被爆地ヒロシマが被曝を拒否する伊方原発運転差止広島裁判
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「ふるさと広島を守りたい」ヒロシマの被爆者と広島市民が、伊方原発からの放射能被曝を拒否し、広島地方裁判所に提訴しました

広島高裁異議審 第2回審尋期日2018年7月4日(水)

提出書面

第5補充書(司法審査の在り方についての補充)(A4版11頁)
第6補充書(補充書(2)への反論)(A4版127頁)
陳述書「火山噴火が伊方地域に与える影響」東京都立大学名誉教授 町田 洋(A4版6頁)

2018年7月7日提出

2018年7月7日提出「忌避申立理由書」(A4版17頁)

2018年7月13日(送達日7月17日)

2018年7月13日「忌避申立却下決定」(A4版21頁)

最高裁 特別抗告申立

2018年8月11日最高裁「特別抗告理由書」(A4版19頁)
2018年7月27日「特別抗告提起通知書」(A4版2頁)
2018年7月20日最高裁「特別抗告状」(A4版2頁)

2018年8月20日までに広島高裁に提出された書面

第7補充書(平成30年3月20日佐賀地裁仮処分却下決定の不当性及び平成30年7月6日付補充書(6)に対する反論)(A4版45頁)



記者会見 審尋概要説明

記者会見 質疑応答





広島高裁異議審第2回審尋期日報告

 2018年7月4日、広島高裁にて伊方原発3号炉仮処分事件の第2回異議審審尋が行われました。

伊方包囲網

 曇り空ながら朝方の雨もやみ、13時15分、弁護団・原告団・支援者約50名が横断幕を掲げて恒例の乗り込み行進を行いました。


乗込行進の様子

 乗込行進前の様子です。並んでいると四国電力の方々が正面玄関から入らず西門へまわっていきます。
 偶然ですが「今からでも遅くない。廃炉になさい」という横断幕の正面でした。


 弁護団とともに、申立人と、傍聴を認められた20名の原告が審尋会場に入りました。
 それを見送った後、高裁前ではスピーチリレーが行われました。


高裁前アピール行動の様子

 伊方原発の運転差止を求めて、現在、愛媛、大分、山口、広島と伊方原発周辺の4つの県で裁判が起こされています。いわば「伊方包囲網」が形作られているのです。

 最初は、「伊方原発をとめる山口裁判の会」原告団長の木村則夫さんです。
 山口では、岩国に極東最大級の空母艦載機部隊がやって来ましたが、さらに先日は防衛大臣がイージス・アショアの萩への配備打診に訪れ、山口県の住民は伊方原発を含めて生存権を脅かすさまざまな危険に囲まれています。
 一方、6月22日に山口地裁岩国支部で行われた伊方原発山口裁判(本訴)の第1回口頭弁論では、約70名が乗り込み行進を行い、盛り上がりを見せました。
 そして7月13日には、同じく山口地裁岩国支部で、仮処分の第7回審尋及び証人尋問が行われます。通常、仮処分審尋は非公開なのですが、この証人尋問は「口頭弁論」として公開の法廷で行われます。伊予灘に地震を起こす断層としての中央構造線は伊方原発から600m沖合を走っている可能性があるという指摘をされた、地質学者で愛媛大学名誉教授の小松正幸先生が証言されます。
 木村さんはこうしたことを紹介しました。

 続いて、松山の「伊方原発をとめる会」事務局の松浦秀人さんです。

「伊方原発をとめる会」松浦秀人さん
 2011年12月8日、松山地裁に、3・11後最初に伊方原発運転差止の裁判を起こしたのは松山の原告団です。原告数は、2014年10月28日の第4次提訴併合で1338名、原告団の中には原爆被爆者の方々も多くいます。
 本訴では18回の口頭弁論が行われましたが、2016年5月31日、仮処分の提訴を行うと、愛媛地裁では本訴も仮処分も同じ裁判官が担当するため、本訴のほうの進行が止まってしまいました。
 愛媛地裁は昨年7月21日運転差止申立を却下、仮処分は現在、高松高裁で抗告審の審尋が進行しています。
 第3回の審尋は、6月5日に行われました。この日の審尋は、午前11時から休憩をはさんで午後5時少し前まで行われ、高知大学名誉教授の岡村眞先生と大阪府立大学名誉教授の長沢啓行先生が参考人として陳述を行われました。四電側はまともな反対尋問を行わず、反対尋問をしておきながら参考人が主張の理由を説明しようとすると「いいえ、結構です」と遮る場面が目立ちました。この日債権者側から提出された補充書で、阪神大震災後ハウスメーカーが一般住宅について設けている耐震基準のほうが、伊方原発の基準地震動よりもはるかに厳しい(一桁上)ことも示されました。仮処分は7月18日の第4回審尋で結審します。
 松浦さんはこうしたことを紹介しました。

