被爆地ヒロシマが被曝を拒否する伊方原発運転差止広島裁判
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「ふるさと広島を守りたい」ヒロシマの被爆者と広島市民が、伊方原発からの放射能被曝を拒否し、広島地方裁判所に提訴しました


伊方原発広島裁判メールマガジン第20号 2017年9月1日

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 伊方原発・広島裁判メールマガジン第20号
 火山灰濃度限度変更 形骸化する規制基準バックフィット制
 ~ただちに原発をいったん停止すべき~
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2017年9月1日(金)発行
編集長:哲野イサク
編集員:綱崎健太
編集員:小倉 正
編集員:網野沙羅

▽本号のトピック▽□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

■編集長あいさつ
■火山灰濃度限度変更 形骸化する規制基準バックフィット制
 ~ただちに原発をいったん停止すべき~
1.伊方原発と火山噴火
2.田中規制委員長「バックフィットをかける」宣言
3.出席官僚はここが泥沼とはつゆ知らず?
4.その後の動向
5.そもそもバックフィットとは何か
6.過去のバックチェック制の失敗とは何か
7.国会事故調の提言をたよりに
8.~ただちに運転中の原発を一旦停止すべき~論
■伊方原発広島裁判 今後の予定
■伊方原発広島裁判メールマガジン登録方法
■読者のみなさまへ―メルマガストーリー記事寄稿のお願い
■メルマガ編集部後記
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■╋■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
╋■┛ 編集長 ごあいさつ
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 しばらくお休みをいただいていた当メールマガジン(メルマガ)ですが、9月1日から新体制で再開することになりました。
 新たなスタッフは編集長に哲野イサク、編集委員に小倉正、綱崎健太、網野沙羅の4人の体制です。いずれも裁判の原告です。
 毎月1日と15日発行の月2回発行で進めます。

 毎回原発問題や被曝問題を中心に、裁判の話題だけでなく幅広くテーマを選んで、
 その号のストーリー記事を主体にお知らせや短信などで構成し、時には外部から寄稿も求め、
 できるだけみなさんに参考となる情報の提供と知見や見識を高めるために役立ちたいと考えております。
 今後ともご指導・ご鞭撻、ご批判をお願い申し上げます。

 本号のストーリー記事は、福島原発事故後の原子力規制委員会の基本理念である「バックフィット制度」が早くも骨抜きとなり、
 またぞろ事故前の「規制の虜」にもどりつつあるのではないかとする懸念を「火山灰問題」に例をとりながら展開する内容です。
 極めて地味な内容ですが、大手マスコミがほとんど取り上げないテーマでありながら、
 事故後の原子力規制行政の根幹にかかわる重要な問題として取り上げることにしました。
 ご一読ください。この問題に取り組んでいる編集員の小倉正の執筆です。

 編集スタッフ一同、すべての原発廃絶を心に誓いながらメルマガ発行を続けていく所存です。
 今後ともご支援、ご愛読のほどよろしくお願い申し上げます。
(哲野イサク)

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╋■┛ 火山灰濃度限度変更 形骸化する規制基準バックフィット制
■   ~ただちに原発をいったん停止すべき~
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◆1.伊方原発と火山噴火

 伊方原発3号機の再稼働前の新規制基準審査では、九州の火山が噴火して起こる原発事故のリスクについても審査されました。
 カルデラ破局噴火の火砕流問題と、飛んでくる火山灰が積もることによって起こる問題の2項目です。

 311後、重大事故の発生原因としての自然災害(ハザード)の発生をちゃんと想定しなければならないこととなり、
 特に南九州は世界有数のカルデラ地帯であることから、再稼働一番手の九州電力川内原発の審査ではカルデラ破局噴火の
 問題に関心が集まりました。
 最大最悪の災害といえるカルデラ破局噴火とは、南九州全体が全滅してしまうような規模の巨大噴火で、
 発生間隔は3万年に1度というまれなものですが、それが起こった場合には原子炉建屋が火砕流に包まれ
 運転員がとどまる事ができず、防ぎようもなく過酷事故に至る想定であることから、電力会社側は噴火が始まることを事前に予知し、
 原発の運転を停止した上で燃料棒の搬出移送を行う、と強弁した点が問題になりました。

