被爆地ヒロシマが被曝を拒否する伊方原発運転差止広島裁判
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「ふるさと広島を守りたい」ヒロシマの被爆者と広島市民が、伊方原発からの放射能被曝を拒否し、広島地方裁判所に提訴しました

Press Release No.146

1月27日、新規仮処分広島高裁抗告審、審尋期日開催

2023年1月22日(広島)

 伊方原発3号機運転差止仮処分事件(広島新規仮処分)は、来る1月27日(金)広島高裁抗告審(脇由紀裁判長、右陪席・梅本幸作裁判官、左陪席・佐々木清一裁判官)において審尋期日が開かれる。開始時刻は14:00で会場は広島高裁300号法廷。
 当日審尋期日の予定は次の通り。①双方書面(後述)確認15分、②抗告人(住民側)らプレゼン30分、③裁判所からの質疑5分、④相手方プレゼン30分、⑤裁判所からの質疑5分 ⑥そのほか5分。

 同抗告審は、2021年11月18日に行われた住民側即時抗告以来、表面無風のように見えたが、水面下では、裁判所の姿勢をめぐって住民側(抗告人)と四国電力(相手方)の間に壮絶なバトルが展開されており、ここで短くこれまでの経緯を説明しておく。

 2020年3月11日に提訴された「広島新規仮処分」事件は21年11月4日に広島地裁(吉岡茂之裁判長)が下した申立て却下決定で一応の区切りをみせた。このとき住民側が激怒し、激しい「裁判所不信」に駆られた原因は、却下決定の内容そのものにあった。住民側訴えは比較的簡素であり、

①伊方原発の耐震基準である「基準地震動650ガル」は、計算によって求められているが、「地震は事前に精度良く予知・予測できる」の考え方が主流であった時代に策定された考え方に基づいている。現在では政府を含む地震の専門家の考え方は「地震は事前に精度良く予知・予測できない。」に大きく変化している。したがって地震の精度良い予知・予測はできないのにその地震による最大地震動を正確に計算によって求められるはずがない。すなわち、当該原発敷地を将来襲う最大地震動を計算によって求めそれを耐震基準とする現在の原子力規制委員会が策定した新規制基準の定め自体が不合理・非科学的である。(規制基準の不合理性)

②よしんば基準地震動を計算によって求めるにしても、その結果は必ず現実に発生する 地震の最大地震動と比較参照し、計算結果に現実性・合理性があることを確認しなくてはならない。またこのことは地震の審査ガイドにも明記してある。しかるに650ガルという計算結果を、現実に発生している地震の最大地震動と比較参照してその合理性を検証した形跡はなく、現実にも650ガルという最大地震動は、日本列島で頻々として発生する地震の最大地震動に比較すると余りにも低水準であり信頼性に欠ける。(規制委審査における看過しがたい過誤・欠落)

③②の極端な例が、南海トラフ巨大地震(マグニチュード9)によって伊方原発敷地を襲う最大地震動が181ガルとする四国電力の主張である。(「181ガル問題」)しかも四国電力はマグニチュード9の巨大地震の震源乃至は強振動生成域を伊方原発敷地直下においても最大地震動は181ガルと主張しており、現実に発生している地震動と比較参照すれば、181ガルがいかに荒唐無稽な数字かは、別に地震の専門家でなくてもありえない数字であることは一目瞭然である。しかも規制委はろくに審査も行わず、四電の主張を了承している。(規制委審査における看過しがたい過誤・欠落)

 というものだった。この住民側の主張に対して前述広島地裁決定(吉岡決定)はどうだったかというと、

  (1)上記①、②、③については全く判断せず、
  (2)住民側は伊方敷地を650ガル以上の地震動が将来襲うと主張していると断じ(住民側主張の捏造)、
  (3)本件は民事裁判なので立証責任は住民側にあるが、住民側は(2)の主張の立証に失敗している、
  (4)よって申し立ては却下する、

とする内容だった。

 この吉岡決定に接し、住民側は、「人格権の守護神」としての裁判所に対する不信を強めたばかりでなく、その没論理性、腐食性に対して新たに警戒心をもった。特に住民側の憤激を買ったのは、住民側が主張していないことを捏造し、自ら捏造した論点に裁判所の判断を下すという手法である。これは民主主義社会における裁判所の腐食・堕落というほかはない。

