被爆地ヒロシマが被曝を拒否する伊方原発運転差止広島裁判
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「ふるさと広島を守りたい」ヒロシマの被爆者と広島市民が、伊方原発からの放射能被曝を拒否し、広島地方裁判所に提訴しました


伊方原発広島裁判メールマガジン第22号 2017年10月2日

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 伊方原発・広島裁判メールマガジン第22号
 地球は宇宙の電離放射線から二重のシールドで護られた奇跡の星
 ~宇宙がくれた脆弱な幸運と私たちの愚かな自殺行為~
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2017年10月2日(月)発行
編集長:哲野イサク
編集員:綱崎健太
編集員:小倉 正
編集員:網野沙羅

▽本号のトピック▽□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
■編集委員会からひとこと
  「火山灰濃度問題パブコメ」にぜひあなたの声を
■地球は宇宙の電離放射線から二重のシールドで護られた奇跡の星
  宇宙がくれた脆弱な幸運と私たちの愚かな自殺行為
 1.磁気嵐がおこるとオーロラも活発になる?
 2.私たちを電離放射線から護る地球の磁気圏-第一のシールド
 3.私たちを電離放射線から護る大気―第二のシールドの形成
 4.高高度航空機パイロットはなぜ電離放射線被曝線量が大きいか
 5.電離放射線から二重のシールドで護られた奇跡の星
 6.オーロラ現象の意味
 7.核の軍事利用や産業利用は愚かな自殺行為
■「10月21日 高松大行動」、総選挙のため12月10日へ延期
■伊方原発山口裁判 仮処分第4回審尋期日 学習会・裁判報告会
■読者のみなさまへ―メルマガストーリー記事寄稿のお願い
■メルマガ編集部後記
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■  編集委員会からひとこと
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◆「火山灰濃度問題パブコメ」にぜひあなたの声を

 本メルマガ第20号のメインテーマ
 「火山灰濃度限度変更 形骸化する規制基準バックフィット制 ~ただちに原発をいったん停止すべき~」
  http://saiban.hiroshima-net.org/mm/20_20170901.html

 で紹介した火山灰濃度の過小評価問題は、ようやく9月19日付け共同通信からの配信で報道されました。
 想定すべき火山灰の大気中濃度が100倍であったという問題が7月19日の原子力規制委員会会合で認められたため、
 対応が迫られる課題だということが愛媛新聞、佐賀新聞、など各地方紙で2ヶ月遅れで紹介されました。
 (独自の調査報道による紙面作りではなく、対応が出来るまで問題提起の記事を出すのを抑えて欲しい、
  と考えただろう規制委員会側の意向を100%忖度した、発表ジャーナリズムの典型例となってしまっています。)

 が、なんとその翌日20日の規制委会合ではもう、新たに策定した基準案他が了承され、
 翌日から10月20日までの30日間「パブリックコメント(パブコメ)を募集」(意見公募)するところまで話が進んでいます。
 (「火山灰濃度問題の対応策が決まりパブコメ募集中」ということも今のところ報道されていません)

 このパブコメ元の新基準案の中で特に問題と思われるのは、
 20号にも書いたように、意味のない猶予期間が1年間設定されていることです。

 9月20日には新聞報道を受け、私たち市民団体で急きょ愛媛県庁に要請に行きました。
 その要請の中では伊方3号機が10月に定期点検で止まった後の期間に四電に確実に火山灰対策を実施させるためにも、
 バックフィット制度に基づく再稼働への同意プロセスが再び必要だ、と県知事が宣言することを求めました。

 その対応に出てきた県庁の担当部局の担当者は、一般に規制変更があるときには猶予期間を設定するものだ、と応えました。
 「今日午前の原子力規制委員会会合で猶予期間1年という案が決まったじゃないか」と追及するとやはりそのことを知っていました。
 つまり1年間の猶予期間がつくなら、愛媛県知事は「命よりカネ」で、
 次々回の定期点検まで四電にその対策をさせないままでいることを許すおそれが充分あります。

