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伊方原発広島裁判メールマガジン第16号 2017年3月15日

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 伊方原発・広島裁判メールマガジン第16号
 企業社会の健全さと企業生命すら蝕む原発ビジネス
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2017年3月15日(水)発行
編集長 :大歳 努
副編集長:重広 麻緒
編集員 :綱崎 健太

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  ▽本号のトピック▽
 ■企業社会の健全さと企業生命すら蝕む原発ビジネス
  1.上場廃止の可能性も
  2.なぜ東芝がここまで追い込まれたか
  3.WH社の『のれん代』
  4.次々に東芝に押しつけられる「核の不良資産」
  5.情報大手米3大ネットワークの一角、CBSに衣替えしたウエスティングハウス
  6.WHをもてあます英核燃料公社
  7.なぜ東芝はWH社を買ったのか?
  8.原発ビジネスの“ババ”抜き
 ■高裁金沢支部、いよいよ規制委元委員長代理島崎邦彦氏の証人尋問へ
 ■小泉純一郎氏、広大キャンパスで大いに吠える
 ■メルマガ第14号のお詫びと削除
 ■編集後記
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╋■┛ 企業社会の健全さと企業生命すら蝕む原発ビジネス
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 東芝といえば明治以来の、日本の産業界・経済界を代表する名門企業であり、結束力が弱いとはいえ旧三井財閥系企業グループの中核企業の一つです。また、古くは藤山雷太、戦後は石坂泰三、土光敏夫、佐波正一、西室泰三など日本の経済界の顔と目される錚々たる人材を輩出してきました。 その東芝が平成も終わりに近づきつつある今、企業倒産の危機に瀕しています。その原因はというと…

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上場廃止の可能性も
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 3月14日付けの朝日新聞(大阪本社版14版)は、一面左肩で「東芝、決算発表再延期へ」と3段見出しを組んで東芝が3月14日を期限としていた今年度第3四半期決算発表(2016年4月から12月の決算発表)を再延期する模様と報じました。抜粋引用しておきましょう。

「東芝は、14日を期限として延期していた昨年4~12月期決算の発表を再び延期する方向で調整に入った。」

 延期する理由は監査法人の承認がえられないためとし、

「決算発表の延期に回数などの制限はなく、東芝の申請は(関東財務局に)認められる可能性が高い。ただ認められない場合は、・・・期限の今月27日までに決算関連の書類を関東財務局に提出する必要があり、間に合わなければ東京証券取引所の規定に抵触して上場廃止になる。」

 14日の東芝の終値は1株215円で、13日の終値214円からほぼ変わらずですから証券市場は東芝決算書類提出再延長は関東財務局に認められるものと見ていることがわかります。事実3月14日関東財務局は、書類提出期限を4月11日まで延長することを認めました。が、朝日新聞がとうとう「東芝の上場廃止」の可能性に触れた点は注目されます。処理を誤れば東芝は証券市場上場廃止になる地点まできてしまったということです。

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 なぜ東芝がここまで追い込まれたか
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 名門企業東芝がなぜ倒産寸前にまで追い込まれたのか?本メルマガ読者の方々はすでに大筋ご理解をいただいていると思いますので、ここでは概要おさらいにとどめます。

 2015年(平成27年)5月、東芝は2014年度の決算発表延期および配当見送りを突如として発表しました。架空利益計上の粉飾決算が判明し決算報告ができなくなったのです。7月20日、 粉飾決算を調査した第三者委員会は報告書の全文を公表、粉飾決算事件により、田中久雄社長や前社長の佐々木則夫副会長、その前の社長の西田厚聡相談役ら直近3代の社長経験者を含む経営陣9人が引責辞任し、取締役会長の室町正志氏が代表執行役社長を兼任することになりました。
 こうした動きを受けて、9月14日には、東京証券取引所が東芝株を「特設注意市場銘柄」に指定しました。