松浦さんのスピーチ中の様子

 高松高裁や山口地裁ばかりでなく、伊方差止大分裁判でも、また、申立却下決定を出した広島地裁仮処分ですら、原告・申立人側参考人・証人の説明やプレゼンに丁寧に耳を傾ける審尋や口頭弁論が行われています。それは、高度に専門的な内容を理解、咀嚼し、判決や決定を書こうとする裁判官の立場から見れば、極めて当然なことと思えます。(コピペ裁判官には不必要かも知れませんが)

 続いて、高松の四電本社前で毎週抗議行動を行っているグループから、吉富キティさんと、池川光洋さんです。抗議行動の時に歌っている歌「原発やめて株あげて」を披露し、6月27日の四国電力株主総会では、一般四電株主からも原発反対の声が多く上がっていると報告しました。

伊方原発から約180km地点、四国電力本社のお膝元、香川県高松市から応援に来てくれた吉富さんと池川さん
 広島の裁判に最近原告申込みをした黒川冨秋さんは、「原発は要らない」と思うだけではなく、行動しなければ、と、裁判に参加された理由を話しました。

 広島裁判原告の新家昌高さんは、「核兵器と環境破壊に反対!」と強く訴えました。


弁護団からの準備書面解説

 さて、高裁前スピーチリレーを30分ほどで終えると、そろそろ審尋も終了する頃ではないかと思われたのですが、そのような気配がありません。
 スピーチリレーを終えた人たちは弁護士会館に移動しました。

記者会見会場
 しばらくすると、審尋に参加した申立人・原告が弁護士会館に帰ってきました。
 そして、何やら驚くような展開があったことをほのめかします。

 さらにしばらくすると、弁護団の方々が弁護士会館に帰って来られました。
 壇上には、申立人の小倉正さん(松山在住)、綱崎健太さん(広島在住)、弁護団の海渡雄一弁護士(脱原発弁護団全国連絡会共同代表)、中野宏典弁護士(山梨県弁護士会)、甫守一樹弁護士(日本で最初の原発訴訟専従弁護士)、大河陽子弁護士(東京第二弁護士会)が並びます。



 14時30分ごろ記者会見・報告会が始まり、弁護団が準備書面の解説を始めました。


 はじめに、中野弁護士から、補充書5についての解説です。補充書5は、司法審査の在り方についての追加主張です。
第5補充書(司法審査の在り方についての補充)(A4版11頁)
 補充書5では、この間出た福島原発事故の損害賠償請求訴訟判決を踏まえて考えることを求め、原発には高度の安全性が求められること、また、科学に不確実な部分がある場合に、「定説」や「支配的見解」にいたっていない知見であっても、それを考慮しないのはどうなのだ、ということを主張している。また、争点整理をしっかりとしないとちゃんとした決定が書けないはずなので、争点整理をしてくださいということを述べたが、今日の審尋で裁判長はまったく争点整理をするようなそぶりは見せなかった、と審尋の印象を交えながら、中野弁護士は解説しました。