 これは同じ地表に15cm厚さまで灰が降り積もるときに想定すべき火山灰の大気中濃度を、
 原子力規制庁が100分の1(実は伊方3号審査時にはさらに10分の1)に、二桁、三桁も過小評価していた、という、
 いわば規制庁の審査機関としての能力の無さを暴露した事例です。
 それなのに、規制を変更したのだから事業者には1年間その適用を猶予するというのでは規制になりません。

 四国電力社長は、7月末の規制委員会臨時会の場や9月の定例記者会見の場では、
 今年10月3日からの定期点検の時に対応策を実施すると表明していますが、いつ先送りを発表することがないとも限りませんし、
 また改造して設置した装置が新しい基準に適合するかしないかの審査をサボったまま
 再・再稼働させる口実として、この猶予期間は使われてしまいかねません。

 そうはさせないよう、是非あなたの声、猶予期間はありえないという声を、パブコメ募集の窓口にお寄せください。
 (HP経由やメール、FAXが使えます)

 詳しくは、
 原子力規制を監視する市民の会ホームページ
 「いよいよパブコメ!原発の火山灰濃度規制?1年猶予許さない!風向きの不確実性を考慮すべき」
 http://kiseikanshi.main.jp/2017/09/20/333/
 で、関連のパブコメ原案と、他のありそうな論点についても紹介していますのでご確認ください。 


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■  地球は宇宙の電離放射線から二重のシールドで護られた奇跡の星
■  ~宇宙がくれた脆弱な幸運と私たちの愚かな自殺行為~
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1.磁気嵐がおこるとオーロラも活発になる?

 2017年9月21日付け朝日新聞社会面(大阪本社版)に、『江戸時代 史上最大級の磁気嵐?』と題する、ちょっと興味を惹く記事が掲載されました。

 記事の概要は次のようなものでした。
 「1770年(明和7年)9月17・18日頃各地でオーロラが見られたという記述が当時の天文現象をまとめた『星解』という文書などに載っている」

 明和期といえば、10代将軍家治の頃。明和9年には江戸三大大火の「明和の大火」が発生しており、自然災害も多い時期でした。
 口の悪い江戸っ子に、明和9年ならぬ「迷惑年」といわれた頃でした。

 「国立極地研究所と国文学研究資料館などのチームがこうした古文書を元に推測したところ、
  オーロラは高さ200kmから500kmで京都の天頂まで広がり、幅は約1000km。
  専門家の話によると当時と同規模の磁気嵐が起こったらハワイのような低緯度でもオーロラが見えるかもしれない、という」

 これではなんのことかわからないと思ったのか、この記事の前段部分で朝日は解説を入れています。

 引用すると、
 「太陽フレアが起きて、地球に粒子が飛来すると磁場を揺すぶられて磁気嵐が起こり、オーロラも活発になる」
 この解説を読んでもわかるどころか、ますますわけがわからなくなります。

 太陽フレアが起きて地球に粒子が飛来するとは、どういうことなのか、磁場を揺すぶられて磁気嵐が起こるとはいったいどういうことなのか、
 磁気嵐が起こるとオーロラが活発になるとはどういうことなのか。
 そもそも「太陽フレア」、「飛来する粒子」、「磁場」、「磁気嵐」、「オーロラ」などなど、一体何でどういう現象なのか、
 などといった基本的なことがこの記事を書いた朝日の記者もわかって書いているとも思えません。

 この記事を理解するには、地球という惑星の地表面が、宇宙などからやってくる電離放射線に対して「二重のシールド」で守られた星、
 いわば放射能から防御された星、だから私たちが放射能から守られてこれまで生き延び、
 進化してきたのだという地球史レベルの話を理解しておく必要があります。


