被爆地ヒロシマが被曝を拒否する伊方原発運転差止広島裁判
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「ふるさと広島を守りたい」ヒロシマの被爆者と広島市民が、伊方原発からの放射能被曝を拒否し、広島地方裁判所に提訴しました


声 明
「復興庁設置法等の一部を改正する法律案」を糾弾する


2020年6月1日
伊方原発広島裁判原告団事務局


5月22日衆議院を通過し、今週中にも参議院で可決成立しようとしている「復興庁設置法等の一部を改正する法律案」ほど、二重三重の詐欺的法案もない。いつから政府は詐欺師集団の巣窟となったのか。このような法案作成に手を貸す官僚はいつからその誇りをかなぐり捨てたのか。

 この法案は例によってお得意の束ね法案である。以下が束ねられている。
 ①復興庁設置法(復興庁の10年延長が骨子)
 ②東日本大震災復興特別区域法
 ③福島復興再生特別措置法
 ④復興財源確保法
 ⑤特別会計法(エネルギ-対策特別会計改悪が骨子)

 最大の問題はエネルギー対策特別会(以下エネ特会)改悪を目的とした特別会計法改悪である。

 この法案の狙いは明確である。

 わかりやすくいうと次のようになる。
 もともと福島事故処理資金は足りない。事故の影響を過小に見せようとして政府・経産省、東電が事故処理費を過小に見積もってきたからである。しかし足りないものは足りない。財源をひねり出さなければならない。一般会計からはもう捻り出せない。使い切ってしまったからだ。ならば、潤沢に資金のある特別会計から資金をもってこよう。
 だが、しばし待て。特別会計の原資は、目的税である。特別会計で集めた税金はその使途はそれぞれの法律で厳格に定めてある。自動車税で道路や橋を建設するのではなく、福島の汚染土処理に使ったら国民は怒るだろう。国民年金を集めて、福島事故の汚染水処理に使ったら国民は怒るだろう。だから一般税で集めた税金とは異なり、目的税として集めた税金はその目的に応じて使われねばならない。だからいくら福島事故処理の費用が足りなくなったからといって特別会計資金に手をつけるわけにはいかないのだ。最低限の財政規律であり、最低限の行政規律だ。

 ところが「貧すれば貪す」の例え通り(金に貧しているではない、政治倫理が貧しているのであり、官僚倫理が貧しているのである)、法律が禁じているのならその法律を変えてしまえばいいじゃないかというのが今回の特別会計法改悪である。(具体的にはエネ特会改悪)

 目的税としてその使途を国民と約束した税金を、目的以外の使途に使う、これが政治的詐欺でなくて何であろうか?これが第一の詐欺である。

 次の問題は、目をつけられたエネ特会は、将来の再生エネルギー開発のために集められた税金(石油石炭税)である。直接の納税者は石油・石炭に関係するエネルギー企業だが、その資金は石油・石炭を使う我々消費者が負担している。石油・石炭など化石燃料から自然エネルギーに移行するためなら、あるいは脱原発のために使うのなら、と納得した国民も多いはずだ。
 その資金をこともあろうに、原発事故の穴埋めに使うとは。将来の再エネ発展のためと信じて、あるいは脱原発のためならと石油石炭税の間接負担に応じてきた国民に対する裏切り行為である。これが第二の詐欺である。

 これを許せば、福島事故処理だけでなく、核燃料再処理の損失穴埋め、使用済み核燃料保管など止めどもなく、原発政策の損失の穴埋めに特別会計資金が使われていくだろう。

 しかし特別会計法改悪が国会で審議されれば、以上のような理由が国民の前に明らかになる。いや明らかにならざるを得ないのだ。

 そこで「福島復興諸法案」と束ねてしまえば、審議もなしに国会を通過するだろうと考えた。また実際にそうなりつつある。審議すべき内容を実質審議させない仕組みが束ね法案である。これが第三の詐欺である。

 今回の束ね法案は、その影響の大きさ(「特別会計のなし崩し的一般会計化」や「政治倫理・官僚倫理の退廃」、その犯罪性(「二重三重の詐欺行為」)、などから見て過日成立を見送った「検察庁法改悪」を、その問題性において、さらに上回るものである。

 我々は、次世代に「核なき被曝なき世界」を遺していこうとする市民グループとして今回法案成立を座して沈黙するに忍びない。

 ここに「復興庁設置法等の一部を改正する法律案」と成立させようとする政府を糾弾するものである。

伊方原発広島裁判原告団事務局
〒733-0012 広島市西区中広町2-21-22-203
E-mail: h-saiban@hiroshima-net.org
URL: https://saiban.hiroshima-net.org


2020年6月2日「復興庁設置法等の一部を改正する法律案」を糾弾する声明

<添付資料>
2020年6月2日内閣総理大臣宛抗議文
2020年6月2日各政党申入書「エネルギー対策特別会計改正案可決成立を体を張って阻止してください」
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