被爆地ヒロシマが被曝を拒否する伊方原発運転差止広島裁判
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「ふるさと広島を守りたい」ヒロシマの被爆者と広島市民が、伊方原発からの放射能被曝を拒否し、広島地方裁判所に提訴しました

「復興庁設置法等の一部を改正する法律案」への糾弾声明
各政党への可決阻止申し入れ、内閣総理大臣への抗議


2020年6月3日

私たち伊方原発広島裁判原告団の内部でも、「復興庁設置法等の一部を改正する法律案」に危惧していたが、衆議院を通過していよいよ参議院も通過成立するかという動きに、益々黙っていられなくなった。

原告団に諮るには唯一の意志決定機関であるところの総会決議を経なければならない。従って、規定に従い、原告団事務局で緊急会議が開催され、議論の後に声明、申入書、抗議文を作成することが決定された。

▼参考資料
東京新聞 2020年5月25日 07時07分「原発事故処理に再エネ財源流用 政府提出のエネ特会改正案」

2020年6月2日「復興庁設置法等の一部を改正する法律案」を糾弾する声明
2020年6月2日内閣総理大臣宛抗議文
2020年6月2日各政党申入書「エネルギー対策特別会計改正案可決成立を体を張って阻止してください」

原告団声明

2020年6月2日「復興庁設置法等の一部を改正する法律案」を糾弾する声明

声 明
「復興庁設置法等の一部を改正する法律案」を糾弾する


2020年6月1日
伊方原発広島裁判原告団事務局


5月22日衆議院を通過し、今週中にも参議院で可決成立しようとしている「復興庁設置法等の一部を改正する法律案」ほど、二重三重の詐欺的法案もない。いつから政府は詐欺師集団の巣窟となったのか。このような法案作成に手を貸す官僚はいつからその誇りをかなぐり捨てたのか。

 この法案は例によってお得意の束ね法案である。以下が束ねられている。
 ①復興庁設置法(復興庁の10年延長が骨子)
 ②東日本大震災復興特別区域法
 ③福島復興再生特別措置法
 ④復興財源確保法
 ⑤特別会計法(エネルギ-対策特別会計改悪が骨子)

 最大の問題はエネルギー対策特別会(以下エネ特会)改悪を目的とした特別会計法改悪である。

 この法案の狙いは明確である。

 わかりやすくいうと次のようになる。
 もともと福島事故処理資金は足りない。事故の影響を過小に見せようとして政府・経産省、東電が事故処理費を過小に見積もってきたからである。しかし足りないものは足りない。財源をひねり出さなければならない。一般会計からはもう捻り出せない。使い切ってしまったからだ。ならば、潤沢に資金のある特別会計から資金をもってこよう。
 だが、しばし待て。特別会計の原資は、目的税である。特別会計で集めた税金はその使途はそれぞれの法律で厳格に定めてある。自動車税で道路や橋を建設するのではなく、福島の汚染土処理に使ったら国民は怒るだろう。国民年金を集めて、福島事故の汚染水処理に使ったら国民は怒るだろう。だから一般税で集めた税金とは異なり、目的税として集めた税金はその目的に応じて使われねばならない。だからいくら福島事故処理の費用が足りなくなったからといって特別会計資金に手をつけるわけにはいかないのだ。最低限の財政規律であり、最低限の行政規律だ。

 ところが「貧すれば貪す」の例え通り(金に貧しているではない、政治倫理が貧しているのであり、官僚倫理が貧しているのである)、法律が禁じているのならその法律を変えてしまえばいいじゃないかというのが今回の特別会計法改悪である。(具体的にはエネ特会改悪)

 目的税としてその使途を国民と約束した税金を、目的以外の使途に使う、これが政治的詐欺でなくて何であろうか?これが第一の詐欺である。

 次の問題は、目をつけられたエネ特会は、将来の再生エネルギー開発のために集められた税金(石油石炭税)である。直接の納税者は石油・石炭に関係するエネルギー企業だが、その資金は石油・石炭を使う我々消費者が負担している。石油・石炭など化石燃料から自然エネルギーに移行するためなら、あるいは脱原発のために使うのなら、と納得した国民も多いはずだ。
 その資金をこともあろうに、原発事故の穴埋めに使うとは。将来の再エネ発展のためと信じて、あるいは脱原発のためならと石油石炭税の間接負担に応じてきた国民に対する裏切り行為である。これが第二の詐欺である。

 これを許せば、福島事故処理だけでなく、核燃料再処理の損失穴埋め、使用済み核燃料保管など止めどもなく、原発政策の損失の穴埋めに特別会計資金が使われていくだろう。

 しかし特別会計法改悪が国会で審議されれば、以上のような理由が国民の前に明らかになる。いや明らかにならざるを得ないのだ。

 そこで「福島復興諸法案」と束ねてしまえば、審議もなしに国会を通過するだろうと考えた。また実際にそうなりつつある。審議すべき内容を実質審議させない仕組みが束ね法案である。これが第三の詐欺である。

 今回の束ね法案は、その影響の大きさ(「特別会計のなし崩し的一般会計化」や「政治倫理・官僚倫理の退廃」、その犯罪性(「二重三重の詐欺行為」)、などから見て過日成立を見送った「検察庁法改悪」を、その問題性において、さらに上回るものである。

 我々は、次世代に「核なき被曝なき世界」を遺していこうとする市民グループとして今回法案成立を座して沈黙するに忍びない。

 ここに「復興庁設置法等の一部を改正する法律案」と成立させようとする政府を糾弾するものである。

伊方原発広島裁判原告団事務局
〒733-0012 広島市西区中広町2-21-22-203
E-mail: h-saiban@hiroshima-net.org
URL: https://saiban.hiroshima-net.org


