「ふるさと広島を守りたい」ヒロシマの被爆者と広島市民が、伊方原発からの放射能被曝を拒否し、広島地方裁判所に提訴しました
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伊方原発・広島裁判メールマガジン第29号
対政府「交渉」で広島高裁決定について見解を問う
―広島高裁・伊方原発差止決定を受けて
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2018年2月4日(日)発行
編集長:哲野イサク
編集委員:綱崎健太
編集委員:小倉 正
編集委員:網野沙羅
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▽本日のトピック▽
1.編集委員会からのひとこと(綱崎健太)
2.対政府「交渉」で広島高裁決定について見解を問う
―広島高裁・伊方原発差止決定を受けて(小倉 正)
4.【短信】伊方原発差止山口裁判 仮処分・本訴情報(網野沙羅)
5.【短信】伊方原発3号機運転差止仮処分松山裁判
2月13日に高松高裁第2回審尋
―薦田弁護士からのメッセージ― (哲野イサク)
6.【短信】伊方原発差止大分裁判 仮処分・本訴情報(網野沙羅)
7.<シリーズ> トリチウムの危険-2(哲野イサク)
8.メルマガ編集後記(哲野イサク)
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□ 編集委員会からのひとこと
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ICRP(国際放射線防護委員会)の2007年勧告(Pub.103)はエポックメイキングな勧告でした。
1985年のパリ声明で「公衆の被曝線量上限は年間1mSv」として以来、
曲がりなりにも守り続けてきた「公衆の被曝線量上限1mSv」の枠組みをかなぐり捨て
公衆の被曝線量限度を事実上一挙に100mSvに引き上げたからです。
勧告(2007年勧告及び2009年勧告=Pub.109)では、
3つの被曝状況が新たに設定されました。
被曝線量限度が年間1mSvの計画被曝状況、
参考レベルが年間1~20mSvの間である現存被曝状況、
さらに参考レベルが年間20~100mSvの間である緊急時被曝状況です。
こうして公衆の被曝線量限度は、「緊急時被曝状況」を設定することによって
一挙に年間最大100mSvまで引き上げられたのです。
福島第一原発事故後、日本では実質的には2007年勧告及び
2009年勧告に基づいて原子力災害対策指針の中で、
過酷事故発生時に100mSvを越えるシミュレーション結果の区域を設定して、
そこには避難計画策定を義務づけています。
また、被災地では空間線量のみで汚染状況を判断しながら、
年間1mSvの本来の法規制値を越えるところにも避難者を帰そうとしています。
しかし、現在のところこれら勧告に基づく被曝線量限度の体系は、日本国内で法制化されていません。
法律で定められる一般公衆の被曝線量限度は現在でも年間1mSvです。
福島原発事故時の避難基準20mSvも原子力災害対策指針の定める避難基準100mSvも、
福島第一原発事故が起きたあの日に発令された原子力緊急事態宣言、
それだけが法的根拠になっているのです。
それで帰還政策として避難者を汚染された被災地へ帰そうとするなど、
どさくさまぎれの甚だしい被曝強制・受忍政策です。
しかし日本の国内法制下では現在でも公衆の被曝線量限度はあくまで「年間1mSv」です。
福島原発事故以降、公衆の被曝線量限度に関しては、二重基準状態が続いているのです。
二重基準状態解消のためには2007年勧告以降の
一連の諸勧告を国内法制化する以外にはありません。
現在の国内法制は1990年勧告がベースになっていますが、
1990年勧告の法制化には約13年かかっています。
そこで現在は原子力規制委員会の組織となっている放射線審議会を
ただの諮問機関ではなく積極的に提言できるようにして、
法制化のスピードアップを図っています。
先月19日には、福島第一原発事故直前に出された「第二次中間報告」から
遅々として進まない法制化について、全体の尻をひっぱたいたような会合が行われています。
彼らにとって、年間1mSvを越える一般公衆への被曝線量の受忍が
法的根拠を持たないことはアキレス腱なのです。
私たち反・脱原発市民は高裁で原発再稼働を阻止するところまで社会を動かしてきました。
司法で原発を止めるのはせいぜい地裁の変わり者裁判官だけという話は今や昔の話です。
一方で、被曝線量限度の法制化に対する私たち市民の運動は、
再稼働阻止に比べればまだまだ大きな広がりを見せてはいません。
それはこの問題のもつ死活的重要性が一般に知られていないからです。
ICRP勧告の国内法制化阻止運動が今どうしても必要であるゆえんです。
その意味で放射線審議会の動きは、私たちが今後、
今まで以上に注目していかなければならないと思います。
(綱崎健太)
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□ 対政府「交渉」で広島高裁決定について見解を問う
■ ―広島高裁・伊方原発差止決定を受けて
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「原発の火山審査を問う 政府交渉&院内集会
使用済み核燃料の中間貯蔵/避難計画の被ばく線量他」集会報告
2018年1月24日午後、参議院において
「原発の火山審査を問う 政府交渉&院内集会
使用済み核燃料の中間貯蔵/避難計画の被ばく線量他」と題する集会が開かれた。
この集会は福島瑞穂議員(社民党)に対して政府委員が説明を行う、という形で開かれたものだが、
