被爆地ヒロシマが被曝を拒否する伊方原発運転差止広島裁判
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「ふるさと広島を守りたい」ヒロシマの被爆者と広島市民が、伊方原発からの放射能被曝を拒否し、広島地方裁判所に提訴しました

2018年10月3日

伊方原発広島裁判原告団声明
広島高裁異議審による高裁決定の取消に対して


 9月25日、広島高裁民事第2部の三木昌之裁判長・冨田美奈裁判官・長丈博裁判官は、伊方原発3号機の運転差止を取り消す異議審決定を行いました。原子力事業者と行政の意を迎え、昨年末、伊方原発3号機の運転差止を命じた広島高裁野々上裁判長の決定を、司法の矜恃とともにかなぐり捨てた軽蔑すべき行為に対し私たちは心の底から憤りを覚えます。


 現在の原子力規制行政においては、原発過酷事故は「起こり得る」ことが前提となっています。原子力規制委員会が行った過酷事故の際の放射性物質拡散シミュレーションでは、伊方原発で福島事故並みの過酷事故が起こった場合、伊方原発から100kmの広島ですら1週間で実効線量約4mSvという放射能被害が及ぶことが発表されており、このことは四国電力も当決定も否定していません。

 過酷事故が起こった場合、このような極めて重大な被害が発生することを認めているにもかかわらず、今回の三木決定は、伊方原発における「具体的危険の不存在」立証の条件を異常に甘くして、伊方原発3号機運転差止の取消を認めたのです。事実上、広島市民のみならず伊方原発100km圏内住民の人格権侵害を司法が認めた決定です。


 今年9月30日までという伊方3号機の運転差止期限切れの間際になって、この異議審による判断を出す意義はどこにあったのでしょうか。それは電力会社が再稼働準備を始めるのを数日間早めてあげよう、という温情からではありません。

 「高等裁判所での原発の運転差止判断という実績をなかったものにしたい」、「今後も、火砕流の到達のおそれありとして立地不適にされる原発が出てくると困る(とくに、再稼働中の九州の原発は4機とも、阿蘇カルデラから伊方原発と同じ程度の距離にあり、立地不適にされるおそれがある)」、「同じく火山灰問題では、さらに広く全国の原発や関連核施設にも、広島高裁決定の影響が及んでしまう」といった原子力事業者や行政側の願望や危惧を忖度して行った、初めから取消の結論ありきの決定でした。

 三木裁判長の裁判指揮に、すでにその予兆はありました。四電側が提出を怠っていた項目の主張を、四電側に1日も早く提出するよう求めるという、あからさまな一方への肩入れを行ったこと。佐賀地裁で争われた玄海原発での火山灰対策例を参考にして、まだ提出されていない四電側の主張への反論を1日も早く出すよう住民側に求めたこと。当初の広島地裁や高松高裁、山口地裁岩国支部での仮処分において行われてきた専門家によるプレゼンや参考人尋問や証人尋問をこの異議審では拒否したこと。そこで私たちは裁判官忌避を行い、最高裁棄却に至るまで争ったのです。

 原子力事業者と行政の圧力に、矜持なき裁判官が屈してしまったのが、今回の取消決定です。


 それだけではありません。今回の仮処分は、人格権侵害による保全命令を訴えた事件であったにもかかわらず、最終的には憲法や法令に依らず、「社会通念」なるものを用いた判断でした。

三木決定は、「破局的噴火によって生じるリスクは、その発生の可能性が相応の根拠をもって示されない限り、発電用原子炉施設の安全確保の上で自然災害として想定しなくても、発電用原子炉施設が客観的にみて安全性に欠けるところはないとするのが現時点における我が国の社会通念であると認めるほかない」と述べています。「原発は危険」という、3.11以後に私たち市民大多数に受け入れられている通念ではなく、目先の利益追求から原発再稼働を急ぎたい者たちの願望を「社会通念」として汲み取っているのです。そして、最低限の原発の安全性を確保するために定められている規制基準の内規を無視して、「伊方原発から130kmの阿蘇山の過去最大の噴火による火砕流が伊方原発敷地に到達していないと判断することはできない」と認めながら伊方原発の運転を容認しているのです。

 結論に沿うように都合良く定義される「社会通念」というもので、私たち市民に対する人格権侵害を認めさせた、危険な判断です。
 被爆地ヒロシマから「核の平和利用」として、そしてかつての伊方原発訴訟から「万が一にも日本の原発は過酷事故を起こさない」「放射能は5重の壁で閉じ込めて出さない」という宣伝とともに、原発安全神話がつくられていきました。そして今また、「原発を運用している間は、巨大噴火は起こらない」という新たな神話がつくられようとしています。しかし、いかにも説得力のない神話です。


  現在、4県の仮処分が伊方原発を包囲しています。裁判所の前で「司法は生きていた」の垂れ幕を見る日が必ず来ます。私たちはその日まで仮処分の戦いをヒロシマにおいて継続します。

 ふたたび原発事故による被曝者を出させない。美しい日本の国土や海を、世界に繋がる大気や海を放射能汚染させない。

 これは日本のみならず世界を、地球を、そしてその未来を守る闘いです。

 すべての原発の廃炉まで、私たちは闘い続けます。



伊方原発広島裁判原告団


広島高裁異議審による高裁決定の取消に対して

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