 およそ事前予知が不可能と専門家が口を揃えるのに、カルデラ破局噴火が世間の常識に照らして稀であるという一事で
 強行突破するという実例を作り、原子力規制委員会は禍根を残しました。
 川内原発についての福岡高裁宮崎支部での仮処分抗告審が棄却されたのはそうとう無理筋であったことが分かります。
 3月30日の広島地裁の仮処分棄却はこの争点についても、規制委審査基準には不合理な点があるとしながらも
 宮崎支部決定に従ったものになっています。

 伊方原発も阿蘇カルデラの火口からは160km圏内にあるため火砕流の到達について審査を受けました。
 四国電力は過去の阿蘇からの火砕流は伊方にまでは届いていないと主張していますが、
 海を越えて宇部市あたりまでは到達した例があり、佐田岬半島全域にまで到達していたとしてもおかしくありません。

 その審査の時に同時に問題にされていたのが、カルデラ破局噴火よりもひんぱんに繰り返す、
 100年に1回程度の比較的小規模な大噴火によって火山灰が15センチくらいの厚さで積もる問題です。
 こちらは、既往最大の例はなぜか富士山の宝永噴火となっています。

 伊方沖の海中の中央構造線断層帯の上には7300年前の鬼界カルデラ噴火による「アカホヤ火山灰」が堆積していて、
 断層活動の年代判定の目印になっています。
 そちらを使ってもいいはずですが、全国共通で富士宝永噴火の例を使うのは、
 よりひんぱんに起こる規模の噴火に焦点をあてているからでしょう。
 阿蘇山、九重連山、鶴見岳といった中九州の火山が大噴火して火山灰が西風に乗って降り積もるという想定でした。

◆2.田中規制委員長「バックフィットをかける」宣言

 さて、7月19日の原子力規制委員会会合で2つの問題が発覚しました。

問題A. 想定すべき火山灰濃度を100倍に引き上げる方針を決めました。
 上の2番目の問題、15センチくらいの厚さで積もる火山灰の大気中濃度が
 実は100倍である想定が必要だったという研究成果が今回採用されました。

 通常2台ある非常用ディーゼル発電機の吸気フィルタが火山灰で次第に目詰まりするので、
 やがてフィルターを交換しなければならないのですが、濃度100倍で、その時間間隔が100分の1に短くなることから、
 2台とも止まらないようにするため始終フィルター交換をしなければならなくなり、
 電力会社の想定でも現状のフィルターのままでは2台とも止めてしまうことが分かりました。

 従来の想定に問題があったことは火山灰問題の検討チームによる3回の会合でまとめられ、その報告を原子力規制委員会が了承し、
 結果として田中規制委員長は、「バックフィットをかける」とこの日、宣言しました。

問題B. 非常用ディーゼル発電機の運用手順が、現状で規則に違反している状態であったことがわかりました。
 そもそも火山灰が降り外部電源が喪失している状態では、非常用ディーゼル発電機を2台運転中に片方を止めて、
 フィルターを交換し新しいものにする作業をやっていると、もう一台の動いている発電機が何らかの原因で故障をした場合には
 即座に「全交流電源喪失」となってしまい、「多重性/多様性」の要求を満たしていないというのです。

 この「単一故障を仮定して、2台の健全性を確保する」という規制庁の規則を満たす最も簡単な手は、
 3台目の非常用ディーゼル発電機を取り付けることだったのですが、そうはなっていないのでした。
 この問題はそもそも、6月22日の原子力規制庁火山灰検討チーム会合で東京電力社員が三回も尋ね直して
 初めて規制庁の解釈が明らかになったものでした。

 この「全交流電源喪失」とは、原子力災害対策特別措置法(原災法)の第10条で政府へ通報するように義務付けられている10条通報事象であり、
 更に冷却機能も喪失と分かれば政府が緊急事態宣言を出して住民避難の開始を求めるべき15条通報へと進む重大な事象です。

《東電福島原発事故で起こったことのおさらいをしておくと、
 ①東日本大震災の最初の地震による受電鉄塔の倒壊や構内変電所の開閉器の破損により「外部電源喪失」が起こり、
 ②1時間後に津波の到来により地下の変電盤が浸水したため運転中の非常用ディーゼル発電機が停止し
  「全交流電源喪失」(また同時に直流電源も停止したため「全電源喪失」も)の状態となり、
  冷却ができなくなったことから燃料棒から発生する崩壊熱を除去できなくなりメルトダウンへと進みました。》

◆3.出席官僚はここが泥沼とはつゆ知らず?