2.私たちを電離放射線から護る地球の磁気圏-第一のシールド

 約140億年前のビッグバンから約100億年近くたったころ、膨張を続ける宇宙の片隅の銀河の、そのまた片隅にようやく太陽系がその形を現しました。
 今から約46億年前のことと推定されています。
 その後、太陽系は当初の姿から進化しました。衛星や惑星の周りのガスや宇宙塵の円盤から形成されたり、
 惑星の重力に捉えられたりして、いわば衝突を繰り返しながら、時間の経過とともに落ち着いていきました。
 天体同士の衝突は今日でも続き、太陽系の進化の原動力となっています。惑星の位置はしばしば変化し、入れ替わることもあります。
 この惑星軌道の移動は、初期の太陽系の進化の大きな原動力になったと信じられています。
 (以上日本語ウィキペディア『太陽系の形成と進化』など参照のこと)

 太陽系の小さな惑星、地球もその例外ではありません。惑星間衝突を繰り返しながら地球も進化していきます。
 そのころ惑星、隕石衝突のため、岩石惑星とはいえ、地球はドロドロに溶けた火の玉でした。
 超新星爆発などで生まれた鉄やニッケル、金、銀、ウランなどといった重い元素も地球にやってきました。
 惑星間衝突時代(いわゆる後期重爆撃期:約41億年-38億年前)が落ち着くと、地球も徐々に冷えはじめ、
 宇宙からやってきた比較的軽い元素は地表面に、鉄やニッケルなど重い元素は地球中心部に沈み込んで、「コア」を形成するようになりました。
 はじめは1日6-8時間程度だった地球の自転速度も現在のように1日24時間程度となり、
 地球がまるで巨大な磁石のようになり、その周囲に磁気圏を形成するようになりました。

 この磁気圏が、宇宙からのべつまくなしに降り注ぐ強烈な電離放射線に対する第一のシールド(防御壁)となったのです。
 (「https://science.nasa.gov/science-news/science-at-nasa/plasma_plume/bullet1」などを参照のこと)

 宇宙などから降り注ぐ電離放射線の粒子を、地球の磁気圏で捕獲してできた帯が有名なバン・アレン帯です。
 (日本語ウィキペディア「ヴァン・アレン帯」など参照のこと)

 バン・アレン帯は、宇宙や太陽から降り注ぐ電離放射線の中の、生き物の生存を根本から脅かす陽子や電子から成り立っています。
 不思議にことに、バン・アレン帯の英語の原語は“Van Allen radiation belt”(バン・アレン放射線帯)であるのに対し、
 日本語訳では「放射線」の訳が抜け落ち、「バン・アレン帯」と称され、その名称からその性質を推測しにくくしています。
 (なお、日本語ウィキの「ヴァン・アレン帯」は、どこか奥歯にものが挟まったいいかたで説明しており、
  英語ウィキ“Van Allen radiation belt”の方がはるかに明快な説明となっています)
 https://en.wikipedia.org/wiki/Van_Allen_radiation_belt

 前述の朝日新聞の記事で「磁場」といっているのは、この「第一のシールド」である地球の磁気圏に発生する「磁場」のことなのでした。


3.私たちを電離放射線から護る大気―第二のシールドの形成

 それでは私たちは、宇宙からの電離放射線を第一のシールド(地球の磁気圏)だけで守られているのかと言えば、決してそうではありません。
 宇宙や太陽からやってくる強烈な電離放射線から地表面を護るには第一のシールドだけでは不十分だったのです。

 約43億年前ごろまでには、原始地球に降り注ぐ惑星や隕石・彗星などの衝突によって大量の水がもたらされ、原始海洋が形成されました。
 この原始海洋は、大量の二酸化炭素を含んでいました。確かに水蒸気が紫外線を受けて光分解することで酸素が生成されてはいましたが、
 原始海洋中の鉄分が酸化したため、大気中にはほとんど残りませんでした。