 「特設注意市場銘柄」とは、証券取引所が上場廃止にする程ではないが、企業の内部管理体制を改善する必要性が高いと判断した場合に指定する銘柄をいいます。有価証券報告書等の虚偽記載、財務公認会計士等の不適正意見などで正常な市場取引に適さないが、上場廃止するほどではないとされる銘柄で、改善が見られなければ上場廃止に至ります。

 東芝は、虎の子の東芝メディカルシステムズをキヤノンに売ったり、イメージセンサーを生産する大分工場の半導体製造関連施設・設備の一部をソニー・グループに売ったりして懸命に現金確保に動きます。

 しかし、それでも2016年5月に発表した2015年度決算は、東芝として過去最悪となる4832億円の最終赤字となったのです。しかし、これは東芝の悪夢のほんの序曲にすぎませんでした。陰では致命傷の不良資産がようやく明るみに出かけていました。

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 WH社の『のれん代』
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 今年に入って2月14日、東芝のアメリカにおける原子力事業子会社、ウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー(WH社)の「アメリカ合衆国での原子力発電所建設事業における『のれん代』計上額」における会計処理を巡り、不適切な対応があったという内部通報を受け、監査法人の承認が降りなかったことを理由として第3四半期決算発表を急きょ延期する、と発表しました。
 いったいなんのことかわかりません。この後は日本経済新聞に解説して貰いましょう。

 「焦点の米原子力事業では7000億円規模の損失が発生したもようだ。4~12月期の連結最終赤字は4000億円台後半に膨らんだとみられ、自己資本がマイナスになる債務超過の可能性も高まっている。半導体メモリー事業の分社と外部資本受け入れといった対策を実施し17年3月末は債務超過の回避を目指すが財務は極めて脆弱になっている。」(2月14日付け電子版)

 この記事によれば、東芝の連結対象子会社米WH社で7000億円の損失が発生し、それが16年度決算の足を引っ張って第3四半期に4000億円程度の純損を生じさせ、すでに粉飾決算事件で大きく傷ついていた東芝の財務体質を悪化させ、場合によれば「債務超過」の恐れがあるということになります。WH社がわずか1年間で7000億円の純損を生じさせるわけはありません。積年の膿をだしたら7000億円になったということの筈です。それでは積年の膿とは一体何か?それは2006年1月イギリスの、今はなき核燃料公社からWH社を54億ドル(約6300億円=レートは当時)で買収した時にさかのぼります。

 当時のWH社の買収価格は衆目の一致するところ最大限2000億円。純資産は2000億円にも届きません。それを約6300億円で買ったのですから、差額の4300億円をどう資産計上するのか?それを東芝は「のれん代」という無形の資産で計上したのです。4000億円の無形の資産が将来利益を生んでくれれば資産価値があったのですが、その後の経過は全く逆の方向に進みます。4000億円が無形資産どころか「のれん代」そのものが不良資産だったことが明らかになっていきます。

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 次々に東芝に押しつけられる「核の不良資産」
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 今ではWH社自体が東芝に押しつけられた「核の不良資産」だったことが徐々に明らかになっていますが、東芝に押しつけられた「核の不良資産」はこればかりではありません。原発施設建設エンジニアリング大手のストーン・アンド・ウェブスター社(S&W社)がそうです。S&W社は、かつてはボストンに本拠を置く独立の原発建設の名門企業であり、その核ビジネスとの関わりはマンハッタン計画にまでさかのぼります。が、原発ビジネスの凋落と共にシカゴに本社を置く建設大手のシカゴ・ブリッジ・アンド・アイアン・カンパニー(CB&I)の傘下に入っていました。米WH社はそのS&W社をCB&Iから買収したのです。いきさつについては朝日新聞が手際よくまとめていますのでそれを引用します。