実質上は政府委員と反原発市民運動グループの直接対決の場となった。
原発問題を巡って政府と市民グループが直接やりとりをする貴重な機会である。
◆「NO MOX」メーリングリストに集う各市民団体の人たち
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今回の対政府「交渉」を主催したのは「NO MOXメーリングリスト」に参加している
全国の市民運動団体の人たち。
311以前に各地の原発で進められていたプルサーマルの導入問題に関わってできた
全国規模のメーリングリストである。
関西からは「美浜の会」(美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会)の
小山さん、島田さん。「グリーン・アクション」のアイリーン・スミスさん。
「避難計画を案ずる関西連絡会」の管野さん(福島からの避難者)、
首都圏からは国際環境NGO「FoEJapan」の満田さん、
「グリーンピース・ジャパン」の鈴木さん、
「ふくろうの会/原子力規制を監視する市民の会」の阪上さん、
九州からは「玄海プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」の永野さん、
「川内原発30キロ圏住民ネットワーク」の高木さんなど。
それに四国からは「原発さよなら四国ネットワーク」の私(小倉正)。
事前に提出する質問書を各自が分担して作成し、メーリングリスト上で共有した上で「交渉」に臨んだ。
今回テーマは3つある。
「火山問題(火砕流/火山灰)」、「中間貯蔵施設の問題」、「避難計画の問題」。
いずれも個別の原発で問題になっている争点を電力会社や自治体にぶつける前に
国の官僚側の言質を取るために質問項目を作っていた。
(私自身はこの質問項目への追加、修正などでの提案をしていない)
「交渉」と銘打ってはいるものの、それは市民運動団体側からの呼び名であって、
政府委員の側から見ると、政府から国会議員向けのレクチャーに
議員の側が呼んだ市民団体の人が同席して口を挟んでくるのに応対をしているという位置付けである。
それでも実際に政府の官僚たちの言質を取る作業であることには変わりない。
他に複数の団体が全国的に呼び掛けて対政府交渉に取り組んでいるグループとしては、
他に「若狭連帯行動ネットワーク&脱ヒバク反対キャンペーン &地球救出アクション97」関係団体と、
「再稼動阻止全国ネットワーク」関係団体の2つがあるくらいだろうか。
レクチャーを担当する政府説明委員の側は、原子力規制庁が9名、内閣府の原子力防災担当が3名。
大半は規制庁のメンバーということになる。
経産省・資源エネルギー庁にも参加を要請したが、
「今月は福島瑞穂議員にはもう何度も呼ばれているため、今回は不参加」と
事前に資源エネルギー庁の担当者から連絡があった。
(エネルギー基本計画の見直しが議題に上がっているが
そこでも原発推進の政策を維持するために
原発の新増設を進めようとしていることが争点となっている。)
原発政策などの政府との対決色の濃いテーマとなると、
市民団体との仲介役を買って出てくれる国会議員さんは限られてくるので、
お一人の議員さんにおのずと集中して来るらしい。
福島議員本人も代表質問の1日目でもあり少しの時間参加するだけで退席された。
司会や担当者をテーマ別に呼び込むなど集会の運営は、市民運動団体側が担当していた。
また、今回は愛媛新聞の東京支局の記者が取材に来ていて、
規制庁としては火砕流の審査に関わる火山影響評価ガイドについてなどの見直しをするつもりはないことを
『伊方3号機「火山審査見直し不要」規制庁 市民団体の要請応じず』のタイトルで翌25日に記事にしていた。
▽愛媛新聞2018年1月25日
http://saiban.hiroshima-net.org/mm/img/ehime_20180125_3.pdf
私(小倉)は愛媛の市民団体として参加したが、
記事の中では広島高裁の抗告人の一人ということが強調されていた。
また同じ日の愛媛新聞社説ではちょうど前日23日に発生した草津白根山の噴火について、
「想定外の想定」こそ防災の要諦とし、広島高裁決定の火砕流の部分にも触れて
「火山列島日本で、原発との共存はやはり困難。
計画を根本から見直すべき時機であろう。」と主張していたのに加え、
さらに青森/秋田両県が十和田火山(十和田湖カルデラ)の火砕流災害想定をまとめた記事も
火砕流問題として並べて大々的に紹介しており、
この問題に関するマスコミの注目度は高く、はるばる東京まで出かけた甲斐があった。
▽愛媛新聞2018年1月25日社説
http://saiban.hiroshima-net.org/mm/img/ehime_20180125_1.pdf
▽愛媛新聞2018年1月25日十和田火山関連記事
http://saiban.hiroshima-net.org/mm/img/ehime_20180125_2.pdf
それではテーマ別に交渉の模様をお伝えしよう。
◆テーマ1:火山問題(火砕流/火山灰)
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最初に再稼働間近とされる佐賀の玄海原発の会永野さんから、
地元31団体連名の要請書の読み上げと手渡しがあった。
規制庁の現地事務所に申し入れを出そうとしたがそこでは受取りを拒否されたとのことだが、
住民の声を聞くのも現地事務所の役割のはずで、伊方事務所では以前受取りをしていたが、
今回は多くの団体が押しかけての申し入れという構図を嫌がったものかもしれない。
この要請書の要請事項の1番目が
「伊方原発3号機運転差し止め決定を重く受け止め、
阿蘇山巨大噴火により同様に立地不適となる可能性がある
玄海原発の再稼働の審査をやり直すこと。」であったが、