 全国各地の原発再稼働問題に関わる市民団体では、急ぎ、対規制庁交渉を行いました。
 https://www.youtube.com/watch?v=_sWPjzfhTWc
「20170807 UPLAN 【政府交渉】原発火山審査で火山灰濃度100倍に!稼働中原発直ぐに止めて!」
 のYoutube動画でこの2つの別々の問題を追求しているのを確認できます。

Aの「火山灰濃度100倍」問題
 規制庁担当者の回答は
  「考え方を作っていく段階。今後どの規則の条文をこう変えるというのはまだ決まっていないが、電力会社の意見を聴取して今後決めていく。
   改正がなされた段階でそれが新たな規制となる。(新設の)機能維持評価用基準の中で「参考濃度」という新たな数値を用いることになる。」
 …とまだ先になる予定だと回答しています。

Bの「非常用ディーゼル発電機の運用手順」問題
 規制策定側の担当者は
  「単一故障の仮定から、2系統が維持されることを要求しています。」といいつつ、現状での電力会社の運用方式が
  「2台のうちの1台を停止してフィルターを交換する作業を交互にすることになっていること」を認めようとせずに、
  「自分は審査の側の担当ではないので」と言って涙目になっていました。(2時間29分あたり)

 審査した結果にミスがあったことをその場で認めることはなんとしてもできなかったのでしょう。

◆4.その後の動向

 出席官僚の側は宿題を持ち帰った後、8月17日付け回答の中では、議事メモの不十分な記述に基づいて電力会社の見解を
 「2台とも運転したままフィルター交換が可能である」と認識している旨を伝えてきました。
 一寸先伸ばしのための呆れた悪あがきだと言わざるを得ません。

 一方市民団体の側では、
  8月9日 九州電力鹿児島支店と鹿児島県への要請
  8月10日 佐賀県への申し入れ
  8月17日 四国電力原子力本部への要請

 と立て続けにこの2つの問題で電力会社に即時停止して改善せよ、と申し入れをするとともに話を広げようとしています。
 「2台とも運転したままのフィルター交換が可能である」と主張する電力会社は出てきていません。

 《筆者も愛媛県議会へ「原子力規制委員会に、地元の議会として(単一故障の原則に基づいて
  常時2台の非常用機器が健全である状態を維持すること、という)規制の原則を曲げることのないよう、
  申し入れを行ってください。 」という内容の請願を出しています。》

◆5.そもそもバックフィットとは何か

 さて、Aの「火山灰濃度100倍」問題は、311後の新規制基準が出来てから初めてのバックフィット制度の更新の適用事例となると言えます。

バックフィット制度とは:
 311の後、原発審査に際して導入された理念です。
 (国会図書館による「我が国のエネルギーをめぐる諸課題」のまとめより引用)

 【原子力規制委員会の設置(1、平成24(2012)年 9月)の目的は、原子力の利用推進と規制を分離し、独立性、専門性、
  透明性の高い原子力規制体制を構築することである。
  原子炉等規制法の改正(2、同年6月)によって、
   a) 重大事故対策、
   b) 最新規制の既存施設への適用(バックフィット規制)、
   c) 運転期間制限(原則 40 年、認可があれば最大 20 年の延長が可能)等が法定化された。】

 【(2)再稼働と適合性審査 我が国の原発は、東日本大震災時の緊急停止や、定期点検のため、順次、運転を停止した。
  バックフィット規制の導入によって、既存の原発を再稼働するに当たっても最新の規制基準に適合させることが必要になったことから、
  事業者は、各原発の原子炉設置変更許可申請等を原子力規制委員会に提出し、新規制基準への適合性審査を受けている。】