 「WHがS&Wを買収したのは15年末のことだ。08年に米国で原発4基を受注したが11年に東京電力福島原発事故が発生。事故後の安全規制強化で急増した建設コストの負担を巡り発注元の電力会社とWH、建設を請け負うCB&Iとの間で対立が起き、訴訟に発展するなどして工事が進まなくなっていた。WHは(筆者注:電力会社からの損害賠償請求を恐れて)工事を進めることを優先し、訴訟の取り下げなどを条件にCB&IからS&Wを買い取った。」

 買い取り価格はゼロドル。つまり無償でS&Wを譲り受けたのですが、中身を見てみるとこれがただでもいらないというシロモノ。朝日の記事を続けます。

 「だが、S&Wの経営実態を精査すると東芝が1基5000億円と見ていた原発の建設費用(筆者注:4基計で2兆円)は、実際には7000億円程度に膨らんでいた。『我々はだまされた』昨年12月になって巨額損失について聞かされた東芝幹部は今、こんな感想を漏らす。」
 (3月9日付け朝日新聞大阪本社版10版7頁の『泥沼の原発ビジネス 上 東芝を食い潰した米WH』)

(筆者注:4基計で2兆8000億円。実際には“Japan Lessons Learned”―日本の教訓に学ぶ―を旗印とするアメリカ原子力規制委員会は次々と安全規制を強めており、1基7000億円で済まなくなる可能性が十分にあります。下記参照のこと。https://www.nrc.gov/reactors/operating/ops-experience/japan-dashboard.html

 そればかりではありません。WH社を買収した時に共同出資した他3者(そのうち1者は日本のIHI)は、WH社に見切りをつけ出資を引き上げることになるのですが、出資時のオプション契約で、出資金の50%増しで東芝が買い取る契約となっており、ここでも東芝に余分な出費が続きます。

 また現在建設契約しているアメリカの電力会社は、連邦政府の税制優遇措置を受けられる筈でしたが、工事がこれ以上遅れれば2020年以降の税制優遇措置が受けられなくなる恐れがあり、その損害賠償で数千億円の補償を求められる恐れもあります。

 要するに東芝はいま、どれほど損失が膨らむのか確定できない状況にあるということです。

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 情報大手米3大ネットワークの一角、CBSに衣替えしたウエスティングハウス
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 ここで世界を代表する核産業大手、マンハッタン計画以来の名門核企業、加圧水型原子炉の開発メーカー、また原発ベンダーとして世界で100基近くの原子炉を受注納入したウエスティングハウス社がなぜ中核企業のWH社を手放したのかを振り返っておくことも無駄ではないでしょう。ウエスティングハウスが核産業にかかわるようになったのは、1944年に実質スタートした原爆開発事業「マンハッタン計画」からです。この時政府から研究開発資金を受け取ってマンハッタン計画で必要とされる装置機器類を研究・開発、製造納入しました。この時同様に装置機器類を研究・開発、製造納入したメーカーには、ジェネラル・エレクトリック(GE)、かつでは自動車大手だったクライスラー、いまはハネウェルと名前を変えているアライド・ケミカル社などがあります。

 戦後ウエスティングハウスは、マンハッタン計画で培った技術(ほとんど特許で守られています)やノウハウ、人的資源を活かしてアメリカ海軍の原子力潜水艦の原子炉開発に携わります。この原子炉が現在の商業用加圧水型原子炉の原型です。高度な安全性と堅牢性が求められる原子力潜水艦の原子炉は商業用原子炉としてはコストがかかりすぎ、一般に普及しません。それで当時の原子力委員会(AEC)がウエスティングハウスに依頼して開発製造した廉価版(手抜き版)が現在の加圧水型原子炉の出発点です。

 60年代から70年代にかけての世界的原発ブームに乗ってウエスティングハウスも大いに伸びました。陰りが見えたのは、1979年のスリーマイル島原発事故でした。事故を起こした2号機は、バブコック&ウィルコックス社の設計納入した原子炉でしたが型は加圧水型原子炉でした。

 80年代に入るとあぐらをかいた経営体質も手伝ってウエスティングハウスの経営は急速に傾きます。1986年のチェルノブイリ原発事故を挟んで、90年代に入ると同社は経営陣を刷新し、抜本的な経営改革に乗り出します。経営改革といっても半端な中身ではありません。業種・業態を全く変えようというのです。創業者ジョージ・ウエスティングハウス以来の重電・電気部門はドイツの大手ジーメンスに売り、マンハッタン計画以来の核事業部門はウエスティングハウス・エレクトリック・カンパニー(WH社)としてイギリスの、これもいまはなき核燃料公社に売ってしまうのです。それでは、ウエスティングハウス本体はどうなったか?