規制庁担当者はその後のやり取りの中でも、審査をやり直すつもりはないことを明言した。
質問書を作った阪上さんたちが、事実関係についてのこれまでの裁判所の判断は、
規制庁側の一勝(川内原発の鹿児島地裁仮処分)四敗(同・福岡高裁宮崎支部、
伊方原発の広島地裁、松山地裁、広島高裁仮処分)であって、
規制委員会は司法の側の一致した判断をどう考えるのか、と追及した。
(Youtube ビデオ
「20181224 UPLAN【政府交渉】原発の火山審査を問う~広島高裁・伊方原発差止決定を受けて」
https://www.youtube.com/watch?v=mOFa28rPSXo
火砕流問題はこの中の5分30秒~37分で取り上げている。)
規制庁担当者はまず逃げ口上として、そもそも民事裁判での判断であること、
仮処分であって確定した判決ではないことから、
審査のあり方を見直す必要はないと考えている、などと答えた。
伊方原発同様に阿蘇カルデラから130キロしか離れていない玄海原発の30キロ圏内に
「阿蘇4」での火砕流の痕跡が複数あり、そのうちの一つは10メートルの厚さの
火砕流の跡だとする資料を玄海原発の審査の過程で九州電力は出しており、
「もっと先まで流れていったに違いない、新たな知見の収集に努めてほしい」と
原子力規制委員会の石渡委員から指摘されていたにも関わらず、
結果的に問題なしと合格にされている経緯も指摘してその後の調査結果はないのかと追及をした。
担当者は10メートルの堆積は特異なものではないか、
また阿蘇カルデラで近い将来破局的噴火は発生する可能性は充分小さいとすでに判断している、
と以前の説明を繰り返して全面的に否定した。
「阿蘇5」は起こらないという火山学会のコンセンサスはないが、
破局的噴火がいつ起こるかをモニタリングで予測することは困難だということは
専門家が参加した規制庁の「火山活動のモニタリングに関する検討チーム」自身が認めている。
(九州電力は自主的に玄海原発周辺のカルデラ火山のモニタリングを実際に行っており、
この点で四国電力と異なっている。)
今後も司法での負けの決定が出続けても、行政側は審査の正統性を主張しつづけるだろう。
この事態は、各地の被爆者認定の訴訟でも20戦以上も連敗続きなのに
厚生労働省が認定基準見直しをしないのと同様である。
では司法の決定の意味とは何か、原子力規制委員会の審査には正統性はないのだ、
と一般大衆が認識することであり、そのことを広めるのがこういう「交渉」の取り組みの意義であるのだろう。
(火山問題に絞って行政機関としての原子力規制委員会を相手取って始めた「川内原発行政訴訟」が、
福岡地裁で終盤に差し掛かっており、2月28日<水>口頭弁論と集会の案内があった。
こちらも要注目だ。末尾に紹介する。)
「火山問題」のもう一つの争点、「火山灰問題」では
「阿蘇での火山灰発生源となるマグマ溜まりは15~30立方キロメートルの規模であると
広島高裁では判断しているが、それが全部噴出するかどうかがわからないので、
様々な地下構造の解析を行い慎重な検討をした」といいつつ、
実際には阿蘇4以降の通常火山としての最大規模の噴火レベルだけを想定して
噴出量は小さいとしているという。
さらに関電の若狭湾の原発すべてに関わり規制庁自身が委託した研究である山元論文の結果を疑問視して、
当事者である関電に露頭を調べさせている旨の発言も出てきた。
市民側で参加していた元東芝原子炉技術者の後藤政志氏は
「これは危険であるかどうかわからないからはっきりするまでは稼働する、
馬鹿言っちゃいけない(という)くらい、ひどいですよ。
そういうことをやるから福島の事故になったの。」
と公然と批判した。
疑わしきは罰せずの原則を電力会社のために用い、
危険性が証明されるまでは安全とみなすあべこべの審査を行っているという事だ。
とはいえ時間に追い立てられて次のテーマに移る。
◆テーマ2:中間貯蔵施設の計画を関電が今年公表すると約束している問題
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青森県むつ市に東電/日本原電の使用済み燃料の中間貯蔵施設を建設中(規制委員会で審査中)であるが、
計画に参加していない関西電力の社長が使用済み燃料の福井県外搬出先としてこの施設に言及したことと、
そもそも福井県知事が大飯原発再稼働の前提条件に使用済み燃料の県外搬出を求めていることもあり、
今回の機に対関電交渉のために情報収集を行ったようだ。
貯蔵期間が決まっておらず、将来の計画変更などもありうる、という曖昧な状況であるため、
50年経てば隣の敷地に第2中間貯蔵施設を建設するのが搬出先になるのではないか、と疑わせる回答だった。
関電の考える本命地は和歌山県日置川あたりの取得地ではないか、という推測もあるが詳細は略したい。
さて、四国電力では今、使用済み燃料の置き場としては、伊方原発の敷地内乾式貯蔵を計画中であり、
中村愛媛県知事も長期貯蔵にならない保証を国に求める程度の緩い容認態勢である。
しかし今回の広島高裁決定ではそもそも阿蘇カルデラからの火砕流が到達する可能性があるため
立地不適と判断したからには、伊方の敷地内に使用済み燃料を暫定的といえども保管するべきではないだろう。
関電エリアでの議論とは全く異なる方向性になるが、核燃料サイクルが回らない現状で
核燃料再処理計画も破綻しつつあるからには、どこにも使用済み燃料の搬出先がないまま
伊方原発の敷地自体が最終処分場と化す事態を招かないために、
まずは廃炉が決まった伊方1号(及び3月末頃に伊方2号炉の廃炉発表があればそちらも加えて)
の使用済み燃料の中間貯蔵施設を「佐田岬半島の外に」作るよう求める運動を、
愛媛の地元としては起こす必要があるだろう。
核のゴミ問題では、残念ながら他の地域との紛争覚悟の仁義なき戦いを
