被爆地ヒロシマが被曝を拒否する伊方原発運転差止広島裁判
お問い合わせ

「ふるさと広島を守りたい」ヒロシマの被爆者と広島市民が、伊方原発からの放射能被曝を拒否し、広島地方裁判所に提訴しました

2017年4月22日第5回口頭弁論・第3陣提訴 定例学習会
「なぜ広島から伊方原発運転差止を提訴するのか~第2版リーフレット解説~」報告


4月13日に行われた第5回口頭弁論・第3陣提訴に伴う定例学習会を4月22日に合人社ウェンディひと・まちプラザ北棟5階研修室Cにて行いました。

この度の学習会は「なぜ広島から伊方原発運転差止を提訴するのか~第2版リーフレット解説~」と銘打ち、リーフレットで私たちが伝えたいことを、報告という形で詳しく説明しようという内容になっています。


 第2版紹介リーフレット A5版12ページ(約19MB)


“伊方原発運転差止広島裁判”を紹介するリーフレットですから、原発一般に対してもそうですが、特に広島ならではの伊方原発に反対する理由が盛り込まれています。

報告はテーマごとに4つに分け、全て原告自身が自ら調べる形にしました。
1は伊方原発の立地がいかに「不適」かを、地質・地形や瀬戸内海の特質を交えて解説する報告。2は伊方原発から放出される「トリチウム」という放射性物質に関する報告。3は広島原爆の被爆者である原告団長・副団長の実体験を交えた広島原爆と現在の放射線防護政策の関係に関する報告。4はリーフレットの裏表紙に記載されている内容で、この運動自体の意義に関する報告です。

ここでそれぞれのどのような報告だったのか、かいつまんで解説します。詳しくは是非、レジュメをご覧ください。

報告1 四国電力伊方原発は最悪の立地不適地

綱﨑健太 報告1「四国電力伊方原発は最悪の立地不適地」レジュメ



原告であり、仮処分の申立人である綱崎健太さんによる報告です。

伊方原発は人口密集地域に囲まれていて、瀬戸内海という内海に面しており、とてももろい、いわゆるダメージゾーンの岩盤の上に建っています。中央構造線のほぼ真上に建っているため、早坂康隆准教授によれば最悪、直下地震により制御棒を入れる間もなく原子炉ごと海に落ちると想定されています。また、直近の活断層は、敷地から約600mのところにあるとも早坂先生は指摘しています。

一方、伊方原発は南海トラフ想定地震域ギリギリに建っており、四国電力の想定する南海トラフ巨大地震の最大地震動は、東日本大震災で起きた地震動を基に想定すれば、計算式によっては10倍以上の開きがあり、過小評価だと言えます。

地震の話ばかりをすると「地震さえ起きなければ安全」と受け取られてしまいそうですが、瀬戸内海とともに生きてきた、そして生きていく私自身にとっても伊方原発は最悪の立地不適地です、と締めくくりました。

報告2 大量のトリチウム放出とその危険

原田二三子 報告2「大量のトリチウム放出とその危険」レジュメ



応援団代表で原告の原田二三子さんによる報告です。

通常運転でも伊方原発からは大量のトリチウムを放出しています。特性からして放射性物質の中でも危険性が高いのですが、原発推進の立場に立つ学者・研究者からは、トリチウムの電離エネルギーは小さいので、人体にはほとんど害がないといわれています。

確かにトリチウムの電離エネルギーは他の放射性物質に比べて小さいですが、線エネルギー付与(単位長さ当たりに局所的に与えられる電離エネルギー量)の大きいβ線を出しています。トリチウム水(HTO)では比較的容易に体外に排出されますが、有機物と結合した、有機結合型トリチウム(OBT)は生物学的半減期が長く、そう簡単に体の外には出ていきません。有機結合型トリチウムは細胞を構成する重要小器官に集まりやすく、細胞の小器官を形成する高分子結合の重要元素として取り込まれ、細胞の内部から電離エネルギーを照射して、細胞を内部から破壊する危険な放射性物質です。いわば内部被曝中の内部被曝というわけです。微量でも体内に入れば影響は計り知れません。伊方原発はただ稼働しているだけで危険なトリチウムを環境中に放出していることを強調し報告を結びました。