 この頃の大気の主成分は、二酸化炭素とメタンでした。
 しかし二酸化炭素とメタンが主成分の大気は、あとでもみるように地球が今のように落ち着く前に姿を消してしまいます。

やがて地球が冷えて固まると、二酸化炭素で光合成を行う生物が誕生します。
 それらは二酸化炭素を酸素に変換するようになります。約27億年前にシアノバクテリアが大量発生します。
 それとともに酸素の供給量が増加します。しかし、この程度の酸素では海中に溶け込むのが精一杯で大気には放出できません。

 約20億年前くらいになると、ようやく大気中の酸素の増加が見られるようになりました。
 また大気中の酸素は紫外線と反応し、オゾンをつくりました。
 酸素濃度が低かったころは地表にまで及んでいたオゾン層は、濃度の上昇とともに高度が高くなり現在と同じ成層圏まで移動しました。
 これにより地表に到達するDNAを破壊する有害な紫外線が減少し、生物が陸上にあがる環境が整えらました。

 紫外線は太陽からやってくる電離放射線の一種です。
 極めて弱い電離放射線で、ちょうど電離放射線と非電離放射線の中間に位置する放射線です。
 オゾン層では、磁気圏をくぐり抜けてやってくる強烈な宇宙からの電離放射線を防ぐことはできません。精々紫外線を防ぐのが精一杯です。


4.高高度航空機パイロットはなぜ電離放射線被曝線量が大きいか

 磁気圏をくぐり抜けてやってくる宇宙からの電離放射線から地表面を護る大気となるには、大気にもっと酸素が増えなければなりません。
 約10億年まえには大気の酸素濃度は、現在の1/100程度にまでになりましたが、それ以上は増えません。
 しかし大気中の二酸化炭素濃度も低くなり、現在の20倍程度にまで落ち込みます。

 約6億5000年前の地球全球凍結(スノーボール)時代を経て、地球は温暖化に向かいます。
 約3億6000万年前 には、地球は温暖期を迎え、氷河も消滅してしまいます。この頃、現在の石炭の元になった大森林が各地に形成されます。
 こうした植物は、光合成に必要な二酸化炭素を取り込み、彼らにとって不必要なガスを大気中に放出します。
 このガスが酸素です。こうして大気中の酸素が爆発的に増加します。
 このグラフは大気中の酸素濃度の増加を示したグラフです。
 約3億年前には大気中の酸素濃度が爆発的に増えています。
 その後、大気中の酸素濃度は増減を繰り返しながら、現在の約21%レベルに落ち着いていきます。
 (日本語ウィキペディア「地球史年表」中のグラフ「過去10億年の大気中の酸素濃度の変化」

 原始地球時代にメタンと二酸化炭素が主成分だった大気は、繰り返される太陽フレアによって吹き飛ばされるか、
 岩石風化によってとりこまれるかあるいは植物の中に光合成の材料としてとりこまれるかして、
 原始地球時代から見るとなきに等しい状況になりました。
 現在地表面大気の成分構成は、窒素78%、酸素21%と、重い気体、窒素と酸素で99%を占めています。
 残り1%の主成分はアルゴン(約0・9%)で、二酸化炭素の成分は全体の0.03%に過ぎません。
 (日本語ウィキペディア「地球の大気」などを参照のこと)

 こうして窒素・酸素など重い気体を主成分とする大気が地表面を掩うことになり、
 これで宇宙からの電離放射線から私たちを守ってくれる第二のシールドができあがることになります。

 高度1 万メートル程度の上空を頻繁に飛ぶ航空機のパイロットや客室乗務員の宇宙放射線被曝のことが話題にされます。
 この人たちはどうしても被曝線量が大きくなってしまう、これは何とかしなければならない、というのです。
 これは地表面ではシールド効果を発揮する大気も1万メートルの高高度では薄くなり、シールド効果が小さくなるためです。
 それで、第1のシールド(地球の磁気圏)をくぐり抜けてやってくる宇宙の電離放射線に対する被曝線量が大きくなるのです。