それぞれの立場でやり合う事しかできないと思われる。
◆テーマ3:避難計画の問題
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一つは、高浜原発に続いて大飯原発が再稼働する場合の、
2つの近接する原発が同時発災するという想定の避難計画を作ると約束している問題。
まだまだ計画策定が進んでいないと答弁があった。
もう一つは、関西電力の自治体向け説明会の中で、福島事故の最大汚染量が
毎時91マイクロシーベルトと低いという誤った主張を同席した内閣府が黙認している問題も追及していたが、
違っていると訂正の指摘をすることは無い、と炎上を呼ぶ回答をしていた。
(このあたりも上記youtube動画でご確認ください。)
◆伊方原発に続いて 川内原発を止めよう!
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火山問題に絞った裁判が福岡地裁で終盤にさしかかっている。
2月28日には川内原発運転差止を求める裁判の第7回口頭弁論期日が開かれる。
「2月28日(水)傍聴席を満杯に」
「裁判長へ応援ハガキを出しましょう!」(チラシより抜粋)
・午後1時から15分間 裁判所の門前でミニ集会をします。
傍聴者抽選に備えてなるべく1時までに
・午後1時30分~第7回口頭弁論
福岡地裁301号室(福岡市中央区城内1-1)地下鉄赤坂駅から徒歩5分
・午後2時30分~報告集会
福岡中部教会(裁判所からすぐ)
参加費無料
連絡先:原告代表:青柳行信(福岡)
〒812-0041 福岡市博多区吉塚5-7-23
電話080-6420-6211
Eメール:y-aoyagi<atmark>r8.dion.ne.jp
世話人:鳥原良子(鹿児島川内)、永野隆文(水俣)、
永尾佳代(熊本)、島田雅美(大分)
できれば多くの方の参加を呼びかけたい。
(小倉正)
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□ 【短信】伊方原発差止山口裁判 仮処分・本訴情報
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■2018年2月8日(木)
山口地裁岩国支部 伊方原発3号機仮処分
第6回審尋期日・証人尋問 中止のお知らせ
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小松正幸氏の証人尋問が行われる予定だった、2月8日の仮処分第6回審尋日は、
裁判長が体調不良のため延期になったと、山口裁判の会から正式にお知らせがありました。
以下お知らせの抜粋です。
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「2月8日(木)の「証人尋問・第6回審尋期日」は、裁判長の体調不良により、
『延期』されることが、急遽、決まりましたので、お知らせします。
証人尋問の傍聴を希望し、当日、岩国の裁判所まで来られる予定を立てておられた方には、
申し訳ありませんが、2月8日には証人尋問は行われませんので、予定の変更をお願いします。
今後、新たな証人尋問期日が、裁判所及び四国電力側との調整を経て、
改めて指定されますので、決まり次第お知らせします。
取り急ぎご連絡します。なお、不明な点などがあれば、遠慮なくお問い合わせ下さい。
連絡先:伊方原発をとめる山口裁判の会 事務局(周南法律事務所)
(周南市弥生町3丁目2番地 TEL: 0834-31-4132 )
Webサイト:http://ikata-yamaguchisaiban.jp/
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山口裁判の会より延期された「証人尋問・第6回審尋期日」が決まりましたら
このメルマガでもお知らせします。
是非多くの方が傍聴に来て頂ければと思います。
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□ 【短信】伊方原発3号機運転差止仮処分松山裁判
■ 2月13日に高松高裁第2回審尋
□ ―薦田弁護士からのメッセージ―
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愛媛県松山の「伊方原発をとめる会」が、2016年5月31日に
松山地裁に申し立てている「伊方3号運転差止仮処分事件」は
17年7月21日に却下決定。
同会はこれを不服として高松高裁に即時抗告。
17年11月16日の第1回審尋期日を経て、この2月13日(火)に第2回審尋期日を迎えます。
第1回審尋期日は、広島高裁決定がでる直前の審尋とあって
広島高裁決定を注視する形で進行しており、
住民側はすでに広島高裁決定を証拠として高松高裁に提出するなど、
今回第2回審尋行方が注目されています。
同会は案内チラシで「高松高裁での伊方仮処分抗告審 第2回審尋にご参加ください!」と
多くの人の参加を呼びかけています。
▽「伊方原発を止める会」webサイト
http://www.ikata-tomeru.jp/
同日の日程は以下の通り。
伊方3号運転差止高松高裁第2回審尋期日
【期日】2018年2月13日(火)
【場所】高松高等裁判所
同記者会見・報告会
【場所】高松センタービル5階 501会議室(100名規模)
https://goo.gl/maps/Sn1nQVrJTq12
14:30から 裁判所北から裁判所門前まで歩み、抗告人・弁護団を送り出し
15:00から 第2回審尋(一般非公開)
16:00ごろ 記者会見・報告会
14:30までには高松裁判所の北側交差点にお集まりください。
なお第2回審尋期日に向けて同会弁護団長の薦田伸夫弁護士から