 住民側は、このような新たな警戒心をも併せ持って広島高裁に即時抗告を行ったのであるが、果たして広島高裁も裁判所の腐食・堕落を窺がわせるような動きを見せる。すなわち抗告審裁判長の横溝邦彦氏(現在は定年退官)は、住民側が次々提出する書面には反応を示さず、論点整理を行うわけでもなく、7月になって突然進行協議を召集、その席上、「裁判にも納期がある。したがって早期に決定をだしたい。」という主旨の発言を行い、の「納期優先」の姿勢をむき出しにして自ら恥ずるところはなかった。
 結果として横溝氏は在職中に本事案に関する決定を出すことなく定年退官したが、「民主主義社会における裁判所の腐食・堕落」を助長するようなレールだけは敷いたのである。
 その後のいきさつを時系列風に書き出すと以下の通りである。

 ★8月22日(月)裁判所(横溝邦彦裁判長=当時)から今後の進行についての書面が示される。それによると9月末までに、抗告人らにおける一応の主張疎明の準備、10月末までに、上記に対する相手方の反論等の準備、11月末までに、抗告人らの最終的な主張疎明の準備、12月末までに、相手方の最終的な反論等の準備、2023年1月に審尋期日を設け、3月に決定、というもの。
 ★9月29日に審尋期日の調整連絡があり、10月5日「期日呼出状」が届く。2023年1月27日14時から300号法廷で審尋期日を行うというもの。
 ★11月末から12月はじめにかけて、横溝邦彦氏定年退官、新裁判長に脇由紀裁判長着任。左右陪席は変わらず。
 ★12月26日広島高裁(脇由紀裁判長)より事務連絡。
  連絡内容は以下の通り。
  ●上記8月22日付事務連絡でお知らせしたとおりの審理を行う。(審尋期日の開催)
  ●2023年3月中旬に決定を予定している。
  ●2023年1月27日の審尋期日のスケジュールは以下の通り。(冒頭前述の通り)

 以上の経過に照らすと、脇裁判長も横溝氏の敷いた路線(納期優先路線)を踏襲するものと見ることもでき、住民側は裁判所に対する不信感(まともに審理しないだろうという不信感)、さらには警戒心(吉岡決定に見られる裁判所の腐食性・堕落に対する警戒)を強めつつ1月27日の審尋期日を迎えることになる。

 住民側の当日取り組みについては添付期日案内チラシを参照してほしいが、大きくは以下の通り。

  13:15  広島裁判所正門前で記録撮影(コロナ対応のため行進行わず)
  14:00  300号法廷で審尋期日開始。(審尋一般非公開)
  15:00  広島弁護士会館2階大会議室 樋口英明氏による「住民側プレゼン」詳細解説(ZOOMによる遠隔参加併用)
  16:00前 審尋期日終了後、準備が整い次第、広島弁護士会館2階大会議室で記者会見報告会開催。
       (ZOOMによる遠隔参加併用)(記者会見報告会は完全コロナ対応で実施)

なお、2021年11月の高裁即時抗告以降、2023年1月27日の審尋期日までに住民側が裁判所に提出した書面は以下の通り。

 ■抗告人(債権者)提出書面
  <2022年>
 1月 7日 即時抗告理由書提出
 1月21日 即時抗告理由書補充書1提出
 4月14日 上申書(今後の主張立証予定について)
       争点一覧表
 5月22日 準備書面1(戦時原発の危険)
 5月31日 意見書(令和4年4月28日付け相手方意見書に対する意見)
 6月30日 補充意見書(電離放射線被曝問題について)
 6月30日 上申書(今後の主張立証予定について2)
 7月 7日 準備書面2(松田式について)
 7月29日 準備書面3(電離放射線の危険―内部被曝の危険)
 8月 8日 意見書(今後の進行についての意見)
 9月22日 準備書面4(相手方答弁書に対する反論)
 9月30日 準備書面5(債務者準備書面(2)に対する反論)提出
 9月30日 準備書面6(債務者準備書面(3)に対する反論)提出
 9月30日 上申書(提出予定について)提出
10月21日 準備書面7(戦時原発の危険に関する再反論)提出
10月27日 上申書 書面の提出について
11月30日 準備書面8(基準地震動以下の地震による危険)
11月30日 準備書面9(相手方の即時抗告審準備書面(4)に対する反論)
11月30日 準備書面10(相手方の即時抗告審準備書面(5)に対する反論)
11月30日 上申書 意見書提出予定について
12月19日 意見書(相手方の1 2月9日付け上申書に対する抗告人らの意見)
12月27日 準備書面11(早坂意見書について)
<2023年>
 1月20日 準備書面12(債務者の釈明について)
 1月20日 争点一覧表

(了)




【問い合わせ先】伊方原発広島裁判応援団事務局
〒733-0012 広島市西区中広町2丁目21-22-203
e-Mail :
URL: https://saiban.hiroshima-net.org
プレス担当者:哲野イサク

2023年1月22日プレスリリースNo.146


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