 「日本国内で自然放射線の岐阜県の年間1.19 ミリシーベルトと、神奈川県の年間0.81ミリシーベルトでは、
  年間約0.4 ミリシーベルト(1.5倍)もの違いがあります。したがって、このような制限によって低減化
  される放射線量(0.18mSv)は、神奈川県から岐阜県に引っ越して半年経過すると自然に増加する放射線
  量(0.19mSv)とほぼ同じ程度です。あるいは、日本とニューヨークの間を飛行機で往復して宇宙から浴
  びる放射線量(高高度飛行中は7μSv/h 程度として約0.19mSv)とほぼ変わらないと言えます。」
 (原子力規制委員会のWebサイト「5 月27 日「当面の考え方」における「学校において
  『年間1 ミリシーベルト以下』を目指す」ことについて(平成23年7月20日)」より)
  http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/1000/115/view.html

 のように、1万メートルの高高度では、地表面で受ける自然の電離放射線の被曝線量よりはるかに大きな被曝を受けます。

 なお、高高度で受ける被曝は100%外部被曝ですが、福島県の学校の校庭で受ける被曝は、ほとんどが内部被曝です。
 外部被曝被害と内部被曝被害の大きな違いについては、原子力規制委員会のWebサイトでは一切触れていません。


5.電離放射線から二重のシールドで護られた奇跡の星

 こうして地表面が、磁気圏という「第一の電離放射線シールド」、大気という「第二の電離放射線シールド」の「二重のシールド」に守られるようになって、
 それまで海の中でしか暮らせなかった生物は、そろそろと陸上にあがってくることができるようになりました。
 これが両生類からは虫類への進化です。約2億5000万年前のことでした。
 (英語ウェキペディア「History_of_Earth」

 それでは、私たちは「二重のシールド」に護られれば、地表面でほぼ電離放射線の影響を受けないで暮らせるようになったのでしょうか?
 そうではありません。実は私たちが地表で電離放射線の影響を受けないで暮らせるようになるためには、
 もう一つ地球史の上で偶然ともいえる大きな条件が必要だったのです。
 それは、ウランなど放射性物質は一体どこから地球にやってきて、それが地球でどんな運命をたどったのか、という問題と大きく関係します。

 ビッグバン以来、宇宙は核融合を繰り返してきました。今も核融合を続けています。
 その意味では宇宙は巨大な核融合炉だといえます。太陽も例外ではありません。
 しかし太陽のような規模の小さい恒星では、核融合といっても精々水素のような一番軽い元素(原子番号1)の核融合を行って
 ヘリウム(原子番号2)を作り出す程度です。
 (人類は水素爆弾などといって、あたかも水素の核融合が人類の科学技術でできたかのように吹聴していますが、
  その実、水素の核融合に必要な熱も、圧力も人工的に得られないので、起爆剤に原子爆弾をつかって水素の核融合を行っているのが現状です。
  人間の科学技術では水素の核融合もまだできないのです。日本語ウィキペディア「水素爆弾」 などを参照のこと)

 ヘリウムより重い元素、たとえば酸素(原子番号8)、ナトリウム(原子番号11)、カリウム(原子番号19)などは、太陽のような小さな恒星ではなく、
 もっと大きな恒星での核融合でしか生まれません。
 しかしどんなに大きな恒星でも鉄(原子番号26)までしか核融合に必要な熱と圧力は得られません。
 鉄より重い元素、たとえばコバルト(原子番号27)やさらに重い金(番号79)やウラン(番号92)などは、
 巨大な恒星の超新星爆発(スーパーノバ)による核融合によってしか生じません。

 こうして宇宙では超新星爆発を繰り返しながら、今私たちが知りうるような元素ができていきました。
 ウランなどの核分裂物質もこうして宇宙に生まれ、原始地球から現在の地球に至る過程の中で、
 地球に衝突した惑星や準惑星、隕石などによって、他の元素や水などと共に運ばれてきました。

