被爆地ヒロシマが被曝を拒否する伊方原発運転差止広島裁判
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「ふるさと広島を守りたい」ヒロシマの被爆者と広島市民が、伊方原発からの放射能被曝を拒否し、広島地方裁判所に提訴しました

2016年3月25日

伊方原発3号機が工事計画変更認可を取得、再稼働がいよいよ日程に


  2016年3月23日、原子力規制委員会は四国電力伊方原発3号機の工事計画変更を認可しました。これにより、伊方3号機の再稼働はいよいよ日程に上ることになります。
3月23日規制委定例会合提出資料1「原子力発電所の新規制基準適合性審査の状況について」―原子力規制庁:2頁1から2行目参照のこと)

 四国電力は伊方3号機についてこれまで、2013年7月8日新規制基準適合性審査申請時に工事計画変更認可を申請していましたが、2015年7月15日の原子炉設置変更許可取得を挟んで合計5回の工事計画変更の補正申請を行っており、特に16年に入って3月3日、3月15日と立て続けに補正申請を行っており、規制委員会(直接的には規制庁)と四国電力の“手打ち”も近いものとみられていました。

3つの許認可と最終合格証

 現行原子力規制法体系下では、原発再稼働を果たすためには規制委の規制基準適合性審査に合格しなければなりません。合格のためには次の許認可・合格証を取得しなければなりません。
  ・原子炉設置変更許可 取得
  ・工事計画変更認可 取得
  ・保安規定変更認可 取得
  ・使用前検査合格証 取得(書面で交付されます)

 さらにいえば、伊方3号機の法的ステータスは、現在「定期点検中」ですから、「定期点検修了証」も必要となります。実際には、九州電力の川内原発の場合は使用前検査と定期点検終了検査とは並行して突貫工事のように行われました。伊方3号機の場合も同様になるとみられます。

伊方3号機はまだ“合格”していない

 伊方(いかた)3号機の原子炉設置変更許可は2015年7月15日でしたが、この時マスコミは一斉に「伊方3号機、規制基準適合性審査合格」あるいは「事実上の合格」
と報道しました。現実には、3月23日にやっと工事計画変更認可を取得したばかりであり、今日現在も適合性審査に合格しているわけではありません。

 その意味では、中村愛媛県知事の「伊方3号機再稼働同意」も、伊方町長の「再稼働同意」も、規制基準適合性審査合格前の、いわば「審査合格」の実態がない中での同意ですから、「同意」そのものが無効ということになります。

 とはいえ、3号機が工事計画変更認可を取得したことは、再稼働の時期を見通す上で極めて重要なことです。適合性審査最終合格のためには、前述のごとく「使用前検査」に合格しなければなりませんが、工事計画変更認可を取得しなければ、四電は「使用前検査」そのものを原子力規制委員会に申請できないのです。四電は3月24日に規制委に「使用前検査」を申請したものとみられますが、これでやっと規制基準適合性審査合格、再稼働の時期が見通せる段階に到達したことになります。使用前検査未申請では合格の時期も、従って再稼働の時期も見通すことができません。

(保安規定変更認可は、3月22日に再度補正申請を提出しており、現在審査中です。まだしばらく時間がかかるものとみられます)

なぜ工事計画変更認可が手間取ったか

 工事計画変更認可は、昨年の11月頃私(哲野イサク)は、16年1月末、遅くとも2月末までには取得するものとみておりました。ところが実際には私の予測よりさらに1カ月近く遅れています。この理由は、規制基準に適合するための追加工事コストを押さえたい四電とできるだけ規制規則を守らせたい規制委との間で綱引きが行われ、追加工事コストをできるだけケチりたい四電が粘ったものと考えられます。
(規制委員会:「伊方発電所 3号炉 事業者とのヒアリング概要・資料」参照のこと)