 1995年、ウエスティングハウスはアメリカ3大ネットワークの一つCBSを買収して社名もCBSコーポレーションに変えてしまいます。重電・電気・核事業を主体としていたウエスティングハウスは、情報・通信・放送事業の大手企業に変身するのでした。他様々な要因がありましたが、同社が原発ビジネスの将来に早々と見切りをつけたことには間違いありません。さらにウエスティングハウス、いや、いまやCBSは、同業のGEが大成功を収めたように金融ビスネスにも進出していきます。

 それではマンハッタン計画以来膨大に蓄積した核事業関連の特許はどうなったか?CBSはこの低リスク・ハイリターンの特許事業は手放しませんでした。このためCBSは特許管理・販売子会社を設立しました。この会社の名前がウエスティングハウス・エレクトリック・コーポレーションですから話はややこしくなります。(ちなみにWH社は正式にはウエスティングハウス・エレクトリック・カンパニーです)ウエスティングハウスは20世紀の間に約2万8000件の特許をアメリカ連邦政府に登録したといわれています。もちろん加圧水型原子炉の基本特許も含まれます。

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 WHをもてあます英核燃料公社
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 それでは、WH社をなぜイギリスの核燃料公社は買収したのか?その一端を説明するのが、日本語ウィキペデイア『英国核燃料会社』です。一部引用します。

 「英国核燃料会社( British Nuclear Fuels Limited、BNFL。1971年設立)はかつて存在したイギリス政府所有の持株会社。MOX燃料などの核燃料の生産と輸送、原子炉の運営、発電および売電、セラフィールドなどでの使用済み燃料の管理および再処理、原子力施設の廃止措置や原子炉廃炉などイギリスの原子力産業で中心的役割を担っていた。2005年4月1日、BNFLは新しい持ち株会社として英国原子力グループを編成し、分野・部門全体のほとんどの売却・移譲を含む厳しい再編工程を始めた。2005年、保有していた原子力施設は原子力廃止措置機関(NDA)に移譲した。子会社であったウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニーは2006年1月に東芝に売却された。後に、BNFLは主要子会社から編成された英国原子力グループを売却した。2009年5月BNFLはその資産のすべての売却を終えその役割を終えた」

 短い記述の間になぜBNFLが1999年にWH社をアメリカCBSコーポレーションから11億ドル(約2200億円=レートは当時)で買収したのかがみえてきます。民間企業が次々と撤退する中で、核産業や原子力発電事業を維持するためにはイギリス政府自身が乗り出さなくてはならなくなったのがBNFLの設立動機です。一時は“核ルネサンス”(日本ではなぜか原子力ルネサンスと訳されています)のかけ声にのって、夢よもう一度とばかりに新規原発事業にいったんは乗り出したのがWH社買収の動機です。買値の11億ドルも当時のWH社の価値からすると高い買い物ではありませんでした。しかし原子力ビジネスの凋落ぶりはいかんともできません。こうしてイギリス政府はすべての新規核ビジネスから手を引いて、廃炉ビジネスに特化することに決定し、WH社の買い手を探したのでした。超長期の資金を必要とし、事故や訴訟、あるいは建設費高騰のリスクを抱えるWH社はそれでなくてもBNFLのもてあましものでした。

 それを日本の東芝が54億ドルで買ってくれたのですからBNFL(=イギリス政府)としては100点満点の処理だったでしょう。単純にいって11億ドルの買い物が、5-6年寝かせておいただけで54億ドルに化けたのです。