 陸上生物にとって危険な電離放射線を放つこうした放射性物質は、量はすくないものの、他の元素に比べれば、
 比較的重いため地球が冷え固まる過程の中で、地表面から姿を消し、地中深くもぐっていきました。
 また、不安定な放射性同位元素が生成されてからの長い年月の間に崩壊して安定元素に変わっていったこともあげられます。
 こうして、地表面から不安定な放射性物質が姿を消していくことが、人類など生物が地表面で安全に進化を遂げていく一つの条件となりました。

 (唯一の例外は比較的軽い元素であるカリウムです。カリウム40はカリウムの同位体ですが、放射性物質です。
  しかしカリウム40で放射線障害を起こしたという報告は一例もありません。
  どうも人類は進化の過程でカリウム40を無害化することに成功したように見えるのですが、詳細はまだわかっていません。)


6.オーロラ現象の意味

 さてこうしたことを予備知識として、もう一度冒頭にご紹介した朝日新聞の記事を見てみましょう。

 太陽フレアとは、「太陽活動領域中に蓄えられた磁気エネルギーが、磁気再結合によって熱エネルギーや
 運動エネルギーに変換されるという説が有力」という程度で、その発生メカニズムはまだ詳細にはわかっていません。
 大きくは、太陽の核融合活動にともなう現象、と理解しておけばまず外れていません。

 問題は太陽フレアにともなって発生する「太陽嵐」です。太陽嵐とはいうものの、その実態は

 「多くのX線、ガンマ線、高エネルギー荷電粒子が発生し、太陽表面では速度1000km/s程度で伝播距離50万kmにも及ぶ衝撃波が生じる事もある」
 (日本語ウィペディア「太陽フレア」

 というように、要するに私たち地表の生き物にとって危険きわまりない電離放射線の嵐がその実態なのです。
 太陽と地球の距離は約1億5000万kmでしかありません。
 太陽フレアによって生じた電離放射線の嵐は、大規模なものになると当然地球にも達します。
 「磁気圏」(前記朝日新聞の記事では「磁場」)というシールドがあるではないか、といいますが、
 太陽からの「太陽嵐」(電離放射線の嵐)は、地球の磁気圏をちょうどクラゲ状に歪めてしまいます。
 通常であれば、北極軸と南極軸を中心に、球状に地球を包み込んでいる磁気圏も大きく歪んでしまいます。

 「オーロラ」という現象は、宇宙や太陽からやってくる電離放射線が、磁気圏をくぐり抜け、
 バン・アレン帯も通過し、地表面に達し、地表面を掩う第二のシールドである「大気」と衝突して発生する現象です。
 ですから通常では、「第一のシールド」である磁気圏のシールドが薄い極地方でしか見られません。
 オーロラは、第二のシールドが立派に機能していることの証拠なのです。

 ところが太陽嵐(太陽からの電離放射線の嵐)が地球に向けて吹き付けると、前述のように磁気圏がクラゲ状に歪み、
 低緯度地帯の磁気シールドが薄くなり、強力な電離放射線がそこまで侵入し、第二のシールドである大気と衝突してオーロラが発生する、ということになります。
 因みに前記朝日新聞が「磁気嵐」 と表現しているのは、磁気圏が太陽嵐によってクラゲ状に歪むことを指しています。

 明和7年、日本各地で見られたオーロラ現象は、北緯35度程度の京都の天頂に高さ200kmから500kmの帯で、約1000kmにわたって発生したと推測されていますから、
 いかに太陽から発生した電離放射線の嵐が激しく、磁気圏がクラゲ状に大きく歪み、磁気圏という第一のシールドが危険に瀕したかがわかるでしょう。
 通常ではオーロラは緯度70度以上の地帯で観測されるものです。


