはみなさん是非とも、広島高裁に集まって頂きたい」と力強く呼びかけました。


 こうして約1時間半に及ぶ記者会見・報告会は盛会のうちに幕を閉じました。参加者は60人以上でした。


第8回口頭弁論期日御案内チラシ

2017年11月8日 第8回口頭弁論時 提出書面

原告側

準備書面12「地すべり」 A4版23枚
準備書面13「津波」 A4版21枚
まぼろしの意見陳述書「私たちは低線量被曝を受け入れらません」原告 西塔文子 A4版5枚


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