 続いて、甫守弁護士から、補充書6についての解説です。
 補充書6は、債務者(四国電力)側から出ている、火山事象に関する補充書(2)に対する全面的反論です。
第5補充書(司法審査の在り方についての補充)(A4版11頁)
 四国電力が最も依拠しているのは、3月7日に規制庁が出したいわゆる「基本的考え方」―「規制委員会としては巨大噴火は社会通念上無視し得ると考える、だから巨大噴火については基本的に規制しないんだ」と宣言した文書。「規制委員会もおっしゃっているこれが火山灰についての正しい解釈であって、広島高裁の野々上の解釈は間違っている」ということをどんと最初に主張している。
 それだけでは不安なのか、広島高裁の決定を取り消そうと躍起になって、相互に整合性があるわけではないような主張でもなんでもいいから主張しようとしている。
 今回の反論では、四国電力の言っていることが、規制基準適合性審査の時と随分変わったということを裁判所に伝えようとしている。何が規制委員会のお墨付きを得た評価で、何がその時にはまったく主張していなかった話なのかということを区別するところから始めた。「九州電力の資料の丸写し」が四国電力の適合性審査における方針だった。阿蘇で巨大噴火が起きるかどうかという審査は、適合性審査会合ではまったくされてない。1000倍過小評価になっていた、ディーゼル発電機に関わる大気中の火山灰濃度評価についても、審査ではまったくスルー。いかに規制委員会が形だけの規制機関かということを裁判所に伝えるというところから始めた。
 それから、新しい主張がいろいろあるが、学者の論文などを都合のいいところを都合よく解釈して持ってきているところがある。
 などと四電提出書面の説明を交えながら補充書6の解説をしました。

裁判官忌避を申し立てる

 続いて海渡弁護士から審尋期日の全体説明があり、中で「裁判官忌避申立」を行ったことが報告されました。

裁判官忌避申立の報告をする海渡弁護士(詳しくは動画をご覧下さい)

 それでは、裁判官忌避の申立に至った、第2回審尋の経過を見てみましょう。

 審尋は、13時30分きっかりに300号法廷にて開始。
 裁判長は三木昌之裁判官、右陪席は冨田美奈裁判官、左陪席は長(ちょう)丈博裁判官です。
 債権者側弁護士は、海渡弁護士、甫守弁護士、中野弁護士、大河弁護士、薦田伸夫弁護士(松山裁判弁護団長)、松岡輝幸弁護士(広島弁護士会)が出席。
 債務者側は、前列に田代健弁護士はじめ3名の弁護士、後列に2名の弁護士と四電社員が着席。
 傍聴席は40席で、うち20席を原告が占め、17~18席を四電側が占めました。

 はじめに、双方から新しく提出された主張書面及び証拠書類の確認がありました。

裁判長から四電側に求釈明
 続いて、三木裁判長から債務者側に求釈明が行われました。乙436号証3頁に「29年10月4日補充書の非常用ディーセル発電機フィルター対策工事を実施予定」とあるが実施されたのか、またそれは規制に適合しているか、疎明がされていない、という内容でした。
 これに対して四電側は即答できず、田代弁護士が四電社員のいる傍聴席に歩み寄って、工事がすでに実施済みで規制庁に6月26日付で申請中との回答を得て、裁判長に答えました。
 三木裁判長は「これはすぐに出していただけるでしょうか?すぐに」と、早急にフィルター対策工事が完了していること、すでに適合審査を規制委に提出していることなどを書面にして提出することを求め、いつまでに可能かと尋ねました。田代弁護士は「1週間以内に」と答えました。
 「またこの対策工事は、火山灰濃度規制が1000倍以上になったこと伴ってやるわけです。工事実施猶予期間は1年あるので、新火山灰濃度規制の施行を前提にして、1年前に先取り工事をしたということになる」と追加して回答。これに対して三木裁判長は「そういう主張書面を出してもらえるでしょうか」と四電側に要望しました。

日本トップクラスの権威ある科学者による証人尋問は「証拠調べに馴染まない」?
 この後、債権者側の海渡弁護士が第1回審尋期日に続いて重ねて証人尋問の申請を行いました。海渡弁護士は、次の5名の証人採用を希望するが、最低でも町田氏・芦田氏の2人の証人採用を求める旨を述べました。2人の証人尋問であれば半日で済む、証人申請が認められなければ重大な決意をもっております、と。

 申請した5人の証人とは以下の学者です。

 町田 洋氏:火山灰学の権威。火砕流が伊方まで到達していないことが否定できないと広島高裁野々上決定が判断する際、非常に重視したと見られる意見書(=町田意見書)の執筆者。東京都立大学名誉教授。
 須藤 靖明氏:火山物理学者。阿蘇火山の専門家。京都大学元助教授。
 榊原 正幸氏:四国電力側からの意見書執筆者。愛媛大学教授。
 長谷川 修一氏:四国電力側からの意見書執筆者。香川大学教授。
 芦田 譲氏:地球物理探査の権威。経産省の国内石油天然ガス基礎調査実施検討委員会の元委員長。京都大学元教授。