 現在、原発の再稼働に際して行われている基準適合性審査そのものの枠組みが、
 バックフィット制度の適用実例である(他に法的な縛りはない)というのは目からウロコの指摘でした。
 この役割を果たしている面では形骸化というのは当たらないかもしれません。

 これに対して、最新知見を確認するが、既存施設への適用はしない理念のことを「バックチェック制度」といいます。
 福島原発事故前、日本は長い間「バックチェック制度」を採用してきました。
 もしバックフィット制度を採用していれば、福島原発事故も防げたかもしれません。
 事故後、原子力規制行政はその理念において「バックチェック制度」から「バックフィット制度」に大転換を図りました。
 今回の「火山灰濃度100倍問題」も本質は規制の「バックフィット制度」問題です。
 屁理屈を並べ立てて、即座のバックフィット適用をためらう規制庁の姿勢は「バックフィット制度」の骨抜きになりかねません。

もう一件、引用しておきます。こちらは原発推進派の論。

 【〇事故後にバックフィットが導入された
   福島第一事故を受け,平成24年6月の法改正で「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」)」に
   新しく「バックフィット」ルールが盛り込まれた。
   具体的には「発電用原子炉設置者は,発電用原子炉施設を NRA 規則で定める技術上の基準に適合するように維持しなければならない。」
   との条文(第43条の3の14)である。
   これにより,基準が改訂された場合,発電用原子炉に遡及して適用されることとなった。
   さらに「技術上の基準に適合していないと認められる場合,原子力規制委員長は発電用原子炉施設の使用の停止,改造,修理又は移転,
   発電用原子炉の運転の方法の指定その他保安のために必要な措置を命ずることができる。」との条文(第 43 条の 3 の 23)も定められたため,
   新しい基準に適合していない場合,原子力規制委員長は場合によっては施設の停止を命令できることとなった。
   この2つの条文がセットで「バックフィット」が成り立っている。】
 (日本原子力学会誌2014.6 時論:バックフィットの国民的議論が必要 諸葛宗男)

 7/19に田中規制委員長が発言した「この問題についてバックフィットを掛ける」とは、最新の技術基準そのものを改訂すること、
 そして再度その更新した基準に適合するかどうかの評価を各原発に対して審査する予定だということを宣言したものです。
 その新たな基準を作るプロセス自体もここ数ヶ月の動きを観たところでは監視が必要なようです。
 ことによると、過去のバックチェック原則並みになるのかもしれませんから。

◆6.過去のバックチェック制の失敗とは何か

バックチェック原則とは:
 バックフィット原則以前の理念
 311以前はバックチェックという名前の制度でした。
 適用された事例としては、2006年の中越沖地震の結果も踏まえて見直すことが決まって始まった「耐震バックチェック」が挙げられます。
 実際には電力会社に自主的な対応を求めるものであるため、伊方原発3号機の場合には2010年春まで審査が続き、
 伊方3号の想定すべき基準地震動が470ガルに引き上げられました(審査中も運転は可能でした)。
 その一方で伊方1,2号機はこの耐震バックチェックを未適用のまま動かし続けていました。

(国会事故調報告書要約部の福島原発事故の原因分析部分から引用)

【〈事故の根源的原因〉
  平成18(2006)年に、耐震基準について安全委員会が旧指針を改訂し、新指針として保安院が、全国の原子力事業者に対して、
  耐震安全性評価(以下「耐震バックチェック」という)の実施を求めた。
  東電は、最終報告の期限を平成21(2009)年6月と届けていたが、耐震バックチェックは進められず、いつしか社内では平成28(2016)年1月へと先送りされた。
  東電及び保安院は、新指針に適合するためには耐震補強工事が必要であることを認識していたにもかかわらず、
  1~3号機については、全く工事を実施していなかった。
  保安院は、あくまでも事業者の自主的取り組みであるとし、大幅な遅れを黙認していた。
  事故後、東電は、5号機については目視調査で有意な損傷はなかったとしているが、それをもって1~3号機に地震動による損傷がなかったとは言えない。】