当メルマガにメッセージをいただいておりますのでご紹介します。
(以下薦田弁護士メッセージ)
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2月13日、高松高裁での2回目の審尋が予定されています。
住民側からは、四国電力の答弁書・放射性廃棄物・火山についての準備書面に対する反論と、
ミサイルについての補充書面を提出する予定です。
火山についての反論は、広島高裁決定を踏まえた内容となります。
また、原審でプレゼンをお願いした岡村眞高知大学名誉教授、
長沢啓行大阪府立大学名誉教授のお2人を証人として申請する予定です。
5月16日の第3回審尋までに当方から基準地震動についての書面も提出予定ですが、
広島高裁決定の9月30日の期限を意識し、出来ることは前倒しして、
高松高裁で早期に勝訴決定を勝ち取るべく奮闘したいと思っています。
薦田伸夫(「伊方原発をとめる弁護団 団長)
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□ 【短信】伊方原発差止大分裁判 仮処分・本訴期日の御案内
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■2018年3月1日(木) 本訴第8回口頭弁論・仮処分第11回審尋
13:30 裁判所集合
14:00~ 第8回口頭弁論
14:30~16:30 第11回仮処分審尋(仮処分審尋は非公開)
広島高裁決定を踏まえて、火山の危険性について、
申立人側、四国電力側双方のプレゼンテーションが行われます。
仮処分審尋中、弁護士会館にて待機。
弁護士の話と原発関連のビデオ映像上映があります。
審尋終了後、弁護士会館にて報告集会
詳しくはwebサイトをご覧下さい
▽伊方原発をとめる大分裁判の会
http://ikata-sashitome.e-bungo.jp/
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□ <シリーズ> トリチウムの危険-2
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前回はトリチウムが水素の同位体であり、その物理・化学的性質は水素そのものであること、
また水素はすべての生物にとって必須の元素であること、このことがトリチウムを
他の放射性物質と際だって区別する特殊な大きな特徴としていること、などをみてきました。
今回はこのトリチウムの性質が具体的にはどのような挙動をし、
どのようにヒトに影響を与えるのかなどをみていきます。
◆東京電力の説明
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福島第一原発敷地内に大量にトリチウム汚染水を溜め込んでいる東京電力は、
トリチウム水に関して「福島第一原子力発電所でのトリチウムについて」というスライドでまとめています。
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http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2013/images/handouts_130228_08-j.pdf
前回のおさらいを兼ねてこのスライドを批判的にみてみましょう。
スライドの2枚目「2.トリチウムの性質」では、トリチウムの一般特性について
▼
http://saiban.hiroshima-net.org/mm/img/handouts_130228_08-jpdf_2.jpg
「化学上の性質は、主に水として存在し、私たちの飲む水道水にも含まれています」
この記述には誤りがあるわけではありませんが、前回触れたトリチウムの形態のうち、
HTO(トリチウム水)の話でOBT(有機結合型トリチウム)の話には全く触れていません。
「食品用ラップでも防げる極めて弱いエネルギー(0.018MeV)のベータ線しか出さない」
これもウソではありません。
前回触れたように放射性物質としてのトリチウムは核崩壊の際、ベータ線を出しますが、
それは約18000eV(0.018MeV。
Mはメガで100万の単位)の崩壊エネルギーで他のベータ崩壊核種に比べればはるかに小さいことは事実です。
しかし、トリチウムの危険はその崩壊エネルギーの大きさにあるのではなく、
水素の性質に由来するさまざまな影響にあるのですが、そのことには全く触れず、
崩壊エネルギーの大きさという1点にだけ着目しており、他の放射性物質と全く同じ扱いです。
「食品ラップでも防げる」というのも決してウソではありません。
これはトリチウムはベータ線を出しますが、ベータ線は原子や分子に衝突した時に
放出するエネルギーが大きい(線エネルギー付与=LETが大きい)ため、
早く減衰し透過力が小さくなるので「食品ラップで防げる」わけです。
しかしこれはトリチウムによる外部被曝の場合の話。
内部被曝には全くあてはまりません。
トリチウムで外部被曝被害が生ずると考えるものはいませんから、
この東電の説明は外部被曝にあてはまる事例だけを取り出して
「トリチウムは人体に影響がない」と主張していることになります。
逆に内部被曝の場合に置き換えてみると前述のように、
ラップ1枚で防げる=透過力が小さい=LETが大きい、わけですから
細胞を構成する原子や分子に衝突した時の電離エネルギーの放出量は
ガンマ線や中性子線に比べて大きく、それだけ破壊力も大きいということになります。
「水として存在するので人体にも魚介類にもほとんど留まらず排出される」
これも前回みたようにHTO(トリチウム水)の性質で、OBTの性質ではありません。
「トリチウム水」は水そのものですから、環境の水分濃度と体内の水分濃度は常に等しくなります。