7.核の軍事利用や産業利用は愚かな自殺行為

 朝日新聞の記事では「太陽フレアが起きて、地球に粒子が飛来すると磁場を揺すぶられて磁気嵐が起こり、
 オーロラも活発になる」と簡単に書いていますが、「オーロラも活発になる」どころの話ではなく、
 危険な電離放射線の嵐に対する第一のシールドが大きく歪み、第二のシールドである大気にまで達していることが
 緯度70度以下の低緯度地帯でも確認できる、ということなのです。

 思えば、地球は様々な偶然と幸運が重なって、地表面で私たち人類など動物が、
 電離放射線の危険から護られて暮らすことのできる「奇跡の星」だということができるでしょう。
 しかしその幸運も、太陽活動のちょっとした現象で、吹き飛んでしまうような脆弱な幸運でしかありません。

 ましてや、いったん地中深く隠れた放射性物質(核分裂物質)を掘り出して、それを様々に加工し、
 核の軍事利用、産業利用と称して人工的に核分裂させて、自然の宇宙ですら作らなかった危険な人工放射性物質(死の灰)を大量に生成し、
 しかも原発のように私たちの生活の身近なところでそれをもてあそぶのは、
 宇宙からもたらされた脆弱な幸運を自ら破壊していく、愚かな自殺行為のように思えてなりません。

(哲野イサク)

<お断り>
 本号メイン記事は、「9.13広島高裁仮処分第2回抗告審傍聴記」と題してさる9月13日に実施された
 「伊方原発3号機運転差止仮処分命令事件」の広島高裁第2回抗告審のもようをお伝えする予定でしたが、
 内容の査読に予想以上の時間がかかり、本号締め切りに間に合わず急きょ差し替えいたしました。
 ご了承ください。なお「傍聴記」が次号に掲載する予定です。


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■  「10月21日 高松大行動」、総選挙のため12月10日へ延期
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 本メルマガ21号(前号)でご案内した「STOP!!伊方原発 高松集会」(「高松大行動」)は、
 21日がちょうど衆議院総選挙の選挙戦最終日にあたることとなったため、参加団体からの延期提案を受けて相談し、
 大行動の日を12月10日へと延期することに決まりました。
 詳しくは集会の特設ページを参照ください。
 https://kyoudoukoudou.wixsite.com/ikatahairo

 また、高松で21、22日に続けて企画されていた「再稼働阻止全国ネットワーク」の全国相談会も延期が決まっています。
 詳細は決まり次第お知らせします。


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■  伊方原発山口裁判 仮処分第4回審尋期日 学習会・裁判報告会
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 稼働中の四国電力伊方原発の3号機運転差止を求めて、広島、松山、大分、山口の各地の裁判所で仮処分命令が申し立てられていますが、
 10月19日は山口の仮処分第4回審尋期日を迎えます。
 審尋そのものは例によって非公開ですが、当日学習会と裁判報告会が予定されております。

 主催:伊方原発をとめる山口裁判の会
 日時:10月19日(木)13:00~17:00ごろ
 場所:岩国市中央公民館第2講座室(3F)

 13:00~学習会 
      「伊方原発による瀬戸内海の環境破壊(福島第一原発事故を踏まえて)」
       講師 湯浅一郎(環瀬戸内海会議代表 専門:海洋物理学・海洋環境学)
 16:00~裁判報告会

 岩国市中央公民館はほぼ駐車場が使えます。運悪く駐車スペースのない場合でも錦川河川敷に無料で駐車できます。
 (河川敷から中央公民館までゆっくり歩いても約15分)お近くのみなさま、ふるってご参加ください。


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■  読者のみなさまへ―メルマガストーリー記事寄稿のお願い
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 本メルマガ、ストーリー記事の寄稿を募集しております。テーマは原発問題や放射線被曝問題などです。
 応募の仕方は、
  1.記事概要を送っていただくか
  2.記事原稿を送っていただくか
 のどちらかとなります。