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 なぜ東芝はWH社を買ったのか?
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 なぜ東芝はWH社を買ったのか?この質問に答えるのは比較的簡単でしょう。
チェルノブイリ事故の影響も徐々に薄れつつあり、安価な電力需要の高まり、地球温暖化への危機から脱炭素社会への志向、また核ルネサンスのかけ声に励まされ、原発ビジネスに将来がある、と見通したからに他なりません。いま振り返って見ると、自分たちが世間についてきたウソに自分たち自身がだまされた、という構図です。(ただし、アメリカのウエスティングハウス=CBSやイギリスのBNFLはちゃんと自分たちのウソはウソとして認識しており、自分のウソにだまされることはありませんでした)

 ところが何故相場の3~4倍以上の54億ドルも出して買ったのか、という話になるとこれは謎です。通常のビジネス感覚ではちょっと考えられません。東芝の幹部がだまされたとしても限度を超えています。私などには答えようがありません。

 この疑問にひとつヒントを与えてくれるのが朝日新聞の別な記事です。引用します。

 「(筆者注:2006年当時のWH社の)争奪戦の陰にいたのが経済産業省だった。『とにかくに日本勢に“買え、買え”とうるさかった』(交渉担当幹部)」

 しかし日本勢といっても名乗りを上げているのは東芝と三菱重工業だけです。三菱重工業は2000億円以上は出さない、それほどの価値はないという態度ですから、“買え、買え”と経産省にせっつかれたのは東芝だった、と読み替えることができます。朝日の記事を続けます。

 「04年電力業界に厳しい姿勢だった事務次官の村田成二<72>(筆者注:現新エネルギー・産業技術総合開発機構理事長)が退任すると、省内で原発推進派が勢いを得た。資源エネルギー庁は06年8月、原子力政策課長(当時)の柳瀬唯夫<55>(筆者注:現産業経済政策局長)らが中心となって『原子力立国計画』を策定。原発の輸出を官民一体で推進することを掲げた。その後、電力会社が協力して売り込む“パッケージ型インフラ輸出”として(筆者注:現安倍政権の)成長戦略の一つとなる。旗振り役は貿易経済協力局の海外担当審議官(当時)、今井尚哉<55>(筆者注:現安倍内閣総理大臣秘書官)だった」(3月10日付け朝日新聞大阪本社版10版『泥沼の原発ビジネス 中 強気の買収 陰に経産省』)

つまりこういうことです。54億ドルは誰が見ても高すぎる買い物だったが、“ウエスティングハウス”のブランド力を背景に、国策で原発推進、原発輸出を進めていけば十分元がとれる、経産省の政策とも完全に一致していると当時の東芝幹部はそろばんを弾いたのではないか、という説明です。

 しかし、その夢も東電福島第一原発事故が完全に打ち砕いてしまいました。超長期に資金を寝かせ、事故や訴訟のリスクを常に抱え、使用済み核燃料の処理すらメドがついておらず、ただでさえビジネスリスクの大きい斜陽産業だった原発ビジネスに襲いかかったのが“福島事故”です。世界中で安全対策コストがいっぺんに跳ね上がり、世界最大の核産業コングロマリット、フランスのアレヴァですら巨大赤字を出して事実上の倒産状態です。東芝=ウエスティングハウスなどはひとたまりもありません。それは冒頭紹介したとおりです。

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 原発ビジネスの“ババ”抜き
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 窮地に追い込まれた現在の東芝の状況を大きく俯瞰してみましょう。

 80年代原発先進国アメリカではすでに原発ビジネスに陰りがみえていました。一つにはスリーマイル島原発事故やチェルノブイリ原発事故に象徴される苛酷事故に伴うリスクです。また反原発市民運動に代表される世界的な「反原発感情」の高まりも見過ごせません。最大の問題は、規制強化に伴う原発建設コストや運営コストの急上昇です。簡単にいって急成長産業分野とみえた原発ビジネスは急速に斜陽産業化していったのです。