 ここにきて、四電が規制委との「手打ち」を急いだのには、大きく2つの外的要因があると考えられます。1つは3月9日滋賀県大津地裁(山本善彦裁判長)が関西電力高浜3・4号機に対して運転差止の仮処分命令を出し、このため関電は高浜3・4号の原子炉起動を停止しなくてはならなくなったこと。もう1つは3月11日「伊方原発広島裁判原告団」が、伊方原発3号機の運転差止仮処分命令申立を広島地裁に対して行ったことです。伊方3号機の運転差止仮処分命令がにわかに現実味を帯びるにつれ、四電は少々のコスト高には目をつぶり、一刻も早く再稼働を急ぎ、再稼働の既成事実を作ってしまおうと動いたものとみられます。

 これまで大きくマスコミ報道に依存してきた方の中には、戸惑われる方も多いのではないかと思います。というのは、マスコミは「伊方3号規制基準適合性審査合格」と報道してきたからです。またそれを前提にして、オオカミ少年よろしく「伊方3号、年内(2015年のことです)にも再稼働」、あるいは「16年初に再稼働」、「16年3月までには再稼働」と報道してきました。ですから戸惑うのもムリはないのです。実際には伊方3号は、16年3月23日にやっと工事計画変更認可を取得して規制基準適合性審査合格までのスケジュールを見通せる段階に入ったわけです。

最終合格はいつなのか

 規制基準適合性審査の最終段階である「使用前検査」に合格して、晴れて合格証を手にし、再稼働の第1要件をクリアするのはいつなのか、という点が次に重要なポイントになります。
 九州電力川内1号機・2号機のケースが一つの参考になります。 (3つの許認可を取得して使用前検査中だった関電高浜3・4号機のケースは全く参考になりません。高浜3・4号機はまだ合格証を取得していないばかりか、福井地裁から運転差止の仮処分命令を食らって起動後検査がなかなかできませんでした。やっと福井地裁の仮処分命令をひっくり返して起動後検査に入ろうとしたら、4号機が炉心緊急停止という大失態を演じ、そうこうしているうちに、今度は大津地裁から仮処分命令を食らい、原子炉起動自体が停止、使用前検査が一歩も前に進めない状態、合格証を手にするのはいつのことか全く見通せない状況だからです)

 九州電力川内1号機の場合、工事計画変更認可を取得したのが2015年3月18日。合格証を得て再稼働したのが2015年9月なので6カ月かかっています。2号機は5月22日に工事計画変更認可を取得、合格証を得て再稼働したのが11月ですからこれも約半年近くかかっています。

(おかしいな、と思われる方も多いと思います。川内1号機の再稼働は2015年8月11日ではなかったかと。これはマスコミがそう報道したからです。8月11日は原子炉を起動した日です。使用前検査は、大きく起動前検査と起動後検査にわかれます。8月11日は検査のために原子炉を起動した日です。起動後検査を終了して合格証を川内原発構内で原子力規制委員会が交付するのはそれから1ヶ月後になります。マスコミは検査のための起動を「再稼働」と呼んだのでした。日本のマスコミによれば、規制基準適合性審査最終合格前に、原発が「再稼働」するという珍妙な事態が出現することになります。これは違法な再稼働ということになります。検査のための原子炉起動であればこれはもちろん合法です)

 さて伊方3号機が、使用前検査に6ヶ月かかるものとすれば、再稼働時期は9月。伊方原発広島裁判で申し立てている運転差止仮処分命令の決定前に、再稼働してしまおうというシナリオで急ぎに急いだとすれば(もちろんこれには原子力規制委員会・規制庁の全面的な協力が必要ですが、4ヶ月から5ヶ月。最短のシナリオで7月末というところでしょうか?

 私たち伊方原発広島裁判原告団・弁護団は、仮に伊方原発3号機が再稼働した後でも運転差止仮処分命令を勝ち取るため全力をあげる所存です。

伊方原発広島裁判原告団
事務局長 哲野イサク





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