(平衡化現象)
ですから東電のスライドがいう「人体にも魚介類にもほとんど留まらず排出される」のは
環境の濃度が体内の濃度より小さい時にはあてはまる現象です。
逆に環境の濃度が体内の濃度より大きいときにはあてはまりません。
口や呼吸でトリチウムを摂取しなくても、環境のトリチウム濃度と等しくなるまで
体内のトリチウム濃度はあがります。東電の説明は適切とはいえません。
(『トリチウムの環境濃度と体内濃度』イラスト参照のこと)
▼
http://saiban.hiroshima-net.org/mm/img/HTOheikouka.jpg
このことは、環境のトリチウム濃度をいかに上げないかが大切、という重要な点に気がつかされます。
前回も触れた東電福島原発敷地内に溜め込まれた1000兆ベクレルのトリチウム汚染水を
薄めて流せば問題ない、とする議論がいかにばかげているかも示唆します。
環境濃度を上げる要因は放出するトリチウムの絶対量であって、単位あたりの濃度ではありません。
いかに薄めようが近傍の環境トリチウム濃度は確実に1000兆ベクレル分上がります。
◆実効線量換算係数の極端な過小評価
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「セシウム134、137に比べ単位Bqあたりの被ばく線量(mSv)は約1000分の1」
これは前回みた「実効線量換算係数」のことです。
ICRPは放射能濃度の単位ベクレルを、放射線核種ごとに実効線量に換算する換算係数を細かく決めています。
もともと実効線量(シーベルト)は、放射線から全身が受ける影響度を数値化したものですから、
一応の目安にはなるものの決して科学的概念ではありません。
一方でベクレル(放射能濃度)は、一定の量の中の放射能濃度を数値化した物理量ですから科学的概念です。
つまり「実効線量換算係数」そのものが、ベクレル単位の放射能濃度を
シーベルト単位の実効線量という非科学的概念に換算する「係数」ですから、なにやら怪しげな概念です。
一応の目安として参考にするのならともかく、「数値化のトリック」に誤魔化されて
絶対的に正しいものとして扱われている点は大問題です。
それはここではともかくとして、ICRPが定めたトリチウムの実効線量換算係数は
「1Bq=1.8×10のマイナス9乗」だというのです。(経口摂取の場合)
これに対してセシウム134は「1Bq=1.9×10のマイナス6乗」、
セシウム137は「1Bq=1.3×10マイナス6乗」(単位はいずれもmSv)だから、
トリチウムの「被ばく線量」はセシウムの1000分の1だ、と主張します。
あたかもセシウムに比べれば無害だといわんばかりです。
さらに東電スライドは、トリチウムをカリウム40と比較して、
30分の1も「被ばく線量」は小さいと主張しています。
もともとカリウム40は地球生成の過程で唯一地表面に残った原始放射線核種で、
カリウム40による被曝被害はこれまで報告されていません。
そのためICRPもカリウム40を「放射線防護対象核種」としていません。
分かりやすくいえばカリウム40は人体に無害なのです。
(人体に無害なカリウム40にわざわざ実効線量換算係数を設定しているICRPも
論理一貫性がありませんが、恐らくは別な目的があるのでしょう。
たとえば人体に無害なカリウム40の30分の1の実効線量なのだから、
トリチウムは全く無害、といった主張に使えそうです。)
このスライドをそのまま受け止めれば、
トリチウムは人体にほとんど無害ということになってしまいします。
(またこのスライドで東電が実効線量のことを“被ばく線量”と表現するのもおかしなものです。
実効線量は前述の通り全身が受ける影響度を数値化したものです。
“被ばく線量”というと何か客観的・科学的概念のように誤解させる効果があります)
ここで使われているトリチウムの実効線量換算係数
(1Bq=1.8×10のマイナス9乗mSv=経口摂取の場合)そのものが
トリチウムの影響を過小評価するために作られた数字だという批判が絶えないのは
前回でみたとおりです。
この東電のスライドに対する批判をまとめれば次のようになるでしょう。
1.元々トリチウムの影響を極端に過小評価するICRPの学説に全面的に依拠している。
2.トリチウムが水素であり、そのことによって生ずる極めて特殊な放射性物質
であることに全く触れず、他の放射性物質と同列視している。
3.トリチウムの3つの形態(HT、HTO、OBT)のうち、もっとも危険な形態である
OBTには全く触れず、比較的無害な形態であるHTOにのみ話題を集中させている。
4.外部被曝にあてはまる物理現象にのみ触れ、内部被曝でのみ生ずる
物理現象・化学現象には全く触れない。
◆全く現実離れしたICRPのトリチウム・モデル
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こうなってみると東電のネタ元であるICRPはなんといっているのか見ておく必要がありそうです。
ICRPのトリチウム・モデルでは、体内に摂取されたHTOは、100%血液に入ると推定します。
そして10日の半減期で対外に排出されるとします。
そして体内に残ったHTOは3%がOBTになるとし、これらOBTは安全上無視できるかもしれない、としています。
(ICRP1989年勧告:Pub.54)
しかしこれらトリチウム・モデルがいかなる研究に裏付けられているのかははっきりしません。
体内に取り込まれたHTOが100%血液に入り込むという推定に至っては、
トリチウムの特徴である「平衡化現象」を考えてみるとおよそ考えにくい推定です。
実際にはこうしたICRPのトリチウム・モデルとは異なった研究成果が出ているようです。