 というように、事業者の都合でバックチェック自体が5年経っても実行できてなかった問題が背景要因として挙げられています。

 また、現在、福島原発刑事訴訟でも主要な問題として取り上げられている歴史的な津波の知見が適用されなかった問題も見逃せません。
 「規制の虜」であったため旧原子力安全・保安院が歴史的な貞観津波などの新たな科学的知見に基づいて
 津波バックチェックを掛けることを決められなかったことが裁判の証拠としても明らかにされてきています。
 こういった過去の事例を踏まえた対応として、このバックチェックではないバックフィット制が導入された「ハズ」です。

◆7.国会事故調の提言をたよりに

 この国会事故調の報告は12年7月に発表されましたが、炉規法改正があったのは同年6月で、調査と同時並行で法改正が行われたため、
 提言の内容が直接盛り込まれているわけではありません。

【提言6:
 3)原子力法規制が、内外の事故の教訓、世界の安全基準の動向及び最新の技術的知見等が反映されたものになるよう、規制当局に対して、
  これを不断かつ迅速に見直していくことを義務付け、その履行を監視する仕組みを構築する。
 4)新しいルールを既設の原子炉にも遡及適用すること(いわゆるバックフィット)を原則とし、
  それがルール改訂の抑制といった本末転倒な事態につながらないように、廃炉すべき場合と次善の策が許される場合との線引きを明確にする。】

 この4)の文言が狭義のバックフィット原則のことですが、その一つ前の3)の、最新の知見を取り入れるということの履行を監視する仕組みこそが
 現状で足りない点であると声を大にして言いたいです。
 ここの役割は現在マスコミと市民に委ねられています。

◆8.~ただちに運転中の原発を一旦停止すべき~論

 稼働中の伊方、川内、高浜原発のすべてにこの火山灰問題は関わりがありますから、今動いている原発をどうするのかは重要です。

Aの「火山灰濃度100倍」問題について
 火山灰濃度の想定についてパブリックコメントの形で専門家に意見を聞くのならまだ分かりますが、どうして規制対象の事業者の声を聞くのか?
 まだ対応できません、ということを聞いて猶予期間を考慮するつもりなのか、と突っ込んで聞いていましたが
 官僚からは必要な期間も含めて検討していく、という答えでした。

 まさに国会事故調報告の中で指摘されたかつての「規制の虜」の姿にうり二つです。
 当然ながら、規制当局内の事情として新たな基準の内容を作る上でしばらくの期間が掛かることは許容すべきでしょうが、
 事業者側の都合を聞いて、意味のない猶予期間を作るべきではありません。

Bの「非常用ディーゼル発電機の運用手順」問題について
 そもそも「規則違反が分かれば規則の方に手をつけて適合したことにする/特例を認める通達を出す」というのなら、
 元の意味とはあべこべの、いわば逆バックフィット状態です。

 Aの問題で新たに規制を作るというプロセスを立ち上げ、その中にBの問題も含めることで、
 ついでに対応時期を先送りさせて(稼働中の原発の停止命令に触らないでいられる)
 時間を稼ごうとしているのかもしれませんが、それだけでも大きな問題です。
 「明日火山が爆発したら、一体どうするのですか、何もしなくて良いのですか?」というのは当然の声。
 「電力会社は信用できないのでまずは止めてから対策をさせるように」ともYoutubeの中で誰かが主張をしていました。
 電力会社はこれまでも一旦約束した対策をサボってきた実績(免震重要棟が耐震構造のものに代わったり、
 特重施設やフィルター付きベント設備を数年間先送り)があるので、
 やるやる詐欺のような言い逃れの言い訳に使わせないためにも、まずは動いている原発を止めて、
 再稼働させないことを担保に対策を急がせるよう求めるべきです。

 特にB.の問題については、間違いを起こした責任が誰にあったかをここでは問わず、バックフィットの理念に則って、
 分かった問題は即改善します、と(Aの問題についての基準策定を待たずに)
 即時対応を電力会社に求めるのが、まともな規制委員会がなすべき最低限の事柄だ、と思います。