報告3 ヒロシマと低線量被曝の危険

堀江 壯・伊藤正雄 報告3「ヒロシマと低線量内部被曝の危険」レジュメ

報告3は2人が分担して報告をしました。

先に原告副団長の伊藤正雄さんによる、広島原爆の被爆体験から身近で感じた放射線がもたらす健康影響ついての報告です。



当時の体験に加え、3・11直後には妹さんが甲状腺機能低下により亡くなられたことをお話しました。原爆の影響がないとは言い切れないと主治医はおっしゃっていたそうです。原爆投下から70年以上経ってもなお、放射線障害に苦しむ方がいるということを報告しました。

伊藤さんの体験と問題提起を受けて、同じく被爆者であり原告団長の堀江壯さんが原爆と放射線防護政策の関係性を解説しました。



今の日本で採られている放射線防護政策はICRP勧告を基に作られています。そのICRP勧告が唯一、学術的研究として根拠にしているのは原爆被爆者寿命調査(LSS)です。そのLSSの調査は放射線の被害を検証する疫学調査としては欠陥があり、放射線防護の参考にはならないことを指摘し報告しました。

報告4 私たちの選択で、世の中が変わる、未来が変わる

西本 彩・小田眞由美 報告4「私たちの選択で、世の中が変わる、未来が変わる」レジュメ

報告4も二人の報告者が報告します。

先に原告の西本彩さんが反原発運動での裁判闘争の位置づけについてお話しました。



そして、当裁判では人格権に基づいて差し止めを請求していること、人格権を保障している憲法が最高法規であり、法律や法令よりも高位にあり、遵守されなければならないものであることを解説しました。最後に、その憲法が保障する権利は国民の不断の努力によって保持されなければなりません、と報告しました。

続いて原告の小田眞由美さんが前述の報告を踏まえ、当裁判の原告になる意義について報告しました。



世論調査では反原発は50~80%を占めていますが、原発に反対であっても行動に移さなければそれは消極的賛成になってしまいます。かつて、アメリカの公民権運動を率いたキング牧師は言いました。

「究極の悲劇は、悪人の圧政や残酷さではなく、善人の沈黙である」
「問題になっていることに沈黙するようになったとき、我々の命は終わりに向かい始める」

原告になること自体が反原発運動の行動となり、権利の主張となるのです。また行動に移すことで、目に見えなかった多数派は目に見える多数派となり、それは世論を動かしていきます。世論が動けば行政もそれを看過できなくなります。ご自身の権利を守り獲得するためにあなたも原告になって下さい、と語りかけ報告は終わりました。

報告終了後、質疑応答・意見交換


報告終了後、質疑応答の時間を設け報告者と参加者のみなさまと質問を出し合い、報告の内容の理解を深め、意見交換などをおこないました。



原爆の話も含んでいたので、「被爆」と「被曝」はどう違うのか?という質問があがりました。「被爆」は原爆による熱線、爆風、放射線による被害3点を指しており、「被曝」は放射線のみによる被害を指しております。伊方原発広島裁判では「被爆地ヒロシマが被曝を拒否する」と横断幕にもある通り、レジュメ等でも混合しないよう使い分けています。

他にも現役大学生の男性から、内部被曝に関する学術研究の進展状況について質問があがりました。その質問に対し、事務局長の哲野さんは日本国内ではあまり知る機会がありませんが、英語文献なら沢山の研究論文がインターネットに上がっています、と答えました。参加者の内部被爆に対する関心の高さがうかがえる質問でした。

報告者への質問がひととおり上がり意見発表へと移っていきました。以前、伊方原発広島裁判応援団が開催する街頭アンケートにも参加して下さった愛媛県西条市の十亀さんは、ご自身が携わっている活動についてご紹介されました。四国電力に株主提案権を行使し原子力事業から撤退させることを目的として、株主運動をしています。また、株主は四国電力に質問をすることが可能ですので、反原発運動にとって有意な情報が引き出せるかもしれません、ともおっしゃっていました。

ひとつ質問があがればそれに付随してまた新たな質問があがったり、質問された報告者以外の方が補足を述べたり、と活発な議論が行われました。

第3陣提訴の新原告のひとりである参加者の男性に感想を述べて頂きました。四国電力が提示している安全対策と今日の報告を見比べてみると、いかに想定が甘いかという事がよくわかりました。また、原発問題は様々な問題と密接に絡み合っているのではないか、という見解も示されました。この感想を閉会のあいさつとして定例学習会は終了しました。参加者は20名でした。

以上、定例学習会の報告です。
(文責:重広麻緒)

ページのトップへ戻る