たとえばマウスを使った動物実験では、短い期間マウスにHTOを被曝させた後、
8週間を経過した時点で、体内に残っていたトリチウムはすべてDNAやヒストン
(染色体を構成する主要なタンパク質)に結合していました。
(Commerfold et al 1982)
また体内に取り込まれたHTOはICRPモデルが主張するように3%がOBT化するのではなく、
3%を最低限として最大9%がOBT化するという研究結果が出ています。
(Trivedi et al 1997)
最大の問題の一つはICRPモデルでは「慢性トリチウム被曝状態」を全く想定していない点でしょう。
「慢性トリチウム被曝状態」は、1日24時間トリチウムを放出し続ける核施設の風下に暮らす
すべての生物(もちろんヒトを含みます)にとって極めて重要です。
ICRPの定義によれば「慢性トリチウム被曝状態」とは、
一瞬一瞬のトリチウム被曝の繰り返し状態に過ぎないのだそうです。
(なにやら古代ギリシャのソフィストたちの詭弁を思い出します。
「アキレスと亀」や「ヘラクレスの矢」)
この説に従えば、1回のトリチウム被曝は主としてHTOからでOBTからは被曝しません。
そして次のトリチウム被曝までにはHTOもOBTもほとんど体外に排出されていると考えます。
しかし、こんなことはありえません。
それはさまざまな先行研究が証明しています。
◆実際には半減期1年のOBT
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またICRPは体内のOBTは40日間で半減すると推定しています。
それはHTOが炭素と結合してOBTになると想定し、炭素の生物学的半減期が
およそ40日だという点に根拠を求めています。
(ICRP1975年勧告 Pub.23)
しかし研究結果はICRPの杜撰な推定を完全に裏切っています。
「表:HTO摂取後、トリチウムの生物学的半減期」はイアン・フェアリーが
さまざまな研究を検証してトリチウム・ハザード・レポートの52頁にまとめたものです。
▼「表:HTO摂取後、トリチウムの生物学的半減期」
http://saiban.hiroshima-net.org/mm/img/HTO_hold.jpg
▼トリチウム・ハザード・レポート
http://www.greenpeace.org/canada/Global/canada/report/2007/6/tritium-hazard-report-pollu.pdf
確かにHTOの生物学的半減期は短いもので約6日、長いものでは12日ですが、
おおむね生物学的半減期は約10日といういい方は妥当だと思います。
ところがOBTになると様相はがらりと変わります。
表ではリン、硫黄、窒素などといった有機物と結合したOBTを「OBT1」、
炭素と結合したOBTを「OBT2」と分類しています。
OBT1では、半減期は短いものでは21日、長いものでは76日になっています。
HTOであてはまった半減期はOBTでは全くあてはまりません。
炭素と結合したOBT2になると、体内保持期間は劇的に長くなります。
短いケースでも約140日、長いケースでは550日です。
炭素と結合したOBTは、いったん体内に入ると半減するのに1年かかると考えてもいいでしょう。
こうなると「トリチウム無害論」の根拠は根底から崩れていきます。
◆細胞の重要小器官を構成するトリチウム
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前述のように体内に残留したHTOや有機物と結合したOBTなど
トリチウムは細胞を構成するDNAや染色体の結合に使われていきます。
動物実験でマウスにトリチウム化したミルクを継続的に与えました。
(慢性内部被曝)
そしてトリチウムの被曝が細胞のどこからもたらされているかを計測しました。
肝臓の細胞のDNAに取り込まれたトリチウムからの被曝は、
初期の頃は総トリチウム被曝線量の1%から3%程度でしたが、
14週間後には10%に上昇し、41週間後には52%と劇的に上昇しました
(Saito & Komatsu 1986年)
体内に残留したHTOやOBTが時間の経過と共に細胞の重要小器官に使われることが
この研究でも裏付けられた格好です。
図は「ヒトの細胞の精密な模式図」です。
▼
http://saiban.hiroshima-net.org/mm/img/shoukikan.jpg
人の細胞は平均10ミクロン(100分の1mm)です。
この細胞の重要小器官、とくに細胞核の中のDNAや染色体、細胞にエネルギーを供給する
ミトコンドリアなどにトリチウムが使われているわけです。
たしかにICRPのいうように、トリチウムの崩壊時放出する電離エネルギーは
最大でも約18.6keV(キロエレクトロンボルト)と他の放射性物質に比べれば小さいのですが、
それは臓器や器官1kgあたりが平均・均一に被曝した場合の話。
トリチウムが細胞の重要小器官に使われ、そこから極局所的にベータ線が放出され
DNAや染色体を直接破壊していくとなるとは話は全然違います。
トリチウムの危険は内部被曝中の内部被曝ともいうべき、恐ろしい結果をもたらします。
(ベータ線はラップ1枚で防げるほど透過力が小さい、ということは
分子や原子と衝突した時に放出するエネルギー=LET、が大きいということでもあります)
さらにトリチウムの危険はこれに留まりません。
前述のようにトリチウムとは水素です。
水素はヒトの体の中でさまざまな分子結合を担います。
ヒトの体で使われる原子の60%までが水素です。
(Cooke & Kuntz 1974)
これらがたとえば慢性トリチウム被曝環境の中で暮らすことによって、
体内でのトリチウム濃度が上がり、さまざまな器官や臓器の細胞で
トリチウムが使われて行くと何が起こるか?