 ところが、三木裁判長はまったく無視します。
 四電側の田代弁護士が「証人尋問は証拠調べになじまない」と主張したところで海渡弁護士がすかさず「どうしてですか?」
 田代弁護士は強い口調で間髪入れず「議論するつもりはありません」
 田代弁護士はその後、「審理が長引くのは容認できない」「前回審尋期日で同じ証人についてすでに却下されている。証拠調べは書面で十分。9月末の期限までにぜひ決定をいただきたい」と発言。
 はや、ただならぬ雲行きです。

急ぐあまり、九電の資料で反論作成を債権者に促す裁判長
 ここで三木裁判長は債権者側に「(問題となっている非常用ディーセル発電機の)フィルター(の対策工事)について主張書面が出てきたら、反論書を出す意思はあるか?」と尋ねます。
 中野弁護士は当然のことながら「出したい」と答えます。
 そこで三木裁判長は「反論に時間がどのくらいかかるか?」と尋ねます。
 中野弁護士が「早くても1ヶ月はかかる」と答えると、裁判長は「佐賀の九電資料を分析して使えるので、短くなるのではないか?」と発言。
 中野弁護士は唖然として、「弁護団も違う。四電の方式は九電のとはまた違う。」と答えます。

 ここで三木裁判長が「佐賀の九電資料」と言っているのは、九州電力玄海原発3・4号機の運転差止仮処分命令申立事件で2018年3月20日に九州電力が佐賀地裁に提出した、同じく「非常用ディーゼル発電機のフィルター目詰まり対策工事」資料のことを指します。
 つまり、四電が資料を出さなくても、九電資料を見れば反論文書が書けるではないか、というわけです。

 これには恐らく弁護団は唖然としたでしょう。
 というのは、同じ「非常用ディーゼル発電機のフィルター目詰まり対策工事」といっても、仕様は九電の発電機と四国電力の発電機は異なります。
 当然対策工事も異なります。
 それを九電の対策工事資料を見れば「書けるだろ」とは。あいた口がふさがらないとはこのことです。
 と同時に、この裁判体はこの程度の基礎知識もなしに審尋に当たろうとしていることを自ら暴露しています。

 さらに、この時点で極めて重要な事実が明らかにされました。
 ここで何故「佐賀地裁の九電資料」の話が出てくるのか、という問題です。
 答えは明らかでしょう。
 三木裁判長は今年3月の佐賀地裁「仮処分申立却下決定」を下敷に、いわばコピペで決定を書こうとしているのです。
 頭隠して尻隠さず、とはまさにこのことでしょう。

 ところで火山事象に関しては、九州電力川内原発仮処分事件での福岡高裁宮崎支部決定、さらには四国電力伊方3号炉仮処分事件での広島高裁決定と立て続けに、高裁レベルで債権者側(住民側)の言い分を認め、原子力規制委員会での審査が不十分、債務者(原子力事業者)の疎明が不十分としています。
 宮崎支部決定では却下、広島高裁決定では運転差止と結論は異なりましたが、高裁レベルの知能と見識では、やはり火山事象に関しては債権者側の言い分を認めざるを得なかったのです。

 これに対して今年3月の佐賀地裁決定は大幅に後退、火山事象についてもほぼ九州電力の言い分を鵜呑みにしたいわば「コピペ決定」でした。
 その悪評嘖々の佐賀地裁決定を、広島高裁ともあろうものが「コピペ」しようというのですから。また三木裁判長はその意図を隠そうともしていません。
 恐らく弁護団はこの時、内心腹を固めたに違いありません。
 しかも同じ広島高裁の前任裁判体が、調べに調べ、議論に議論を重ねた「決定」を一顧だにせず、佐賀地裁決定をコピペしようというのです。
 この日後に開かれた記者会見・報告会で海渡弁護士が「野々上決定(広島高裁決定)に1ミリの敬意も払おうとしていない」と発言していましたが、まさに至言でしょう。