 優良企業と見えたCBS(旧ウエスティングハウス)傘下の原子力事業部門、WH社も急速に有形無形の不良資産を抱え込むことになりました。ことが明るみに出る前にできるだけ高値で売ってしまわねばなりません。“急速な不良資産化”と言うトランプの“ババ”を引いたのはイギリスの核燃料公社(BNFL)でした。“ババ”を引かされたBNFLがそうと気づくのにさほど時間はかかりませんでした。その“ババ”をさらに引いたのは東芝でした。

 トランプの“ババ”は引いても“ババ”ですが、原発ビジネスの“ババ”は引くたびに隠れた不良資産が顕在化し、しかもふくれあがっていくという恐ろしい“ババ”です。

 「ただでいいから、お金をつけてでもいいから、どなたかWHを引き受けていただきたい(東芝幹部)」(3月9日付け朝日新聞『泥沼の原発ビジネス』前出)ということのようですが、この恐ろしい“ババ”を引いてくれる救世主は現れそうにありません。

 原発は私たち市民の健康と生命を蝕んでいるだけではなく、ビジネス社会の健全さと企業生命すら奪いつつあるのです。

(文責:伊方原発広島裁判原告団事務局長・哲野イサク)



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╋■┛ 高裁金沢支部、いよいよ規制委元委員長代理島崎邦彦氏の証人尋問へ
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大飯原発差止訴訟控訴審第11回口頭弁論
4月24日(月)名古屋高裁金沢支部 午後1時30分開廷
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☆傍聴希望者は名古屋高裁金沢支部前 12時集合

ニュースで報じられましたので多くの方がご存じだと思いますが、4月24日、原子力規制委員会の元委員長代理・島崎邦彦氏が証人として法廷に立ちます。
高裁金沢支部の内藤正之裁判長は1月に行われた第10回口頭弁論にて「控訴審における最も重要な証人」として証人採用を認めており、島崎氏を喚問、島崎氏はこれに応じて法廷で証言することになったのです。
最近の原発裁判のハイライト中のハイライトというべきでしょう。

島崎氏は規制委委員退任後、基準地震動算出の基礎となっていた「入倉・三宅式」では地震動の過小評価になる可能性がある、という見解を学会において繰り返し発表しています。
地震問題担当原子力規制委員会委員だった島崎氏の発言だけに重みがあります。

可能な方は是非傍聴参加をお願い致します。
詳細は「福井から原発を止める裁判の会」が作成したチラシをご覧ください。
http://saiban.hiroshima-net.org/pdf/20170424.pdf


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╋■┛ 小泉純一郎氏、広大キャンパスで大いに吠える
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即時原発ゼロを訴えている元首相小泉純一郎氏の講演会が、広島大学本部キャンパス(西条キャンパス:広島県東広島市)内のサタケメモリアルホールで開催されます。
講演は題して「日本の歩むべき道」
主催は東広島ユネスコ協会で同会の40周年記念事業。日時は4月1日。事前予約が必要です。

詳細は下記フライヤーをご覧ください。
https://goo.gl/1Rmimc

会場:広島大学サタケメモリアルホール 東広島市鏡山1丁目2番2号
日時:2017年4月1日(土) 開場13時
   講演14時~15時30分(13時30分より東広島ユネスコ協会記念式典)
東広島ユネスコ協会創立40周年記念事業
主 催:東広島ユネスコ協会 後援 東広島市教育委員会 国際ソロプチミスト東広島
聴講料:大人1500円 大学生1000円 中高生500円


▼聴講をお申し込みの方は下記1~5をご記入の上ハガキまたは、FAXにて下記宛お申込みください。
1.申し込み者氏名
2.申し込み者ご住所 郵便番号 電話番号
3.聴講者人数(大人_人:大学生_人:中高生_人)
4.振込日
5.振込金額