 記事概要は約400字以内、記事原稿の場合は目安として8000字以内でまとめてください。
 主見出し(タイトル)、副見出し(サブタイトル)、中見出しも適時お入れください。
 マイクロソフト社のWord文書のメール添付の形でお送りください。
 応募には、お名前と簡単な略歴、連絡先(メールアドレス、電話番号など)を添えてください。
 編集委員会で討論した上で掲載を決めます。執筆者の方とメールでのやりとりも含めて
 掲載を見送る場合もあることをあらかじめご了承ください。

 資格・経歴は全く問いません。内容次第です。
 アジテーションやプロバガンダ色の強い記事、あるいは出典や論拠の不明確な記事は掲載しないことをあらかじめお断りしておきます。

 応募先は以下です。
 メルマガ管理者 mm★hiroshima-net.org(★をアットマークに変えて下さい)


 原発など核施設などの廃絶のためには、強い意志と鋭い問題意識、
 明晰な論理力と科学的思考のできる市民ジャーナリストが数多く市民社会の中に存在することが不可欠です。
 ふるってご応募ください。


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■メルマガ編集部後記

 2012年9月、原子力規制委員会が発足してから5年が経過しました。
 独立したいわゆる三条委員会、国際水準の規制基準などを標榜し、
 当時の田中俊一委員長の言う「地に落ちた原子力安全行政への信頼回復」を目指した規制委員会は、
 5年の任期を終えた田中氏から更田豊志氏に委員長を交代しましたが、
 その原子力規制行政は、福島事故前の安全神話時代に逆戻りを加速させています。

 とは言っても、それは今に始まった訳ではありません。
 もともと深層防護第5層の実効性、実現可能性を審査しない仕組みは遠く国際水準に及びません。
 (それでなくても、国際水準の規制体系そのものが敷地外への放射性物質漏洩を容認している点でまやかしなのですが)
 「バックフィット」の理念そのものも怪しくなっています。
 「バックチェック制度では不十分。新規制基準はバックフィットを基本理念とする」といいながら、
 火山灰濃度の基準を変更して規制基準に適合しなくなった原子炉を止めることもなければ(本メルマガ20号で指摘したとおり、
 バックチェックではなくバックフィットであれば、基準に適合しなくなった原子炉は、適合するまでの間止めなければいけません)、
 柏崎刈羽原発の審査では、重大事故を起こした東京電力に原発事業者としての適格性を求めるようなことを口にしながら、
 なんの実効性も持たない東電の決意表明でもって、原発事業者としての適格性を認める始末。
 すでに「規制の虜」状態といっても過言ではありません。

 こうした一連の規制の動きは、当初理念からの変質というべきなのか、
 はたまた5年も経過すると馬脚が現れてきたというべきなのか。

 核推進勢力の都合で原発が再稼働され被曝が強制される事態を打破するためには、
 原発規制行政が福島事故以前の安全神話に逆戻りするような事態は徹底的に批判し、
 これを広く市民社会に知らせなければなりません。
 「規制委員会監視と批判」は、私たち市民の大きな責務です。

 (綱﨑健太)
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2.本人確認手続き1
 「■メールマガジン登録確認メール送信
  只今、____宛に「メールマガジン登録の確認」メールを送信いたしました。
  お送りしたメールに記載されたURLにアクセスしていただくと、メールマガジン登録の手続きが完了します。」
  という確認のウィンドウが出ます。
  「閉じる」ボタンを押して閉じて下さい。

3.本人確認手続き2
  入力したメールアドレスに「メールマガジン登録のご案内メール」が届きます。
  登録完了URLをクリックしてください。

4.登録完了確認1
  「■メールマガジン登録完了」のメッセージウインドウが出ます。
  「閉じる」ボタンを押して閉じて下さい。

5.登録完了確認2
  「メールマガジン登録完了のお知らせ」メールが届きますのでご確認ください。

 以上の手順でメルマガ購読手続きは完了です。



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