 「フィルター目詰まり対策工事」の反論書面提出に1カ月はかかる、という中野弁護士の回答を聞くと、しばらく三木裁判長は無言でしたが、いきなり「休廷」を宣言するとあっという間に退廷してしまいました。
 あまりの早業に、居並ぶ弁護団、申し立て人、傍聴席の本訴原告も、「起立」すらできなかったほどです。
 時に13時50分。間違いなく3人の裁判官は合議に入ったのでした。

火山灰濃度問題の本質

 それでは、裁判体が合議に入っている間、「フィルター目詰まり対策工事」とその背景についておさらいをしておきましょう。

 債務者(四電)側が三木裁判官から提出を求められていた非常用ディーセル発電機フィルター対策工事の問題は、甫守弁護士が補充書6についての解説の中で触れていた、阿蘇山が火山爆発指数(VEI)6(噴出物10立方kmから100立方km)以上の噴火を起こした時の、大気中の火山灰濃度過小評価に関わる問題です。

 原発の非常用ディーセル発電機は、火山灰の侵入によるフィルターの目詰まり等によって機能喪失とならないことが求められます。
 ところが昨年7月、規制委員会が設置した「降下火砕物の影響評価に関する検討チーム」による試算の結果を受けて、クリアしなければならない火山灰濃度はそれまでの1000倍に跳ね上がりました。
 それまでの過小評価に基づいて26時間で目詰まりするとされていたディーセル発電機フィルターが、追加の対策を行うだけで一挙に跳ね上がった火山灰濃度に対応できるのかどうか、実際に改訂された新・新基準に適合しているのかどうかは、技術的には関心を呼ぶ箇所かも知れません。

 しかし、昨年12月に決定の出た広島高裁仮処分抗告審で争われた本当の火山灰濃度に関する争点はそこではありませんでした。

 その仮定の前提となる火山灰の堆積厚さの想定が過小評価であるため、その1000倍に改訂した濃度でもまだ過小評価の可能性があるという認定をしたことが、運転停止を決めた主論の一つです。(メルマガ27号1月1日号の主論2「火山灰」を参照のこと)
 この争点は、「火砕流到達問題」以上に、ほぼ全国の原発の裁判にも波及する重大な争点です。
 そこで原子力規制委員会は、今年3月7日に出した「基本的考え方」の中で、想定すべき噴火の規模について、「カルデラ破局噴火つまりVEI7(噴出物100立方kmから1000立方km)ばかりでなく、さらに1ランク落ちるVEI6の規模の噴火も想定する必要がない」と驚くべき切り捨てを急遽行いました。
 つまり高裁仮処分決定時には無かった主張を新たに持ち出しているわけです。
 三木裁判長の今回の訴訟指揮は、「このような四国電力の主張(=後出しの国の規制緩和)をハナから丸呑みするつもりであるから、規制委の(まだ開始されていない)新火山灰濃度規制へ適合しているかどうかのみを証拠として出すように」と、四電側に求めたものと危惧せざるを得ません。

 考えても見てください。今年3月の規制委出した「考え方」は、「火山爆発指数がVEI6」の火山爆発は、原発の運転期間中に起こる筈がないから考慮しなくてもいい、といっているのです。
 自ら定めた「火山影響評価ガイド」を否定し、事実上の死文化を狙った文書です。
 VIE6の火山爆発といえば、100年に1回の頻度で起こる、とされています。
 現に数万年に1回どころか、1991年にはフィリッピンのルソン島のピナツボ火山が爆発していますが、その噴火物はVIE6に分類されています。
 そのピナツボ火山の火山灰のために同じルソン島にあった当時アジア最大の米軍クラーク空軍基地は放棄されています。
 それを「考慮しなくていい」という規制委の文書「考え方」は、野々上決定潰しのための文書と断定して差し支えありません。