 電力会社の側も原発運転会社としての信用を築くためなら即座の対応がお得だ、と考えるのではないでしょうか。
 これまで違反がばれずに原発を再稼働し運転をし続けられたことはフロックであり既得権化はできないものだ、と思えないような事業者には、
 原発を運転する資格はありません。

(小倉 正)

【参考資料】
▼原子力規制を監視する市民の会
http://kiseikanshi.main.jp
▼FFTV 原発の火山灰規制<3>現状の基準に違反明確に 20170823
https://www.youtube.com/watch?v=oxJlPNKreI4&t=31s
▼国会事故調報告書本文
http://www.mhmjapan.com/content/files/00001736/naiic_honpen2_0.pdf


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╋■┛ 伊方原発広島裁判 今後の予定
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◆本訴◆
 9月13日(水)11:30~第7回口頭弁論期日
 11月8日(水)14:00~第8回口頭弁論期日(※原告による意見陳述を予定)

◆仮処分◆
 9月13日(水)13:15~広島高裁 伊方原発3号機仮処分 第2回審尋期日

 9月13日は午前中に本訴の口頭弁論、午後に仮処分の審尋が予定されております。
 12:30に広島弁護士会館にお集まりください。
 13:00に広島高裁に向けて審尋出席者を見送る乗り込み行進を行います。
 13:30から日テレディレクター、加藤就一氏による講演会・討論会「伊方原発と米ショアハム原発の違い」を開催いたします。
 仮処分審尋は非公開です。広島高裁での審尋が終了するまでの時間、より原発に対する理解を深めるため、講演会・討論会を行います。
 今回のテーマは、原発周辺30km圏自治体(原子力災害対策重点区域)再稼働同意問題です。
 世界標準の実態を学び、アメリカのショアハム原発を例に、世界標準にすら達しない、
 現在の日本の深層防護第5層問題に関わる法体系を学び、私たちが置かれている現在の深刻な事態を理解していきます。
 
 なお、この第2回目で仮処分審尋は終了し、12月の高裁決定を待つばかりとなります。
 みなさま、是非ご参加ください。
 ===================
 加藤就一氏講演会・討論会
 「伊方原発と米ショアハム原発の違い
  ~米ショアハム原発に見る避難計画と原発廃炉の道筋」
 日時:9月13日(水)13:30~16:00
 会場:広島弁護士会館3F大ホール
 資料代:1000円
 ===================
 詳しくは御案内チラシをご覧下さい。
 ▼御案内チラシ
 http://saiban.hiroshima-net.org/pdf/20170913.pdf


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■編集後記
 「バックフィット制度」・・・。この言葉は聞いてはいたけれど、
 それがどれだけ大きな意味を持って現在の原子力規制行政の基本理念となっているかについてはそれほど深くは考えずにいました。
 私たちが重要視しなければならないのは、規制基準適合性審査に合格後、運転を開始した原子炉であっても、
 バックフィット制度に適合しなければ運転してはならない、とする制度である点です。
 
 ところが、今回の原子力規制委員会の対応は、事実上バックフィット制度として導入すると標榜しながら、
 バックフィットの規制項目に適合していない原子炉でも、合格を取り消さないまま、運用面で解決しようする姿勢を示しています。

 規制庁は、「必要に応じて事業者に対し意見を聴取した上で、具体的な規則などの案を策定し、原子力委員会に諮ることとしたい」と言っています。
 これではバックフィット制度ではありません。本号記事はその点を鋭く衝いた中身となっています。

 安倍政権誕生以降、規制委はなし崩し的に「原子力安全神話時代」の規制行政のありかたに退行しているかのように映ります。
 今回のバックフィット問題もその流れの一環でしょう。規制委をしっかり監視し、福島原発事故前の規制行政に戻させないよう、
 おかしいことはおかしいと指摘し続けるのも私たち市民の重要な仕事、という感を深くしました。
(綱崎健太)


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伊方原発運転差止広島裁判
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◆伊方原発広島裁判メルマガ編集部◆
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