トリチウムは半減期12.3年で核崩壊しヘリウムの同位体ヘリウム3に転換します。
水素と違ってヘリウムには分子結合を担う力はありませんから、
当然その分子結合は壊れ、分子結合に依存して構成されている細胞は破壊されていきます。
これがトリチウムにおける「元素転換」による危険です。
ICRPのリスクモデルでは、こうした生物動力学(バイオキネティクス)の観点や
化学的性質に由来するリスクは全く度外視し、
外部被曝リスクにはあてはまる「崩壊電離エネルギーの大きさ」という物理量だけで、
そのリスク評価をおこなうという誤りを犯しているのです。
ICRPや東電が説明するように、
「トリチウムは大量に摂取しなければ人体に無害」な放射性物質ではありません。
トリチウムの危険は、トリチウムが水素であるという特徴そのものにあるのです。
◆イアン・フェアリーの指摘
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トリチウムが危険な放射性物質であるという認識は決して新しいものではありません。
ここではイアン・フェアリーの「トリチウム・ハザード・レポート」の一節を最後に引用しておきましょう。
「妊娠中の女性の体内では、受精卵や胚芽(受精して8週間目まで―引用者注)、
胎児の段階において活発な細胞増殖が行われている。
この時期のトリチウムの摂取や吸収は胎児の発達において致命的な結果をもたらす可能性がある。
死産、先天的な奇形、新生児死亡の可能性である。
この懸念を最初に問題提起したのはエドワード・ラドフォード教授だった。
それはカナダのトロント近辺の核施設(重水炉型原発が集中している―引用者注)から
放出される大量のトリチウムによって起こりうる健康への影響を調査した
『オンタリオ水質問題特別調査委員会』での証言の中でなされた。
(オンタリオ州政府―1978年。なおこの時ラドフォードは全米科学アカデミーの
『電離放射線の生物学的影響委員会 Ⅲ』<BEIR Ⅲ>の委員長だった。―引用者注)
同様の懸念はカマフォードら(1982年)によっても提起された。
カマフォードらは、最もリスクの高い細胞は、寿命の長い細胞、
すなわち受精後8週間以内の胎児にとって鍵となる細胞(神経細胞や卵母細胞)であろうと述べた。
ストロームは1991年及び1993年に、トリチウムの催奇性リスクは
その発がん性リスクよりも6倍大きいと推定した。」
以降、2018年の日本においては、いまだに「トリチウムはほぼ無害」とする言説が
ICRP学説を根拠に権威をもっているのですが、それは科学的見地からなされる言説というよりも、
原発や核施設を推進する側の「経済上の見地」からなされているというのが本当のところです。
(哲野イサク)
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□ メルマガ編集後記
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最近ぱらぱらと読んでいた本の中ではっとする言葉がありました。
「理解することは変わること」です。
社会学者の小熊英二は「社会を変えるのは」と題する本(講談社現代新書:2013年2月第6刷)の中で、
マルクス主義の弁証法やフッサール流の現象学の流れについて簡単に要約した後、次のように書いています。
「西欧や日本の社会運動では、現象学とマルクス主義に影響を受けた人たちがいました。
そのさいのスローガンは、『理解することは変わること』というものでした。
知識人も活動家も、自分たちだけが真理を知っている、
一方的に理性を行使して相手を把握できる、などということはあり得ない、
関係をもてば、必ず自分も相手も、作り作られるはずだという意味です。」
(同371頁)
人間と人間の関係が弁証法的な関係だとすれば、自分が変わらずにいて
一方的に相手だけを変えることなどはあり得ない、
相手が変わるプロセスは実は自分も変わっていく過程なのだ、と読むこともできます。
反原発運動に携わり、世論を反原発に変えていく過程も
恐らくは同じプロセスをたどるのだと思います。
自分が変わらずに世間だけを反原発に変えていくなどということは、およそありそうにない、
世間と私は作り作られていく関係なのだ、
その過程の質と量だけ世間は反原発に傾いていくのだ、と思います。
(哲野イサク)
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