遂に忌避申し立て、簡易却下はならず
 合議時間はかっきり5分。三木、冨田、長の3人の裁判官が法廷に再び姿を現したのは13時55分。

 口を開いた三木裁判長は重ねて債務者(四電)側に、非常用ディーセル発電機フィルター対策工事に関する書面提出期限の短縮を求めました。「もっと早く期限を切れませんか?」「1日でも早くできませんか」と四電側に聞きます。
 四電側は、7月7日(土)までに提出する旨答えました。三木裁判長は「では、それを出してもらって、8月9日までに債権者側反論書面を出してもらって終わりとする」と述べ、8月9日を最終書面提出期限とすると宣言しました。
 もしこの通りなら、7月4日の第2回審尋期日で結審ということになります。

 三木裁判長が、「それなら文句ないだろう。1カ月といったのだから」とでもいうように債権者側弁護団側に顔を向けます。

 ここで海渡弁護士が立ち上がって、「8月9日が書類提出期限ということならば、約1カ月ある。その間に証人尋問を行おうと思えばできる。5人全員とはいわない。せめて2人の証人の話を聞いて欲しい。半日もあればできるはず」となおも食い下がります。
 これに対して三木裁判長は「証人を採用する必要はない」とあくまで拒絶の姿勢。

 ここで遂にくるべき時がきたと決断した海渡弁護士は「それでは、3人の裁判官の忌避を申し立てます。」と宣告しました。
 そして3人の裁判官にはこの審尋を公平・適切に運営しようという意図が認められない、という趣旨理由を述べました。

 興味深いのは、三木裁判長がなぜ証人申請を却下するのか、いかなる局面でも一切理由を述べていないことです。
 なぜ、これほど食い下がる証人申請を却下するに際して、却下理由を述べないのか?さまざまに考えられます。
 証人尋問など行っていると時間ばかりかかってとても9月30日までに決定を出せない、あるいは、証人に「不都合な真実」を述べられると佐賀地裁決定をコピペした決定文が書けなくなる、などなど。
 「何故却下理由を述べなかったのか?」――。いずれにしても、堂々と述べられる却下理由ではなかったことは確かでしょう。

 ここで債務者(四電)の主任弁護士が立ち上がり、手元のメモを見ながら口を開きます。
 「この忌避申立は訴訟指揮への不服・進行遅延を目的としたものであり、民事訴訟法第26条によって当法廷で簡易却下が可能なはずです。この場で簡易却下していただきたい。」

 この発言を聞くと三木裁判長は、しばらく宙を睨んでいましたが、ややあって再び休廷を宣言、2人の裁判官を伴って奥の部屋に消えていきました。
 もう午後2時を過ぎていました。2回目とあって今度は法廷の半分くらいの人が裁判官退廷に「起立」の礼で応えました。今度も裁判体合議をするのでしょう。

 ややあって再び3人の裁判官が入廷します。今度は全員が「起立」の礼をもって迎えます。
 「開廷します」ともいわずに、三木裁判長は「簡易却下は致しません。よって今日はこれで終わりとします。」と宣言するやいなや再び2人の裁判官を伴って奥の部屋に消えていきました。
 「これで終わり」の意味は次の通りです。
 「裁判官忌避申立」があれば、四電側主任弁護士がいうように、裁判長は簡易却下できます。
 しかし三木裁判長は簡易却下は得策ではないと見たのでしょう、却下しませんでした。
 裁判長をはじめ3人の裁判官が忌避を申し立てられたのですから、「申立」の結論が出るまで裁判体は裁判を進めることができません。
 つまり審理は中断したのです。

 こうして異議審第2回審尋期日は中身の割にはあっけない幕切れとなりました。
 以上が非公開で行われた第2回審尋の、主な顛末です。

 肝心なことは、三木裁判長が露骨に四国電力を勝たせようという姿勢を露わにした、という点でしょう。
 それにしても今年3月の「悪評嘖々佐賀地裁決定」を下敷にしようとは。住民側弁護団が「裁判官忌避」をもって応えたのは当然といえば当然でしょう。

 さて報告会・記者会見にもどりましょう。

忌避申立に記者会見会場は質問が飛び交う

 海渡弁護士の裁判官忌避申立の報告を受けて、記者からの質問が相次ぎました。

佐賀地裁判決がどういう内容だったか、解説をする中野弁護士
 裁判官忌避申立については、申立から3日以内に忌避の理由を書面にして提出(「忌避申立理由書」)、忌避手続きについては広島高裁の別の部で審理されます。
 忌避が認められた場合は、この部に別の裁判長が来てこの事件の審理を行うことになります。
 忌避が却下された場合は、最高裁に特別抗告することも、弁護団は検討しています。
 忌避が却下された場合でも、裁判官忌避申立をきっかけに裁判所の姿勢が変わり丁寧な審理を行うようになった場合もある、それも期待していると海渡弁護士は述べました。