ハガキの宛先:〒739-0034 広島県東広島市西条町大沢68-1 東広島ユネスコ協会
FAXの番号:082-425-0663
(先着順に受付 定員になり次第締め切らせていただきます)

▼振込先:ゆうちょ銀行
【1】 ゆうちょ銀行からの振込
    口座番号01390-0-105206
    口座名義ヒガシヒロシマユネスコキョウカイ ハチホンマツ
  【2】他の銀行からの振込
    イチサンキュウ店(139)当座預金 口座番号0105206

  ※振込手数料はお客様負担でお願いします。
   お振込みを確認できた方には3月中旬~下旬までにチケットを郵送します。
  ※当日12時30分より整理券を配布いたします。
   早くお越しの場合も定刻までは配布いたしかねますのでご了承ください。


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╋■┛ メルマガ第14号のお詫びと削除
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本メールマガジン14号の掲載記事『福島原発事故避難基準20mSvの根拠-ICRP2007年勧告国内法制化を急ぐ原発推進勢力』の中で一部訂正削除があります。

関連箇所は以下の通り。

「たとえば、2016年2月4日に開かれた第132回総会の議事録から引用してみましょう。この日の会合は「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」(障防。IR法)の改正(2007年勧告国内制度取入れ)問題を中心に議論が行われ、改正条文の中身の審議を行う重要な会合でした。」

上記文章中「(2007年勧告国内制度取入れ)」を削除いたします。
現在の放射線審議会の審議内容は大きくいえばICRP2007年勧告及び2009年勧告など、1990年勧告以降のICRP諸勧告を国内制度取入れに集中しており、この日の会合もそうした流れの一環でしたが、当日の議題「放射性医薬品の製造及び取扱規則及び関係告示に係る放射線障害防止に関する技術的基準の改正」と一連のICRP勧告との関連解説がなく、また記事の主眼も弛緩しきった放射線審議会の模様に力点が置かれております。
読者の指摘を受けて検討した結果、「(2007年勧告国内制度取入れ)」を削除した方が適切と判断いたしました。

ここにお詫びの上訂正削除いたします。
(文責者:哲野イサク)


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╋■┛ 編集後記
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早いものでもう3月も半ばを過ぎます。そして未曾有の大惨事である福島第一原発事故から7年目に入ります。私たちの裁判も1年を過ぎました。

昨年の3月11日に広島地裁に提訴した伊方原発3号機運転差止仮処分命令申立事件の広島地裁判断が、今月中にも出されようとしています。広島地裁は判断日(決定日)の1週間前には債権者・債務者双方に通知すると約束していますので、判断日が判明し次第すぐにみなさまにお知らせいたします。
もし、私たちの仮処分申立が認められれば、この国で初めて規制基準適合性審査に適合・合格し、営業運転を開始した原子炉に、人格権侵害の恐れがあり保全の必要があるとして司法が運転停止を命ずる初のケースとなります。同時にそれは現在の規制基準やその審査のありかたに対して、司法が重大な疑義を提出したことになります。

判断日(決定日)当日、是非広島地裁前にお運びください。

本号メールマガジンは、「東芝=ウエスティングハウス問題」を取り上げました。
「東芝=ウエスティングハウス問題」は、東芝という巨大企業の脇の甘さもさることながら、原発ビジネスそのものが、経済界・産業界にとっても大きな重荷になっていることを白日のもとに曝した点で特徴的です。
14日東芝は記者会見で海外の新規原発受注ビジネスからの事実上の撤退宣言を出しました。日本の原発ベンダー・電力会社一体となった原発輸出を“パッケージ型インフラ輸出”として成長戦略の柱として位置づける安倍政権にとっては大きな痛手です。
そもそも原発ビジネスを成長戦略の柱として位置づける発想が時代錯誤だったわけです。
(編集部:綱﨑健太)


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伊方原発運転差止広島裁判
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◆伊方原発広島裁判メルマガ編集部◆
メールマガジンを退会されたい方は
メルマガ編集部 mm@hiroshima-net.org
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