内閣総理大臣宛抗議文

2020年6月2日内閣総理大臣宛抗議文

内閣総理大臣 殿

「エネルギー対策特別会計改正案」に抗議する



 伊方原発広島裁判原告団は、「復興庁設置法等の一部を改正する法律案」で“福島原発事故からの復興のため”という大義名分に潜り込ませた前代未聞の「特別会計の不透明な会計処理法案」(エネ特会改正案)に抗議する。

 特別会計は、決まった勘定の目的にしか使えない特定財源だったのを勘定間で繰り入れを可能にしようと画策している。これは前代未聞のことである。特別会計は一般会計と比べて、国会で審議する機会が少なくチェックが効きにくいので、会計がより不透明になる公算が大である。

「束ね法案」で議員や世間の目を盗んではいけない。

「エネルギー対策特別会計改正案」は本来、経済産業委員会で審議するもので、東日本大震災復興特別委員会で審議されるべきものではない。それを知った上でのこの操作(束ね法案)は、国民を裏切る行為である。これは大いに白日の下に曝け出されなくてはならない。

 では、なぜこうした姑息な背信行為をあえて官邸が取るにいたったのか、それを明らかにすべきである。福島原発の事故処理に膨大な費用がかかって対応ができないならば、事実を隠さずに伝えるべきである。再エネの財源を、汚染土処理に投入してもよいか大いに国民の声を聞くべきである。再生エネルギーの普及や投資と、原発重視のどちらが日本の未来にとって有意義かを考えて頂きたい。

 今、新型コロナ禍を隠れ蓑に、気づかれないうちに悪質な法案を通過させる動きが横行している。この法案もその典型と言える。私たち原告団事務局は、こうした動きに抗議を申し立てるとともに、市民と共有するものである。監視されるのは、官邸である。

2020年6月2日
伊方原発広島裁判原告団事務局


各政党申入書

2020年6月2日各政党申入書「エネルギー対策特別会計改正案可決成立を体を張って阻止してください」

  各政党  殿

申 入 書

「エネルギー対策特別会計改正案」可決成立を
体を張って阻止してください



 現在、参議院で審議中の「復興庁設置法の一部を改正する法律案」の中に、「エネルギー対策特別会計改正案」が束ねられています。

この「エネルギー対策特別会計改正案」の骨子は、「エネルギー対策特別会計」構成する、
 ①「エネルギー需給勘定」
 ②「電源開発促進勘定」
 ③「原子力損害賠償支援勘定」
のうち、「エネルギー需給勘定」から「電源開発促進勘定」への資金繰り入れを可能とするというものです。

 「エネルギー対策特別会計」内の各勘定は、財源と目的を厳密に区分しています。「エネルギー需給勘定」は、石油石炭税を財源とし、再生可能エネルギーの導入促進や、石油・天然ガス・石炭などの開発促進に使途を限定しています。目的税ですから当然のことです。

 ところが、本法案は、このように使途の限定されている「エネルギー需給勘定」の資金を、原発振興や福島原発事故汚染土の中間貯蔵施設整備を目的とする「電源開発促進勘定」に繰り入れられるようにするものです。

 以下のような理由で、この「エネルギー対策特別会計改正案」は犯罪的です。

①「エネルギー対策特別会計改正案」が、本来審議されるべき経済産業委員会ではなく、復興庁設置法、東日本大震災復興特別区域法、福島復興再生特別措置法、復興財源確保法と束ねて東日本大震災復興特別委員会に提出されていること自体が不適切です。

②この法律案が目指すように勘定間の資金転用を認めると、特定の財源として国民から徴収した税が時の政府の意のままに都合の良い勘定に流用される恐れがあります。しかも、この法律案は本来の勘定への返済期日の明記がない点から、政策決定者による国民財産の横領行為を防止することができないという大きな問題を抱えるものです。

③再生エネルギーの普及拡大は、地球環境を守る観点から世界的に推進が要請されており、わが国においても国民の圧倒的多数が望むところです。ところが、本来再生エネルギーの普及拡大に投入されるべき資金が、福島原発事故による汚染土の中間貯蔵施設の費用に流用され、さらには「電源開発促進勘定」に繰り入れられることで原発立地自治体への交付金や原発開発資金にも流用されかねないことは、わが国のエネルギー政策を「再生エネルギーへの普及拡大を妨げて原発振興へ」という誤った方向へと向かわせるものです。

 私たちは、「エネルギー需給勘定」の財源を、石油石炭製品への石油石炭税上乗せという形で負担しています。しかしその資金が再生可能エネルギーの開発・普及に使われることには、私たちは何ら異議を唱えるものではありません。

 しかし、再生可能エネルギーの開発・普及のために負担しているはずの資金が、誤った国策である原発推進の結果もたらされた福島原発事故処理の穴埋めに流用され、あまつさえ「電源開発促進勘定」に繰り入れられることによって原発振興にまで流用されることは、私たちの到底認めることのできないことです。ありていに言えば、これは詐欺の類です。

 福島第一原発事故処理の費用は第一義的に東京電力が負担すべきものです。国費からの支出が必要なのであれば、まず、「電源開発促進勘定」における原発振興を目的とした支出を止め、それを福島第一原発事故処理の費用に振り向けるのが先でしょう。

 また「束ね法案」の問題以上に、今回法案は「特別会計のなし崩し的一般会計化」の問題を含んでおり、長期的にみて税徴収の公明性、国民の信頼性、透明性などの根幹条件を揺るがしかねません。

 貴党におかれましては、このような犯罪まがいの法案の参議院可決成立を体を張って阻止するよう要望します。

 右申し入れます。

2020年6月2日
伊方原発広島裁判原告団事務局



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