(なお、記者会見での弁護団の発言は後にテキスト起こしでみなさんにお届けします。それまでは、記録映像を視聴ください)
(またなお、忌避申立理由書は7月7日付けで裁判所に提出されました。すでにサイトに掲載していますのでご一読ください)

 記者会見終了後、報告会に移りました。

 高裁前集会でもスピーチした「伊方原発をとめる会」事務局の松浦さんと「伊方原発をとめる山口裁判の会」原告団長の木村さんがここでも、本日の広島高裁の姿勢とは対照的に参考人・証人の陳述に丁寧に耳を傾ける姿勢を示している高松高裁と山口地裁の裁判の様子を記者会見・報告会参加者全員に伝えました。

「伊方原発をとめる会」松浦さんと「伊方原発をとめる山口裁判の会」木村さん
 続いて、広島裁判の原告でもあり、脱原発アクション in 香川 共同代表でもある「未来を考える脱原発四電株主会」の溝渕さんが、昨年と違って一般の株主からも原発について厳しい声が出てくるようになったと、6月27日の今年の四電株主総会に臨んでの印象を報告。

「未来を考える脱原発四電株主会」の溝渕さん
 そして16時ごろ、報告会を終了しました。

露骨なまでの三木裁判長の訴訟指揮

 今回の審尋で顕著だと感じられるのは、「何が何でも9月30日までに決定を出せ」と求める債務者(四電)側の露骨な姿勢と、それに同調するかのように異常に結審を急ぐ裁判体の露骨なまでの姿勢です。

 頑なに債権者側の証人申請を拒否したこともその文脈で考えることができますし、非常用ディーセル発電機フィルターに関する書面を7月7日土曜日に提出するように債務者(四電)側に求めたり、その書面を受けて反論を出したいとする債権者側に「佐賀の九電資料を使えば早くできるのではないか?」という発言は、問わずに落ちず語るに落ちるで、佐賀地裁決定をコピーして決定を書こうという意図剥き出しです。
 原決定(広島高裁決定=野々上決定)における伊方3号炉運転差止期限は9月30日ですから、9月30日までに異議審の判断が出なければ、法的には、異議審で受ける四国電力の利益がなくなって、異議審は四電申立を却下せざるをえなくなり、原決定が生き残ります。
 これは他の原発裁判に影響を与えるかもしれません。こうした事態を、四国電力をはじめ原子力事業者は何が何でも避けたいようです。

 過去の伊方原発原子炉設置許可取り消し訴訟をはじめ、福島第一原発事故以前に起こされた原発に関わる裁判において、裁判所は住民側の訴えを軽視し、もっぱら事業者寄りの姿勢に終始した経緯があり、その結果として福島原発の悲惨極まりない状況を招いた責任は司法にもあります。

 そもそも裁判とは、債権者側・債務者側双方の主張が公開の場で分かりやすく示され、双方の主張の論理性・妥当性を審査して判断が下されるものなのではないでしょうか?

 三木裁判長以下3名の裁判官が、過去に犯した司法の過ちを何ら反省することなく、いたずらに事業者の意のみを汲んで広島高裁での異議審の審理を形式的に推し進め、債権者側の証人申請を認めようとしないことは、三木裁判長以下の裁判体が問答無用の姿勢を示したことに他なりません。
 もし裁判官に対して審理を早めて何が何でも9月30日までに決定を出すよう何らかの圧力がかかっているとしたら、と想像してみてください。

 ともあれ、広島高裁異議審第2回審尋期日は、住民側及びその弁護団と三木裁判長をはじめとする裁判体との全面対決という形で幕を閉じました。
 三木裁判長をはじめとする裁判官・裁判所は、2011年3月11日の福島原発事故を招来した責任の一端は、第一次伊方訴訟に始まる歴代の司法・裁判所にあったのだ、という事実をもう一度かみしめて欲しいものだと思います。



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